牛一頭で人生が変わる

one cow is for one kid

今朝は車で二時間ちょっとかかるナーマッカルという町に行きました。
SSHはこの町にも教育支援の施設を持っています。

場所は結構田舎です。
「LIFE SKILL ACADEMY」、学校教育のことだけではなく、就労など生活全般に対する支援を行っています。

ここでも玄関にレンゴリが描かれ、大歓迎を受けました。

昨日も田舎の家を訪ねた時にしていただいた歓迎の儀式です。
チリ(唐辛子)の入った真っ赤な液を少しだけ額中央につけてもらいます。
そしてその後その液体を回り何カ所かに分けてまくのが習わしのようです。

二階の部屋では大勢の子どもや大人の人たちが待機していました。

黒板には歓迎のメッセージが。

みんなでお祈りの儀式のようなものをした後は、各自一人ずつ名前、学年、将来は何になりたいか、これまで、またはこれからの課題のようなものを述べてくれました。

子どもたちは日曜祝日、長期休暇の時にここに集まり、学業の支援などを受けています。
貧しくて学校に通えなかった子が学校に通えるようになり、学業不振でほとんど友だちのいなかった子にも友たちがたくさんできたと語ってくれました。

けれど片親や両親のいない家庭ですべての兄弟を学校に通わせるのは、インドの田舎ではとても困難です。
そこでSSHが多大な支援をしているということがよく分かりました。

歓迎のダンス、「ファイファイファイ・カラチーファイ♪」という、随分前から子どもたちが歌って聞かせてくれる超有名な曲を踊ってくれました。

式典が終わって食事をした後、子どもたちに風船やお菓子を配りました。
ほんのささやかなものでも子どもたちは大喜びしてくれるんですよね、嬉しい限りです。

 

次はSSHの支援を受けている家庭を訪ねました。
ここもかなり田舎の村です。

ディーパックという12学年、最終学年の男の子の家です。

彼には8年生と9年生の弟がいますが、お父さんは13年前にHIVからエイズが発症して亡くなりました。
家ではお母さんと羊飼いをしているおじいさんと暮らしています。

彼は絵を描くのがとても得意で、将来は薬学やWindows、オフィスソフトといったパソコンスキルを学びたいと夢を語ってくれました。
けれど弟たちもいて、それを学ぶための学業資金がありません。

インドの町や都会は刺激にあふれていますが、田舎はのんびりとはしていても、何の変化も起こすことのできない沈滞した空気が漂っています。
この変化のない貧困な暮らしから抜け出すには学を身に付けるしかありません。
けれどそれが困難なのです。

彼が自慢の絵を何枚か見せてくれました。
これはその中でも最もよくできているもので、インドの国鳥孔雀が描かれています。

その村で女性グループの集会があり参加しました。

ここでも歓迎の儀式です。
女性たちは自立をするためにグループを作っていても、その自立を手助けするためにSSHなど外部からの支援が絶対に必要です。
何度も受けた歓迎の儀式から、インドの貧しい人たちの何とかそこから抜け出したいという強い思いが伝わってきます。

自分たちSSH関係者が椅子に座り、その周りを車座になって女性たちが取り囲みます。
ここでもやはりインド人の姿勢のよさを感じます。

彼女たちはそれぞれの村から月に一回集まり、こうした集会を開いています。
水、経済、トイレ、結婚持参金ダウリのこと、家庭や様々なハラスメントや児童労働について、またインドでは男性20歳、女性18歳が結婚可能年齢ですが、それが守られておらず、幼児婚が多いのも大きな社会問題で、ここでもテーマとして上がっているそうです。

彼女たちの多くは農業の下働きクーリーとして賃金を得ています。
その額は平均して150ルピー、1ルピーが現在1.6円ほどですので、一日240円ということになります。
この額は、外国人旅行者が外で少しまともな食事をすると一食ですぐにいってしまう金額です。
また先日行った高級住宅地区Silver prestigeは一棟が7クロール(ルピー)、クロールとはインドでよく使われる単位で一千万のこと、つまり一億円超となります。

この貧富の差がインドの現実です。
ですからそこから抜け出すのは容易なことではないのです。

女性グループの会合の後、ディーパックが絵をきれいに飾った状態で持ってきてくれました。
この絵は重たいですね。

SSHは地元ロータリークラブとタイアップし、貧困家庭に対する素晴らしい取り組みで大きな成果を上げています。
それは『One cow is for one kid』という運動で、一頭の乳牛を飼うことによって一人の子どもを学校に行かせることができるというものです。

一頭の乳牛がいると、朝5リットル、夕方5リットル、計一日10リットルの牛乳を手に入れることができ、それを売ると経費を差し引いても子ども一人分の学費をまかなうことができます。

一頭の乳牛は約43000ルピー、約7万円弱です。
乳牛から乳が採れるのが約十年間ですので、乳牛一頭を貧しい家庭に贈ることによって、そこの子ども一人がこれで学業を終えることができます。
貧困家庭の子どもの支援はフォスターペアレンツのような里親制度が一般的で、これは年間一万円か二万円程度の金額を継続して支援し続け、それに対してこの乳牛支援は金額はそれよりも高くても、一度の支援という形です。

この乳牛支援『One cow is for one kid』は素晴らしい支援だと感じます。
これは項を改めて、また詳しくご案内していこうと考えています。

One cow is for one kid

インドの貧しい家庭で暮らす子どもたちに幸せが訪れますように!