酒との関わり

加賀屋 小林英司料理長

酒の語源は「神様に捧げる水」
ですから日本では御神酒というものがあり、結婚式の三三九度、様々な神事や仏事でもお酒が捧げられ、酒はお祝いの席でも欠かすことができません。

けれどそれは世界共通かというとそうではなく、イスラム教のように飲酒を禁じている宗教も多く、自分の行くインドでは、「酒はろくでもない奴が飲むものという」という認識があり、あまりおおっぴらにお酒を飲むことができません。

そのインドも州によってお酒の取り扱いに差があり、いつも行くタミルナド州では犯罪防止のためにお酒は鉄格子越しに販売し、購入後は袋に入れて人目に付かないように持ち歩かなくてはなりません。

インドタミルナド州の酒屋

ここではお坊さんが飲酒しているのが見つかれば、新聞に載るほどの事件なのだそうです。

数年前、何度かお酒を買いに行っていた店がなくなっていて、聞いてみると、より人目の付かない場所に移転させられたとのことでした。
お酒は背徳的なものであり、けれど政府にとっては貴重な税収源でもあり、なかなか扱いの難しい問題のようです。

『お酒は文化』と言いますが、それはインドでお酒を飲んでいて強く感じます。
隠微な存在であるインドのお酒は、やはり味に深みがありません。
値段は日本のお酒よりも少し安い程度で、インドの物価水準からすると高額商品です。
ですから時折インドの村で混ぜ物のある密造酒を飲んで数十人の人たちが亡くなるという事件が起こったりします。

インドの村を外国人が一人で歩くのは危険だとよく言われます。
その際の注意の言葉には「酔っ払って変なのがいるから・・・」とたいていお酒がらみのことが入っていて、『悪人=酒飲み』といった図式があるようです。

それでもお酒に興味がある人が多く、ホームの男性スタッフに余っているお酒を飲むように勧めても、滅相もないといった感じで首をふられてしまいますが、その同じ人間が夜中に部屋の窓を叩き、「ブラザー、アルコール」などと言ってお酒を求めてくるのですから可愛いものです。

たぶんインドもグローバリズムの波を受け、飲酒が今後よりポピュラーになっていくものと思います。

前回の渡印時はお酒を飲みませんでしたが、三年前に飲んだインドの有名ビール キングフィッシャービールはとても美味しくなっているのに驚きました。
以前は少し濁ったような味だったのが、とても透明な味わいで、ほとんど日本のビールと味の差がなくなっていました。

キングフィッシャーは以前は航空事業も手がけていましたが、今は撤退しています。
下の写真は十年前にムンバイで撮ったもの、ここではお酒が鉄格子なしのオープンな形で売られていました。

インドムンバイの酒屋

 

今日は金曜日、早朝の異業種交流会である積極人間の集いがあり、日本一の旅館として名高い和倉温泉加賀屋の料理店部門、その広島の店の料理長であり店長でもある小林英司さんのお話をお聴きしました。

積極人間の集いは毎回いろんな講師の方のお話を聴いて学ぶことが多く、今日は料理や従業員、お客様との接し方のお話の中で、特にお酒にまつわる話が印象深かったので、ここでシェアさせていただきたいと思います。

加賀屋 小林英司料理長 加賀屋 小林英司料理長

お酒にはいろんな種類がありますが、その中のどのお酒を好むかによって、その人それぞれのタイプがあるとのことで、それがとても納得できるのです。

ビール
どこでも最初はビールから始める場合が多く、そのビールを最後までずっと飲み続ける人は、とにかく無邪気に楽しければいいというタイプ

日本酒
本音で語るタイプ
接待で日本酒を飲むと、相手の本音を引き出すことができ、深い話をしたい場合にうってつけ

焼酎
親分肌

ワイン
「私はみんなとは違う」というタイプ
「あなたはひと味違いますね」と誉めるといい

ウイスキー
序列をハッキリさせたいタイプ
会社などで上下関係のハッキリとした中で飲まれることが多い

 

いかがでしょうか。
『酒は百薬の長』であり、人生の楽しみでもあり、また毒にも薬にもなり、お酒で失敗したり健康や家庭、人間関係を壊すこともよくあります。

『酒は飲んでも飲まれるな』
お酒といい付き合いをしていきたいものです。