分かりました

濁音、撥音

ロックダウン中のインドにいて、毎日一時間ほどですが、スレッシュの息子のタンビに日本語を教えています。

もう何年も前から日本語を学びたいと話していたものの、まだ本格的に学んだことはなく、近いうちに家のあるタミルナド州の州都チェンナイの日本語学校で基本的な日本語を学び、その後は短期間でも日本に留学してみたいという希望を持っています。

チェンナイの家には日本語のテキストがあるそうですが、セカンドハウスであるここカニャクマリにはテキストがありません。
幸いここはインターネットが通じるので、日本語の学習サイトを調べ、それを参考に学習を進めています。

最初はひらがな、カタカナの読み書きからはじめ、今はその仕上げとして濁音とか拗音の練習をしています。

濁音、撥音

タンビの母語はタミルナド州の言葉であるタミル語で、学校では英語で授業を受けていたので英語はほぼネイティブレベルです。

その彼にとって小文字で表す ゃ ゅ ょ などは難しいようで、今少しだけ苦戦しています。

日本語にあらためて触れてみると、気づかされることが多くあります。
恥ずかしい話ですが、ひらがな、カタカナの書き順やトメ、ハネで間違って覚えているものがいくつかありました。

漢字も含めて日本語の読みや形には意味があり、それもなるべく伝えようとするのは大変です。
けれどそれは自分の英語力向上にもつながるので、毎回予習をして取り組んでいます。

 

文字とともに日本語の簡単な挨拶も学習し、それはだいぶできるようになりました。

昨日はその仕上げとして、日本語学習のYouTube動画を一緒に見ました。
Learn Japanese with JapanesePod101.com という164万人もの登録者がある日本語学習チャンネルで、質の高い学習動画がたくさんアップされています。
本当にすごい時代になったものです。

その動画では25個の代表的な日本語の挨拶が紹介されていて、その中のある箇所が間違っているのではないかとタンビから指摘を受けました。
この箇所です。

普通の日本人なら絶対に気づかないところです。

「わかりました」が「I understand.」となっています。

タンビは「〜ました」は過去形だと知っているので、これは「I understood.」の間違いではないかと言うのです。

確かに言われる通りです。
これまでの人生で、たぶん何万回も「分かりました」という言葉を使ってきましたが、それを過去形だと認識したことは皆無だと思います。

ではなぜなのか。
自分なりに解釈し、タンビにはこう説明しました。

「分かりますというのは、今知ったけれどもまだ納得はできていないというニュアンスがあり、分かりましたというのは、それを知った上で深く納得できているという感じで、より丁寧な返事です」

たぶん大筋そういうことではないかと思います。

 

ここで昨日の「皮膚感覚の時代」にも載せた図を再掲します。

怒りの感情

日本人は五感のうち四感のある頭部で情報を捉え、それをいったん腹まで落として再び頭部へと上げる、この長い経路を通って時間のかかるものを深く価値ある思考として尊重していて、その表れが「分かりました」という過去形の表現に出ているのではないでしょうか。

図では怒りの感情を例にしていますが、いわゆる「腑に落ちる」というものです。

「腑に落ちる」は「皮膚感覚の時代」の中でも使いました。
けれど調べてみるとこの言葉は、逆の意味である「腑に落ちない」から派生したものであり、本来はこういった使い方はしないと書かれているところもあります。

ただ腹、腸、丹田の重要性が増してくるこれからの時代は、この「腑に落ちる」感覚がとても大切であり、物事をハッキリと「分かりました」と断言できるまで噛み砕いて思考することが求められています。

 

言葉はその国の文化です。
日本人は日本語を大切にし、その言葉の意味するところを大切にしていかねばならないと強く感じます。