広島のトンネル工事の現状視察
今週はじめの原爆記念日から猛暑の続く広島に、
今日は横浜からお客様がやって来られました。

福木トンネルの住宅被害にも書いたように、
私は広島高速1号線の福木トンネル周辺の住宅被害を訴える運動と
高速5号線、その根幹となる二葉山トンネルの建設反対運動に携わっています。

広島高速道路マップ

当初、運動はなかなか盛り上がらなかったものの、
今年の1月に地元RCCテレビでこの問題を取り上げてくれたのを皮切りに、
この8月までにのべ30回ぐらいテレビ局各社がこの問題について大きく取り上げてくださり、
先月からはNHKをはじめ民放キー局が全国ネットで報道してくれるようになりました。

その放送を横浜で圏央道の建設反対運動に取り組んでおられる
横浜環状道路対策連絡協議会の方が見てくださり、
このたび是非広島の現地を視察したいということで、
飛行機に乗って会の方たち4名が広島までやって来てくださいました。

広島駅まで日本地質学会の越智秀二先生とお迎えに上がり、
早速福木トンネルの上、地盤沈下による住宅被害の大きい馬木地区に行きました。

馬木 九平池付近

今日は地元広島テレビとTSS、ふたつの放送局も取材に来ています。

この馬木地区では擁壁や道路等いたるところに大きな亀裂が走っています。

福木トンネル ブロック塀被害

トンネル工事による地下水の枯渇、それによる地盤沈下、
上の写真のようにブロック塀の継ぎ目は広がり、
強固なはずのブロック自体が崩れているのですから、
その被害の大きさたるやすさまじいものです。

強烈な夏の日差しの中、住宅被害の出ている地区を全員で歩いて見て回りました。
横浜から来られた4人の方たちも熱心に質問をし、写真を撮っておられます。

横浜の方たちと視察

ここは入居してからまだ2年のお家ですが、
ブロック塀が傾き、目地に隙間ができてしまっています。

ブロック塀の隙間

ここに住む若いご夫婦は、トンネルのことは全く知らずに入居され、
家の各所に被害が出てきて本当に困り果てておられました。

しかもトンネル着工前の事前調査を受けていないという理由で、
現在広島高速道路公社から保証金の支払いを拒否されておられます。

公社側の説明では、住宅被害が想定されるのは、
トンネルの走る方向から上に各45度、扇形の範囲以内だろうとのことでしたが、
実際はその範囲を大きく超え、馬木地区の100軒以上家から被害の訴えが出ています。

これはコンクリートの車庫入り口にできた亀裂です。

ガレージ入り口の亀裂

こういった亀裂のほとんどすべてが、
トンネルの延伸方向に対して平行に発生しています。
つまりトンネル工事の地盤沈下によるものであるのは明らかなのですが、
公社側はなかなかそれを認めようとはしません。

住宅被害のひどいところでは、
ブロック塀が今にも崩れそうになり、とても危険な状態です。

倒壊寸前のブロック塀

住民の方の強い要請で、つい先日「路肩注意」と書かれたポールが設置されました。

ブロック塀の根本の石垣には、こんなに大きな亀裂が走っていました。

石垣の亀裂

被害の大きいOさん宅の中を見せていただきました。

Oさん宅

畳をはぐって基礎の部分を見ると、ここにも亀裂が走っています。
もちろんトンネルと平行です。

Oさん宅の床下基礎の亀裂

このOさんのお宅では、今年に入ってから毎日家のきしむ音が聞こえ、
床や柱は傾き、各所にヒビが入り、神経がすっかり滅入ってしまい、
朝起き抜けに傾いた床に立った時、足下がふらつくようになり、
現在は医師から処方してもらった睡眠薬を服用されているそうです。

二階へ上がる階段を取り囲むように張り巡らされている梁(はり)すべてに
この様な亀裂が走っています。

Oさん宅 梁に入った亀裂

この梁に亀裂が入った時は夜中にバリッと大きな音が鳴り響き、
ご夫婦二人とも飛び起きたのだそうです。

Oさんは私に基礎にヒビが入った時の音と梁に亀裂が走った時の音の違いを
口頭で説明してくださいました。
本当にすごい体験談です。

横浜環状道路対策連絡協議会の会長 柴田さんが広島テレビの
インタビューを受けておられます。

横浜環状道路対策連絡協議会の会長 柴田さん

横浜では住民の方たちの工事差し止め運動で、
もう20年も工事がストップしているそうです。

建設反対運動をするのは大変ですが、
一旦工事が始まってしまい、この馬木地区のような被害が出たら
その被害状況を訴え、公社に認めさせ、そのキチンとした補償を得るのは
さらに大変なことです。
「絶対に工事はさせない」、そのことをより深く心に刻まれたようでした。

OさんがTSSの取材を受けておられます。

Oさんを取材するTSS石本カメラマン

最初はなかなかテレビ取材を受けるのを拒んでおられましたが、
ここまで被害が広がり、Oさん宅も建て替え以外修復の手段はない状態にまでなり、
近隣住民の方たちの意識の盛り上がりも受け、
今は積極的に被害をマスコミに訴えてくださるようになりました。

Oさん宅の被害が現われている箇所にはすべて赤いテープが貼ってあります。

各所に貼られた赤いテープ

専門の建築士によると、家は複雑にねじれたように傾き、
強い風が吹くと家が裂けるような形で倒壊する危険性があるそうです。

Oさん宅の前の水路には、U字溝の継ぎ目が地盤沈下で広がり、
それを補修した跡が残されています。

補修するも広がる亀裂

しかし一旦補修をしても地盤沈下は治まらず、
その補修をした目地にさらに隙間が開いてきています。

コンクリートの擁壁にもこの様なヒヒが入っていました。

擁壁のひび割れ


午後からは、今度は高速5号線、二葉山トンネルの東側の入り口にあたる
中山地区の見学に行きました。

二葉山トンネル中山入り口付近

馬木地区の住民の方たちも見学に同行してくださいました。

トンネルの入り口にあたたるところはかなりきつい勾配を持つ谷間の傾斜地です。

谷間の傾斜地に立つAさん宅

上の写真右側のAさん宅地下わずか14メートル下を
直径10メートルのトンネルが掘られる計画です。

谷間に堆積した土でできたきつい傾斜地の下を
ごく浅い深度でトンネルを掘るとどうなるのか・・・、
福木トンネル以上の大きな被害が出るのは確実でしょう。

中山の次はトンネル中間部分にあたる牛田東地区の見学です。

二葉山トンネルは、
牛田東1、3丁目という大きな住宅地の真上を横切るルートになっています。

牛田東地区を望む

上の写真真正面が二葉山、上の塔が仏舎利塔です。
カメラはほんの少し南寄りの西側を向いていて、
二葉山の左手(南方向)すぐに広島駅があり、(左端上に見えるのが宮島)
トンネルもこの牛田東地区の真下をほぼ西方向に向かって走り、
二葉山の真下で急激な左カーブをとり、広島駅方向に出口を作るという、
きわめて危険度の高いルート設計になっています。

牛田東地区もかなり勾配のある傾斜地にあり、
今現在でもブロック塀にはこの様な亀裂が各所に見られます。

牛田東地区のブロック塀のひび割れ

我々が見学に来るということで、
牛田東地区の住民の方たちがたくさん集ってくださいました。

牛田東地区にて交流会

越智先生による牛田東地区の地質、トンネルが掘られたらどの様な影響が出るのかというお話、
横浜の方たちのむこうでの反対運動の取り組みについて、
馬木地区の方たちによる住宅被害の状況、公社の姿勢について、
牛田東地区の方たちのトンネル反対運動の今後の展開について等々、
路上ではありましたが、ちょっとしたミニ集会、交流会といった感じになりました。

その後、牛田東1丁目、3丁目を歩いて見て回り、意見交換をしましたが、
住民の方たちの意識と結束は確実に高くなってきています。

トンネル工事絶対反対!

明日は公社が福木トンネルの住宅被害に関する質問への回答書を持ってくる日です。

来月9月下旬には、広島県議会、市議会にトンネル建設反対署名を提出する予定で、
現在10万筆の署名集めを目標にがんばっています。


私はこのトンネル建設反対運動に関わらせてもらってまる1年になり、
その間地域住民の方たちと公社、行政、双方の立場、考え方というものを
しっかりと観させてもらいました。
そして分かったことが、いかに公社、行政が
地域住民の意向や生活に目を向けないかということです。

土建行政というものはとかく批判の的になります。
道路や建物というものは、一体誰のために作るのでしょうか?

まず計画ありきです。
一般市民、住民の知らないところで計画は作られ、
一旦作られた計画は絶対に実現すべく、
ハッキリと言いますが、自分たちにとって都合のいいデータを寄せ集め、
なかば捏造に近いような工作までして計画を推し進めようとします。

当初予算は議会を通りやすいように適当につけ、
あとは予算をいくらオーバーしようが誰ひとり責任を取ることがありません。
実際に過去の広島のトンネル工事はほとんどすべてが大幅な予算オーバーです。

近隣住宅に大きな被害を発生させても、
きちんとした補償をしないだけではなく、
その被害状況を知るための基礎データすら住民に開示しようとしません。

上で紹介した馬木地区のOさんのお宅は、
当初公社の説明では地下40メートルをトンネルが通るとのことでしたが、
夜昼ない突貫工事のあまりにひどい音と振動でたびたび公社に文句を付けると、
トンネルの深さは実際は18メートルしかないということが後になって明らかになりました。

一般論として言わせていただくと、
こういった問題の根底には、役所の官僚的無責任体質、
行政と民間企業である建設会社の癒着、天下り、
あるいは政治献金など根深い日本的悪弊がはびこっているものと思われます。

貴重な自然を破壊し、無駄に税金を使い、
人を幸せにしない、こんな行政のやり方はもうストップです。

自分の身の回りのことで、自分のできる範囲で、
本当に正しいと思う意見をみんなに伝えていきましょう。

その声はいつか必ず届く。
私はそう信じています。

2007.08.09 Thuresday


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