覚醒する自我<2>

インドの立腰

この時空の基本法則は、共生循環フラクタル(自己相似形)、この三つであると考えます。

歴史の生命学である文明法則史学から二重らせんが生命の基本形構造であることを感じ、そこからこの三つが導かれ、そこに思い至った二十数年前から現在まで身近な自然の様相からそれを検証し続けてきました。

文明法則史学から学ぶ

その中でも共生の理合いを日常最も強く感じます。
共生とは調和でありバランスです。

男と女、この二つの性があるからこそ高度な生命が誕生し、変化する環境に適応しながら命を紡いでいくことができます。
天と地、海と陸、動物と植物、酸素と二酸化炭素、・・・共生の中で最もシンプルな二つの陰陽関係は、例を挙げればキリがありません。
そしてそれらは見事に調和を保ちながらもほんのわずかな不安定さを持ち、新たなる調和を求めて時間とともに変化し、それが生々流転して循環となり、その仕組みがミクロからマクロまでフラクタルに存在するということです。

共生関係を最も強く感じるとはいえ、共生、循環、フラクタルの三つは切っても切れない共生関係です。

 

覚醒を導く緊縛は皮膚への刺激であり、皮膚というのも何らかのものと共生関係を持っていて、それを知ることが緊縛の本質を感じ取ることにつながります。

人体の基本構造は、上端を口、下端を肛門とする一本の管であると捉えられます。

脳や神経、様々な感覚器官が皮膚から変化したものであることを考えると、人体はこの基本構造に頭や手脚といった五体、内臓諸器官が付随する形と見ることができます。

この構造から、皮膚は外なる外部との境界を作るものであり、その対極であり裏側に位置する消化器官は、内なる外部と肉体とを隔てるものと見ることができ、皮膚と消化器官は対極にある共生関係です。

これは人体の上端にある脳と中心軸下端にある腸が上下の共生関係であるのと同様、皮膚と消化器官は表裏の共生関係で、互いに対極であって補い合う相補関係であると考えられます。

人体の太極図

緊縛という皮膚への刺激で意識が覚醒できるのなら、裏面の消化器官への働きがけでもまた同様のことがあるはずです。
そしてそこで最終的に得られるものは同じでも、そこに至る要素の一つひとつは対極であるはずで、これが陰陽の共生・相補関係の特質です。

 

2008年、初めて南インドの児童養護施設を訪ねた時、豊かな自然の中、貧しいながらも輝くような笑顔を絶やさない子どもたちの姿に強い衝撃を受けました。
その笑顔、幸福感を支えるものは何なのか、その大きな要因は逞しい肉体、強靭な体幹、それを支える適度な運動環境と生命あふれる食事にあると感じました。

インドの少年たち

教育の基盤は健全な身体を育む体育であり、それを培う食育です。
「和食は健康食」と言われますが、残念ながら今の日本の食卓に上る食材に生命を育むパワーはほとんど感じられません。
対して南インドでの食事はメニューが少なくシンプルですが、すべての食材に生命が宿り、舌ではなく身体が欲する健康食で、これなくしては健全な精神も肉体も育たない、身体の内からそういう思いが湧き上がってきました。
そこで描いたのがこのピラミッドです。

幼児教育・食育ピラミッド

それ以降南インドを八回訪ねましたが、この思いは深まるばかりです。
南インド滞在中は身体に力がみなぎり、新陳代謝がよくなるからか体重はキロ単位で減少します。

健全な食事が健全な身体を育む。
健全な身体が脳と腸との良好な関係を保ち、生きる姿勢を正していく。
南インドの子どもたちのあふれんばかりの笑顔と接し、これこそが教育の目指すべき最終目標であるという思いを強くしました。

『教育の基本は立腰にあり』
偉大な教育者森信三先生のこの言葉は至言です。

インドの立腰

脳と腸との健全な共生関係を保ち、互いに補い合う働きをしていくには、二つをつなぐ背筋、腰骨を立てることが不可欠です。

そのための食育とは、消化器官を健全な状態に保つことと同義であり、特に腸の働きをよくすることで腸のある腹(肚)に力が入り、正しい姿勢を維持することができるようになります。

 

こうなることで即座に不思議なことが起きるわけではありませんが、これは長い目で見た生きる姿勢の変化・変容です。
これは緊縛によってその場で意識の覚醒が起こることとは対極です。

その共生・対極・相補関係をまとめてみます。

皮膚 陽
外的外部との境界
緊縛による瞬時の覚醒
刺激に瞬時に反応
撫でることによって労る
ストレスによる活性化
 緊縛、乾布摩擦・・・刺激の付加
消化器官 陰
内的外部との境界
健全な食習慣による長期的生き方の変容
食物が消化・吸収されるには時間を要する
よく咀嚼することで消化を助ける
ストレスによる活性化
 断食・・・栄養供給の停止

短期的な自己改革には皮膚への刺激、長期的には健全な食習慣や運動、労働、腹式呼吸などを行って消化器官の働きを助けることが有意義であると考えられます。

 

文明の発達とともに日常生活における肉体的ストレスが減り、人間の五感は急速に鈍くなってきています。
幸せは得るものではなく気付くもの、身近にいる「幸せの青い鳥」に気付くには、自らの感覚を研ぎ澄ます必要があります。

その入り口として、五感を統合する皮膚への刺激はとても効果的であり、そこで得られたものを長く保ち続けるには、内なる自己、その形としての表れである消化器官を労ることが大切です。

それを実践し続けてきた『日本の誇らしい文化』を取り戻しましょう!!

ここまで書いて更に気付くことがありました。
もう一度続きます。💡

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立腰教員