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ヨガナンダ



自分の中の基盤<4>

書いているうちに気付くということがよくあります。
自分の中にある基盤と呼ぶべきもので、
とても大切なものをひとつ忘れていることに気が付きました。

『自分を愛する』ことが大切であると何度も書いてきましたが、
それができるためにも欠かせない大切なものです。


それは自分自身が誰かに愛されているという感覚です。
これがあれば、心の最も深いところで安定したものを感じることができます。
たとえどんなことがあっても、
自分の心の中に救いを求めることができます。

周りの人や両親、家族に対して怒りや憎しみの感情を捨てきれない状態で、
自分自身に愛を傾けることは絶対にできません。
人を愛し人から愛されることと、自分を愛することは、
きわめて相似の関係であり、どちらかだけでは成り立ちません。

二十年前、私の人生で最もつらく苦しい時、
自暴自棄になり、毎日死への憧れを胸に抱き続けていました。

そんな時、唯一の心の支えだったのは、
私に対して絶対的な愛を与えてくれる人の存在でした。
それは私を産み、育ててくれた母親です。

自己嫌悪に陥り、人からも信頼を失ったと恐怖心に駆られている自分にとって、
どんな状態になろうとも、私に変わらぬ愛を捧げてくれる母の存在は、
真っ暗な荒波の向こうに見える小さな灯台のようなものでした。

『人間どんなに苦しくても、自分に絶対的な愛を注いでくれる人が一人でもいれば、
 それを希望として生きていくことができる』
その苦しかった時期に、心からそう強く思いました。

母が亡くなってもう十五年経ちますが、
今でもまぶたを閉じれば母の顔がハッキリと思い浮かびます。

母には数え切れないほどの親不孝をしてきました。
何度も何度も母に悲しい思いをさせました。
けれども母は必ず私を許してくれました。
そして心から私を愛してくれました。

この母からもらった愛は、私の心の奥から消えることはありません。
この愛があるから、人を愛し、自分を愛せるのだと思います。
また人に対しても寛容な気持ちを持てるのだと思います。

思います ・・・ と書くのは、自信がないからではありません。
母からもらった愛は、あまりにも心の奥深くにあり、
もう自分の魂の一部のようになってしまっているので、
自分の感覚では、
それだけを取りだして見つめることができなくなってしまっているのです。

母は私に本当の愛というものは変わることのないものだということを
教えてくれました。

「母の愛」の中ではこう書きました。

愛とは、パワーやエネルギーではありません。
愛とは普遍的なもの、水や空気と同じくいつもそばにあり、
私たちの生命を慈しんでくれる、そういったもの、「状態」なのだと思います。

大河にはいつも大量の水が流れています。
けれども穏やかな大河は、見た目にはその流れをまったく感じさせません。
自ら川面に近づき、川の中に手を差し伸べ、指先に冷たい水の勢いを感じ、
初めてその流れを感じ取るのです。

まだ首の据わらない赤ん坊の頃から乳を与え手塩にかけて育ててくれて、
どんな反抗的な態度をとってもいつも許し、変わらぬ愛情を注ぎ、
そして最期の最期、命が燃え尽きる寸前まで、
私に「愛」というものを教えてくれた母。

愛とは一過性のものではなく、
どんなことがあっても変わらないもの、だから愛とは「状態」なのです。



母はもうひとつ、人間の魂は光り輝く最高に尊い存在だということを
教えてくれました。
母の葬儀を終え、母のことを祈っていた東寺の大日如来様に
お礼のお参りに行った時のことです。

そして大日如来様にもお礼を述べるため、京都の東寺まで行ってきました。
この時にとても素晴らしい体験をしたのです。

大日如来像のあるお堂に入り、
横に並ぶたくさんの仏像の中央に位置する大日如来像を見た瞬間、
心の中で「アッ!」という大きな声をあげました。

大日如来像

少しふくよかな大日如来様のお顔、そのお顔と母の顔が完全に重なったのです。

「母はここにいる!」、
母は大日如来様とひとつになったのだということが
瞬間的に『理解』することができました。

大日如来様と母の存在が、心の中で完全にひとつになったのです。

母の面影は私の心の中にしっかりと息づいています。
これは生涯消えることはありません。
母と大日如来様がひとつになったということは、
私の心の中に常に大日如来様もいてくださるということです。

これからはもう偶像を求め、拝む必要はない、
心の中に宇宙最高の存在がいるのだから。

母は宇宙最高の存在になった。
そして母だけではなく、私も、誰しもがいつかはそうなれるのだ・・・。

これら『真理』を、大日如来様を見た瞬間にすべて感じ取ることができたのです。


大日如来像の前に立って手を合わせました。
そうすると大きな像の背中の方から透明な光の帯が
やわらかな円弧を描くように流れてきて、私のからだを優しく包み込んでくれます。

その光の力はとても力強く、まっすぐ立っていることができず、
その場で思わず後ずさりしてしまうほどでした。

母は永遠の命をもらったのだ。
そしてその命の源は、私たちが想像しうる最高の光り輝く存在であるのだ。
そのことを東寺の大日如来様は教えてくださいました。



私が長い苦労の末、少しずつ自分を愛せるようになったのは、
心の根底に母からもらった変わらぬ愛があったからです。

「自分の内にこそ最高のものがあるんですよ」
こんなことを何度も偉そうに語れるのは、
母から東寺の大日如来様を通して、
人間誰しもが持っているまばゆいばかりの魂の輝きというものを
見せてもらったからです。

母からもらった愛と、見せてもらった魂の輝き、
これは私の中の基盤の中でも最も奥深くにあるものです。


母からもらった愛、それを育てていくには、
その母に対して感謝をすること、
それと今度は自分からその愛を周りの人たちに分け与えることだと思います。

そうすれば、自ずと自分を深く愛せるようにもなるでしょう。
それが内なる魂の輝きを大切にすることにも繋がっていきます。


今日は私の51回目の誕生日です。
「誕生日は、命を与えていただいた両親に感謝をする日です」
こんなことを何度か聞いてきましたが、
やはり年齢を重ねるにつれ、そのことが実感として分かるようになってきました。

今日は母のことをここに書くことができてとても幸せです。

私は自分が過去に書いた文章はあまり読み返さないのですが、
今日はこれまで生きてきたことに感謝するとともに、
再度原点を振り返ろうと思い、
このスピリチュアル夜話に書いた「原点」を<6>まで読み返してみました。

基盤は、当然原点とも深い関わりがあります。
私は自分の原点の志を再読し、意を新たにしました。
「心新たにしたい」と思われている方は、読んでみてください。


みなさんの心の奥底にあるご両親や周りの人たちからいただいた
愛の種はどんな形をしているでしょうか。
芽は出ていますか、花が咲いているでしょうか。

もし花が咲いていたならば、
風や昆虫たちがやって来て、花粉を遠くへ運び、
あなたの周りを花いっぱいにしてくれることでしょう。

それが私たち一人一人の幸せであり、世界平和の原点ですね。
愛を運ぶ「千の風」になりたいものです。


「母への思い」も読んでみてください。

2010.12.16 Thurseday  
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