空間を整える

石盤の部屋

今回もここインドに来て、トイレや洗面台などいろんなところを掃除してきました。
数年前から日本の掃除道具をいくつか持参するようになり、液体洗剤などはインドで買うようにしています。

今朝もいつも食事を作ってくれるスギルタンの奥さんに頼まれ、ドロドロになった雑巾を何度も洗いながら、家の二階の窓を拭き掃除しました。
インドは家の中では靴(サンダル)を脱ぎますが、ほぼ地続きの開放的な環境なので結構砂っぽいのです。

 

ここに建つ家の床はどこも同じで、ピカピカツルツルの鏡面仕上げの石盤です。

床の石盤

現在寝泊まりしている部屋も、中も外の廊下もこの石盤で、部屋の前でサンダルを脱いで中へと入ります。

するとサンダルを脱ぐあたりに砂埃が溜まり、日中はいつもそのあたりに座っているからなのか、そこにたくさんのアリが来たり木の葉が散ったりして結構汚れます。

それをキレイにするため毎日ホウキで掃き、床がツルツルなのですぐにキレイになりますが、部屋の中何ヶ所かに水アカのような汚れがこびりついているのが前から気になっていて、そこを昨日は雑巾を使って水拭きをしました。

その水拭きをし、六年前に百日間駐在したカルナータカ州コスモニケタンの宿舎の部屋を思い出しました。

 

インド カルナータカ州にあるコスモニケタン日印友好学園は、四方にまったく山の見えない広い平原にあり、その分日常的に強い風が吹いて砂埃がよく舞っていました。

コスモニケタン日印友好学園

宿舎は十以上の独立した部屋と食堂、会議室などがある立派なところで、普段はそこで一人で暮らし、たまに施設の世話をする女の人が掃除や片付けに入ってこられます。

その女の人が廊下を水拭きしたりもするのですが、そのやり方が実にインド的で、まず使っている雑巾がボロボロです。
明らかに衣服の断片と分かる布地で、繊維の質によっては水をあまり吸い込まずに使いにくいのです。

その雑巾を床に当て、振り回すと言うか何と言うか・・・、日本のように直線的に雑巾を動かすのではなく、ただすべてに行き渡るようにといった感じで、拭き残しはないもののあまり美しくない吹きムラがたっぷり残ります。

その女の人が、ある日自分のいる部屋の拭き掃除をしてくれました。
とにかく砂埃が多いところなので、掃き掃除は毎日していましたが、その時まで一度も自分で拭き掃除をしたことがありませんでした。

その人が掃除をしてくれた後の部屋は、例によって少しの水気を含んだ拭きムラがしっかり残っています。
けれどその美しくない拭きムラがあるにも関わらず、部屋の気に凛と張り詰めたような透明感が現れてきて、突然のことにとても驚きました。

 

自分はもう三十年以上気功や呼吸法をしているので、気というものがある程度分かります。
ある程度と言うのは、気にはたくさんの種類があり、そのすべてが分かる訳ではないということです。

武道家が相手を飛ばす気、治療家が患者さんを癒す気、そういったものはよく分かりませんが、相手が感じていることを自らが感じ取る気、身体の中の方向性を持って流れている気、そして部屋や土地の気というものはなぜかよく感じられます。

広島の自宅を言葉をかけながら水拭きして感じる気は、部屋が和室で一部の木の床やサッシ窓を中心にやるからでしょうか、それはとても柔らかくて温かい暖色系のものです。

それがコスモニケタンでは、あまり気合いの入っていないと思われるやり方の水拭きであるにも関わらず、広島の自宅とは違う傾向の、けれど同じぐらい大きな変化があったことで、水の持つ大きな力を再認識しました。

 

それからは自分で時折心を込めて部屋を水拭きをするようにし、そのたびごとに、まるで全身を水浴びしたかのような心地よさを感じました。

凛とした空気感の変化、暖色系の変化、この違いはたぶん床の素材から来るものと思われます。
コスモニケタンの部屋は鏡面仕上げではないものの、平面性を保った硬い石盤でした。

 

そのコスモニケタンでのことを、昨日今いる部屋の床を磨いていて思い出しました。

石盤の部屋

部屋の大きさは畳で言うと二十畳以上あり、昨日はそのすべてを磨いた訳ではありません。
汚れの気になっていた箇所数ヶ所を雑巾で擦って磨き上げ、部屋の隅に残っていたゴミを掃き上げる、ただそれだけです。

ですから掃除をすることで何か変化があるのではという期待はまったく1ミリもなかったのですが、それでもハッキリと分かるほどの変化があり、またまた改めて水の力、掃除の力に気づかされました。

ここで感じた変化はコスモニケタンでの変化と同種のものです。
部屋の空気が凛とした透明感を増し、空気が整った、清潔感が向上したという印象を強く持ちました。

部屋の気は、そこで過ごす人の精神状態に大きな影響を与えます。
掃除した後のその整った空気の中にいると、自分の気持ちも整理されてスッキリするのを感じます。

ここまで大きな変化があったのは、鏡面仕上げというものが床の状態を大きく反射、影響する力を持っているからではないかと感じます。
確信とまではいきませんが、多分八割方間違いないでしょう。

 

今は武漢肺炎の影響で、家にいる時間が長くなった方が多いと思います。

その長時間過ごす家は、心の状態が乱れるとそれに伴って乱れてくるものです。
けれどこれは悪循環であり、そんな時だからこそ気持ちを持ち直して部屋の片付けをし、床、窓、壁、家財道具、すべてのものを心を込め、その心を言葉に表しながら磨き上げてください。

その心と行為が家の中すべてに伝わり、それが再び自分の元へと還ってきます。

整った空気の中、今生きている幸せを感じてください。

 

今日撮ったゲストハウスの全景です。

ゲストハウス

昨夜は真夜中にバサッという大きな音がしました。
たぶんこの椰子の葉が落ちてきたのでしょう。

椰子の葉

椰子の実が頭に当たると大怪我をしますが、葉っぱだとちょっと気持ちいいかもしれませんね。