車椅子での利便性

車椅子マーク

「福祉サービスを考える」で書いたコラムニスト伊是名夏子さんの話題が今だネットでくすぶり続けています。

伊是名夏子プログ

伊是名さんは社民党の常任幹事でいらっしゃるのですね。
こういったことに政治が絡むとそれはその政党のプロパガンダと思われ、炎上によけい火を注ぐことになるのは珍しくありません。

そしてこのたびの問題はそれだけではなく、政治団体がバックにあるがゆえ、要求が高圧的になったように思われます。

 

その社民党の中でも、彼女の取った問題提起の方法に疑問を呈する人たちがいて、それをTwitterで表明した#社民党沼津支部がアカウントが凍結されてしまいました。

意見の違いでアカウントを停止させてしまう社民党、それを許してしまうTwitterというのはどういった組織なんでしょう、これは相当闇が深そうです。

 

重い障害を持たれている方でも健常者と同様に移動の自由を確保してもらえるのが理想ですが、現実はそうはいきません。
「無人駅をなくせばいい」と発言される障害者の方もおられますが、そのような発言はより反発を招くだけだと考えます。
<乗車拒否という差別とは何か①~~無人駅で起きたこと~~ / 安積遊歩 | 株式会社土屋>

公共交通機関でも施設でも、昔と比べるとバリアフリー化は格段に進歩し、それはこれからも進歩し続けていくでしょう。
それでも人間の力による介助が必要な場面は必ず残り、それをどの程度まで行うか、また行えるような体制を整えるのかということは、社会的要望、費用等諸々の要素を考慮しなければなりません。

けれど日本ではこういったシビアなことに対して費用や効果という現実面を冷静に計算することが一種タブー視されていて、理想と現実、この二つの大きくかけ離れた両岸から非難合戦をするということがよく見られます。

そしてやはり大切なのは心の持ち方、相手への気遣いであり、日本社会はその性善説に立った上でのルール作りがされていて、そこで己の権利を強く主張すると、それが例えルールから逸脱したものではなくても、社会から非難を受けるのは必然です。

「福祉サービスを考える」で、車椅子の方たちと津和野に旅行に行ってSLに乗った際、不慣れなJR職員の方の介助で八十代のおばあさんが肋骨を折ったと書きました。
そのおばあさんは今は他界されておられませんが、先日その方の娘さんとお会いしてその時の話をすると、やはり今はただ思い出のひとこまになっていて、JR職員の方へ感謝の気持ちはあっても恨む感情はまったくないご様子でした。

誰もがこうあるべきだとは言いませんが、そういった思いで介助してくださる方たちと接し、また介助する側もその思いを受け、心からの手助けをしていくのが理想です。
またそれがどうしてもできないのであれば、福祉サービスとしてできることとできないことをより厳しく線引きする必要があります。

 

現在住んでいる地元広島では、JR、バス、広電(路面電車)、タクシーと様々な交通機関があり、どれも低床、バリアフリーのものが増え、とても使い勝手がよくなりました。
ただし伊是名さんが利用されている電動車椅子は重量があり、階段を上り下りするためには力のある人数名の介助が必要で、またタクシーは福祉車両でなければ乗り込むことができません。

通常の車椅子ですと、階段以外はどのJRもバスも割と楽に利用することができ、車椅子対応の車両も年々増えてきています。

広島市は全国でも最も広く路面電車の路線が残っている街であり、安くて便利で今も市民の大切な足として重宝されています。

その路面電車を車椅子で利用するための問題点を以前調べたことがあります。

これは原爆ドーム前の電停です。

原爆ドーム前電停

ここは世界遺産原爆ドームのすぐ北側で乗降客が多く、特別に路面に芝生が張られています。
ホームも広いので、車椅子でもホームにいたままで電車を待つことができます。

けれど電停の幅は道路全体の幅に左右され、このように広いところばかりではありません。
目的地方向に行く低床車が来なくて電車をやり過す場合、狭いホームでは車椅子があっては乗降客の邪魔になり、その場合は電停にかかっている横断歩道の道路側で待つ必要があります。

この袋町電停はかなり狭く、車椅子に乗って電停で待ち続けるのは困難です。
(それがダメだというルールはもちろんありません)

広電袋町電停

電車を待っている時に、次に来る電車の種類を見極めるには、近づいて来る電車を直接確認するかホームに設置された電光掲示板を見る必要があります

下の掲示板は新しいタイプのもので、到着する電車が車椅子対応かどうかが表示されています。

広電掲示板

けれどこのような掲示板ばかりではなく、旧タイプで低床車のマークが表示さないものも多くあり、また表示があっても、待機している道路際からは見えない場合がほとんどです。

たぶん広電のホームで最も狭いのは観音町の電停で、わずか幅82センチしかなく、あまりにも狭いので、電光掲示板そのものが設置されていません。

観音町電停

この電停に立っていると横を車が通るだけでも恐ろしく、車椅子での利用は極めて困難です。
けれどこれは当初からある道路の横幅によって生じる問題で、道路全体を拡張する以外解決の方法はありません。

車椅子の方に対する利便性を高めるための課題は、簡単に解決できるものもあれば、そうでない難しいものもあるのです。

 

以前この電停の状態を調べた時、比較的簡単に解決できるもの、電車前方に貼ってある車椅子マークをより見やすくする、次に来る電車が低床車の場合、道路の向こう側にいる人にも分かるような表示の仕方を工夫する等、いくつかの提言を考えていたのですが、車椅子の会で担当していた人が会から離れてしまい、それ以降そのままになってしまっています。

これを機会に、そんなに費用をかけず車椅子利用者に対する利便性が高まるものがあるのなら、積極的に提言して行きたいと思います。

障害を持たれている方へのよりよい対応は、やはり障害を持たれた方の目線に立たなければ見えてきません。
その意味でも、気後れすることなく要望はしていくべきだと考えます。

そしてそこに節度と思いやりがあるのが理想です。