トリチーでの日常_9

今は学年最後の試験期間中なので、土曜日の学校はお休みで、土日二日間はスクールホリデーでした。
朝から一日中子どもたちはホームにいて、楽しく過ごせるのはいいことですが、相変わらず夜は断続的にしか睡眠が取れないにも関わらず、日中昼寝をしたり、ましてやパソコンを触ることなどできず、ちょっと体力的に厳しい状態です。

インド到着当初は食べるものがすごく美味しくて、体重はわずかに上昇傾向にありました。
それが日が経つにつれ暑さにやられ、全般的に食欲が落ち、たぶん二、三キロはやせた感じです。
渡印十回目、インドでは毎回必ず一度は下痢をしていましたが、今回もインド人たちとまったく同じものを飲み食いしていますがお腹の具合は良好で、逆に日本ではほとんど経験のない便秘症状がでたりしています。

今日月曜日でここトリチーに来てちょうど二週間になります。
明後日10日にはチェンナイに移動し、15日午前中の飛行機で日本へと戻ります。
今回も十二分に子どもたちと楽しい時を過ごすことができ、また大きな課題を得て満足です。

 

朝は子どもたちに混じって水場で洗濯をすることからはじまります。

いつも「ブラザー、ヘルプ?」と聞いてくれ、洗濯を手伝ってくれるので、お返しにバケツに水を入れて子どもたちの頭からかけてあげたり、ちっちゃい子には石けんで全身をこすってあげたりしています。
そんなささいなことにみんな大騒ぎしてくれて、iPadや風船といったモノを介さない交流はやっぱり最高です。

水場の奥にグラウンドがあり、そこに子どもたちが植物を植えているので見てくれと強くせがまれ、見学に行きました。

それぞれ自分たちが植えた植物があるらしく、いたずらされないようトゲの生えた枝で囲まれています。

毎日水をあげて大切に育てているようです。

これはタマネギです。
インドのタマネギは紫色で日本のものより小ぶりです。

今いるスタッフルームは屋上に真っ黒で大きな水タンクがあり、そこから蛇口に水が供給されます。
蛇口と言ってもトイレにひとつあるだけですが。

その水が時折涸れることがあり、そんな時はいつも入り口の警備をしているおじいさんに給水パイプの栓を開けてもらいますが、急場をしのぐ必要がある時、それを察した子どもたちがバケツに入れて水を汲んできてくれました。

本当に子どもたちはみんなすごく親切なんです。
これでいつも写真を撮れとか風船をくれとか言わなければいいのですが・・・、子どもの中には天使と悪魔の両方が棲んでいて、この灼熱の中、それを一人で全身に受けるのは大変です。

そのスタッフルームの裏は余所の敷地になっていて、そこでは乳牛が飼われています。

日本にも牛はいるのかといろんな子どもたちが聞いてきます。
当然日本人も牛乳を飲むので牛はたくさんいるにはいますが、こんな身近に見る経験はほとんどできないですね。
牛は枯れ草を食べ、一日同じところにじっと佇み、それでいて価値ある牛乳を生み出してくれるのだからすごいものです。
今の日本でこんな風に手で搾乳することがあるのでしょうか。

この牛を眺める場所で後ろを振り返るとスタッフルームの一階で、ここでは調理の補助作業を行っています。

この日は土曜日、翌日日曜日の朝食はイドゥリーで、その材料となるココナッツの中の白い果肉、テンガイを採っています。

この娘三人をホームから学校に通わせているキッチンスタッフの女性は、先日斧でココナッツを見事な身体捌きで割り、動画GIFで紹介した女性です。

この日も作業しているところに入ってみて、その床に残された足跡の見事さに驚かされました。
まさに理想的な足跡、素晴らしい土踏まずを持っておられます。
本人はそれを写真に撮っているのを見てすごく恥ずかしそうにしていました。

これが翌日日曜日に食べたイドゥリーです。
ちょっとしたご馳走感覚で、フワフワと柔らかくてとても美味です。

 

学校のない土日はいつも掃除できないところを徹底的にきれいにします。
けれど写真は子どもたちが騒ぐのでなかなか上手く撮れません。
だいたいこんな感じです。

 

子どもたちの通う学校のすぐ横に教会があり、いつも日曜日はその教会に通っていましたが、今は改築工事をしているので、その代わりにホームの中でサンデープレイヤークラスが行われます。
みんなで礼拝をした後、ちびっ子たちと大きな子に別れます。

 

今回もたくさんの写真や動画を撮りました。
毎回機器は少しずつ進化をし、今回のものや過去のものを子どもたちも見て大喜びしています。
子どもたちからは写真をプリントしてくれとすごく頼まれて、今回は学校近くに写真店があって条件がいいこともあり、かなりの枚数をプリントしてもらいました。

子どもたちに直接写真や動画のデータを渡しても、当然それを見るためのデバイスは持っていません。
けれど今回時代の流れで進化したのは、子どもたち自身がデータを保存するためのマイクロUSBやUSBメモリーを持っていて、それにデータを入れてくれと頼まれるようになったことです。
容量の少ないちょっと旧式のものが多いのですが、それでも子どもたちに満足し大切な思い出としてもらえるよう、できるだけ要望に応えてデータをコピーさせてもらいました。

子どもの中には親御さんに見せるのでセルフィーを撮ってデータでくれという子もいて、やっぱりそう言ってもらえると嬉しいですね。

 

日曜日、月曜日と二日間続けて誕生日の子の写真を撮りました。
そしてその二組とも双子です。
なぜかトリチーのホームでは以前から双子の率がとても高いようです。

 

まったくランダムにいろんなことを書きますが、学校への行き帰り、茶屋でチャイを飲むのと同時に、食料品店でマンゴージュースもよく飲みます。
200ミリリットル10ルピー、16円です。

これがまさに異次元のうまさです。
灼熱の中大量に摂る水分は、そのほとんどが生ぬるい水かほどほど熱いチャイやコーヒーで、ホームで冷たい飲み物を口にすることは絶対にありません。
それだけに体が冷たいものを欲しているのでしょう、口に入れた瞬間に身震いするほど新鮮な感覚が体の中を走り抜けます。
しかもマンゴーの味が濃厚で最高です。
まさにマンゴーネクターといった感じです。

これでキンキンに冷えたビールが飲めたらどんなに最高でしょう。
もう想像するだけで禁断症状が出てきそうです。
たぶん次にビールが飲めるのは飛行機の中でしょう。
まるまる一ヶ月間アルコール断ちです。

このマンゴージュースの写真を撮っていたら、店のお兄さんが写真を撮れと言ってきました。

そして写真を撮った後は、妹だという女の子がその写真を見せてくれと言ってきました。
インド人は本当に写真好きですね。
しかもいいカメラのほとんどがキャノンやニコンといった日本製なのも嬉しいところです。
いつも行く写真店のお兄さんのカメラも高級なキヤノン製でした。

 

現在日中のホームには、先に書いたアレックスという10年生の男の子と、同じく10年生のクリシュナベリーという女の子がいます。
彼女も弟がこのホームにいて、弟の学校が終わるのを待って田舎へ帰省します。

左がクリシュナベリー、右が22歳になりたてのハウスマザー、エンジェルベリーです。

クリシュナベリーはハウスマザーたちとともにプライマリスクールの子どもたちを引率したり、キッチンの手伝いなどをしています。
彼女は笑顔がとても柔和で素敵です。
その笑顔に彼女の人柄が表れていて、彼女の表情を見ているととても幸せな気持ちになります。

ここ最近はトリチーのホームに来ると必ず子どもたちやスタッフ全員にアイスクリームを買うことにしています。
今年は一人で来たのでアイスクリームを渡す時の写真は撮れませんでしたが、二年前と三年前は飯田さんも一緒で、飯田さんが子どもたちにアイスクリームを渡している時の写真を何枚か撮りました。
その中でも受け取った子どもの表情が最もいいと感じた両年の写真が、どちらもそのクリシュナベリーのものだったのです。

二百名の子どもたち全員のアイスを受け取るところを撮ったわけではなく、ランダムに撮り、その時にたまたまとてもいい表情で撮れたのが彼女だったのです。
人柄の良さは、いいタイミングを引き寄せる力があるのかもしれません。

 

子どもたちが学校に行ってホームにいない時、お昼はランチプレートを持ってキッチンに行き、適当に食材をプレートに盛っていただきます。
この写真の時はクリシュナベリーが調理の手伝いをしていました。

いつもランチで食べるのはこのようなものです。

ご飯が主体で、日本風に言うとスープカレーのようなものと総菜が加わります。
いつも極めて単調なメニューではありますが、素材が生きているからでしょうか、ほとんど食べ飽きることがありません。
けれど暑さで食欲がなく、じんわりと辛みがくるので最後の方は食べるのが厳しくなる時があります。

子どもたちの食事を見ていて、その食べる量の多さに驚かされます。
そしてその量のほとんどがお米、炭水化物です。
毎週鶏肉、牛肉、魚がメニューに加わるものの、その量は少なく、動物性蛋白がもう少しあった方がいいのではと思いますが、インドはベジタリアンの多い国で、それはそれでひとつのバランスなのでしょう。
そしてインドでも日本でも、質素な暮らしをしていると、炭水化物主体になるのは致し方ないですね。

 

最後は今日の午前中の出来事です。
いつも学校に子どもたちと並んで歩いていると、学校近くの店先で勢いよく手を振ってくれる女の子がいます。
周りから注目されるのは慣れているので特に何にも感じなかったのですが、今日はたまたまタイミングが合って歩いているところを横から「ハイ、サカイ♪」と声をかけられ、よく顔を見ると以前ホームにいた女の子でした。

今彼女は薬局の店先に立っているようで、iPadで昔の写真を見せて欲しいと言われて見せてあげるととても嬉しそうでした。
右の女の子です。

2014年と2015年の写真を見て十枚ほどピックアップし、それをプリントして欲しいとのことでした。
あまりお金のことを言うのもなんですが、十枚プリントしても100ルピー、わずか160円です。
思い出はお金に換えられません。
彼女の微笑みから自分も幸せをいただきました。