福木トンネルの住宅被害
広島には、私たちが建設を反対している二葉山トンネル(広島高速5号線)と
同時に計画され、すでに着工、工事を完了してい道路が何本かあり、
その中の一本が福木トンネルを含む広島高速1号線です。

広島市内中心部から見て北東の方角に山陽自動車道広島東インターがあり、
そこから高速1号線(福木トンネルは入ってすぐの所)を通って間所(まどころ)というところに出て、
間所から現在計画中の高速1号線を通ってJR広島駅の北側まで道路を作る計画です。

広島高速道路マップ

その昨年10月に開通した高速1号線の福木トンネルの周辺住宅地に
地盤沈下による甚大な住宅被害が発生し、
地元メディアをはじめNHK、民放各局が全国ニュースで取り上げるような
きわめて大きな社会問題へと発展しています。

8月1日午後7時から地元福木中学校の体育館に於いて
広島高速道路公社による被害住民に対する説明会が行われました。
先月に引き続き第二回目の大きな会合です。

福木トンネルの住宅被害に対する広島高速道路公社の説明会

参加者は110名、当初午後7時から1時間半の予定だったのが、
公社の誠意のない対応に被害住民の方たちの怒りが爆発し、
予定を2時間オーバーした10時半まで、
公社に対する批判、意見、要望、質問など熱い議論が飛び交いました。

広島高速道路公社のメンバー

公社の対応は、言葉遣いこそ紳士的なものの、
責任回避、情報隠蔽、住民軽視、事後対応といった体質をありありと感じさせるもので、
地元の人間でない私も思わず熱くなり、
何度か大声をあげてしまうほどでした。

住宅被害の程度は場所によって様々ですが、
現在100軒以上の方たちが被害を訴えておられます。

私もその中の何軒かを訪ねたことがあるのですが、
ひどいところは壁やブロックにヒビが入っている等という生やさしいものではなく、
基礎の一部が崩壊し、本来水平であるはずの床の上をビー玉が勢いよく転がり、
家の重要な構造体である太い梁に大きな亀裂が入っています。

先月全国放送されたテレビ朝日「スーパーモーニング」の中でも、
建築の専門家が被害の大きい家を調査し、
「これは欠陥住宅というレベルを超えている。補修は不可能で建て替えるしかない」
と語っておられるほどです。

昨今、台風や地震で住宅が倒壊したというニュースをたびたび耳にします。
基礎や梁が破壊され、家が傾いてしまった住宅は、
本来持っている家の耐震強度が大幅に低下し、
少しの地震や風水害でも大きな被害を受けるであろうことは、
どんな素人の目から見ても明らかです。

明後日3日には、非常に大きな勢力を持っている台風5号が、
こちら広島にも接近してくる可能性があります。
もしそうなって、トンネル工事で大きく傷付いた住宅が倒壊し、
住民の方が怪我をしたり、最悪亡くなられた場合、
誰がどういった責任をとるのでしょうか。

また、そういったことが十分に予測されるのに、
なぜ前もって対処しようとしないのでしょうか。

今日の説明会ではその点を激しく突かれ、
住民の怒りの声に押されるように
「明日午前中に対応策を決め、対象住民の方たちに連絡します」
と約束させられていました。

けれども住民の方たちが声を上げなければ、
その約束も決して公社の口から聞かれることはなかったでしょう。

この公社の無責任、事後対応、
住民から強い声があがって初めて重い腰を上げるといった体質そのものが、
これほどまでに大きな地盤沈下、住宅被害を生み、
その後被害住民の不安を解消するどころか、
ますます大きな怒りを買う結果となっているのです。

公社側は被害調査、補償額の決定を、
“前向きに”、“慎重に調査をして”などといったお役所言葉を使い
なかなか先へ進めようとせず、
被害額の提示のあったところでも、実際の補修、建て替えに必要な額には
はるか及ばない低い金額しか提示していません。

また提示された金額の明細は一切明らかにされず、
これでは建物、その基礎、そして土地に対して甚大なる被害を受けた住民の方が
納得をするわけがありません。

しかも一般の人たちにはこういった対応をしておいて、
被害地域の一角に変電所のある中国電力には、
6億円という巨額な保証金がすでに支払われているのですから、
力の弱い一般の住民の方たちを馬鹿にしているとしか思えません。

ちなみに変電所のある場所は、比較的被害の少ない場所で、
外部から見る限り、鉄塔が傾いたり、
地盤のコンクリートにヒビが入ったという風には見えません。
またトンネル工事後、被害箇所を補修したという形跡もありません。
けれども保証金6億円です。


福木トンネルの工事と地盤沈下の現状は以下の通りです。

・トンネル工事の当初事業予算88億円に対して最終事業費168億円、
 被害住民に対する補償費を考えると、今後どこまで膨らむか予測不可能。

・地盤沈下の予測量 最大1.5センチ、しかし実際は最大沈下量18.2センチと
 予測値の12倍。
 しかも今後も地盤沈下は拡大する可能性あり。

・工事の計画段階で、地下水は抜けても大きな地盤沈下は引き起こされないと
 地質調査の結果を分析し、結果的に工事にコーサインを出し、
 甚大な住宅被害を引き起こした元凶ともいえる意見を出した大学教授、
 コンサルタントの名前は、住民の要望があるにも関わらず公表されていない。

・トンネルを堀りはじめた当初、2センチという予想外の沈下を引き起こすも
 住民にはそのことを伝えず、さらに工法を変え掘り進め、
 結果としてそれが大きな地盤沈下を引き起こした。

・トンネル工事終了直後、地盤沈下は収束したとの公社側の予測に基づき、
 沈下量を測定する杭を抜き取る。
 しかし地盤沈下は収束していないと感じている多くの住民の声に抗しきれず、
 先月ようやっと新たな測量杭を設置。


今は今日の様に多くの住民の方たちが集り、ハッキリと意見が言えるようになりましたが、
当初はこうではありませんでした。

地盤沈下で住宅に被害が出たということは、その家だけの問題ではありません。
それはその地区全体の評価にもつながり、
風評被害で地元全体が少なからぬ被害を受ける可能性があります。

けれども勇気ある数少ない住民の方たちが声を上げはじめ、
何度も公社に質問状を出し、少しずつ住民の輪を広げ、
マスコミに対しても情報提供をしながら
今日のような大きな運動に発展し、世間が注目し、
公社の方も真剣に対応せざる得ない状況になってきました。

真剣・・・といえば、今日も広島高速道路公社は、
最高責任者の理事長は出席していませんでした。

補修不可能でいつ倒壊してもおかしくないような住宅被害を数多くだし、
平日の夜にも関わらず百名以上の住民の方たち、報道関係者も多数集っているというのに、
なぜ公社は最高責任者が出てこないのでしょうか。

公社の担当者の口からは“誠意を持って”という言葉が何度も聞かれましたが、
実際の対応、行動からは一切それが感じられません。

公社が今のような態度をとり続ける限り、
被害住民の方たちの不安・不満が解消されることはないでしょう。


今日も報道陣が多数来られていて、テレビカメラも四台入っていました。

被害住民の方たちと報道陣

被害住民の方たちと報道陣

一応予定ですが、テレビ放送の予定は、
    8月2日(木) 午後6時〜 広島テレビ テレビ宣言
    8月7日(火) 正午〜 TBS「ピンポン」 全国放送(広島地区はRCC)
    8月7日(火) 午後6時17分〜 広島ホームテレビ Jステーション

となっています。

今回の放送を含めて、
これまで放送された二葉山トンネル、福木トンネルに関するテレビ番組は、
DVDにまとめていますので、
もしご希望の方がおられたら、私までメールをください。

最後に、このトンネル問題に関する活動の貴重な知恵袋、アドバイザー、牽引役である
日本地質学会会員の越智秀二先生のレポートをご紹介いたします。
    福木トンネル被害調査報告 (PDFファイル)

2007.08.01 Wednesday


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