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共生

この宇宙にあるものはすべて何らかのものと関わりを持ち、互いに影響を与え、役割を支え合っています。
そしてその関係を「共に生きる」と書き、共生と言います。

身近な動物、植物を例にとってみましょう。

動物は、有機物という栄養を摂って生命を保っていて、その栄養を他の生物に依存する「従属栄養生物」です。
ですから無機物を有機物に変え、自ら栄養を作り出すことのできる植物のような「独立栄養生物」がいなければ、生きていくことができません。

そして植物もまた、他の動植物たちが滅し、土壌生物などの分解者によって有機物が無機物となって土に還ったその養分を吸収することにより、生命を保っています。

動植物の共生

草食動物は植物を食べることによって生き、肉食動物はその草食動物を餌としています。
そして草食動物、肉食動物ともに寿命が尽きて死んだ後は大地に還り、微生物によって土に分解され、植物の栄養源となっていきます。

動物は足や羽という移動手段を持ち、どこにでも行くことができますが、植物は動くことができません。
そこで自らの生息範囲を広げるため、種子を風に乗せて飛ばしたり、動物の力を借りています。

リンゴやミカン、ブドウや桃、果物はなぜどれもみな色鮮やかで美味しいのでしょうか。

fruits

それは動物たちに果物を食べ、種を遠くまで運んでもらうためです。
色鮮やかな果物、特に赤い色のものが多いのは、緑の森の中で動物に見つけてもらいやすくするためであり、甘く糖分が多いのも、鳥類やほ乳類などの動物に好んで食べてもらうためです。
動物たちに食べられた果物は、果肉は消化され、堅い種子は未消化のままフンとして排出され、その場所に苗木として新たな生命を得ることができます。

つまり果物が色鮮やかで美味しいのは、動物とのよりよい共生関係を築き、自らが生き残るための「植物の知恵」なのです。

周りの様々なものと役割を分担し、互いにバランスをとっている共生関係は、動植物の世界だけではなく、宇宙全体すべてのものに広がっていて、この宇宙には、周りの他のものと共生関係なしに単独で存在しているものは何ひとつありません。

ミクロの世界の原子、マクロの世界である太陽系も同様です。
原子は中央の原子核と周りを飛び回る複数の電子、太陽系は中央の太陽とその周りを周回する数々の惑星、これらがバランスを保ち共生関係を成り立たせています。

原子モデル 太陽系の概念図

原子モデル と 太陽系の概念図

地球が太陽の周りを一定速度で回り続けるのは、太陽と地球が互いに引っ張り合う重力と、地球が太陽から遠ざかろうとする遠心力が釣り合っているからであり、共生関係はこのバランスの上に存在します。

人間の身体を見ても、心臓から全身の隅々にまで血液を送るための動脈と、その血液を再び心臓に送り返す静脈があり、筋肉には伸びる伸筋と縮む屈筋があり、大脳は右脳と左脳、その他数多くの器官が役割を分担し、二つで一組の共生関係を持っています。

このように、この宇宙のありとあらゆるすべてのところに共生関係は存在し、それは男女、天地、心と体といった一対一のシンプルな関係が基本であり、これは東洋の陰陽思想でも説かれています。

落ち葉

~ 落ちていく枯れ葉だって美しい。
肥料にもなるし・・・。
木はそのことを知っているのよ。 ~

坪田愛華

 

共生関係にはより複雑なものも存在します。
多種多様な動植物による食糧需給のつながりは、捕食し、されるものが網目のように複雑に絡み合い、それは食物連鎖網と呼ばれています。

食物連鎖網

<食物連鎖網>

食物連鎖網は、多種に渡る動植物たちの共生の姿とともに、循環のあり様を示しています。

現在地球上には175万種の生物の存在が確認されており、その内の三割近くが絶滅の危機に瀕していると言われています。
動植物の食物連鎖網は極めて複雑であり、ある一種類の生物の絶滅は、その生物と共生関係を持つ他の多くの生物の存在をも危うくします。

日本では古くから森に棲息していたニホンオオカミが絶滅し、それに捕食されていた鹿が数を増やし、その鹿が樹皮を食べることによって多くの樹が倒れるという被害が出ています。

共生関係は複雑かつ微妙で多様性に富んでいて、それゆえに大きな環境変化にも耐えうる力を持つことができます。

多様性は生命体の持つ柔軟性であり強さです。
これから世界は時代の大きな転換期を迎え、価値観や環境が大きく変化していきます。
そんな中、その変化に対応する力を身に付けるためにも互いの価値観を認め合い、その違いを乗り越え、多様なものが共生していく社会を築き上げていくことが求められます。

みんなちがって みんないい

 

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