トイレ掃除は心磨き
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■ 非行少年と関わって

そういう考えがベースにあってトイレ掃除に取り組んだわけです。
これからトイレ掃除に何故取り組んだかという話をします。

私は昔から少年院を出た子をお世話しています。趣味で何とはなしにそうなりました。
当初は、市の職員の息子が警察に逮捕されて、その子の面倒をみました。
その子のロコミで仲間に広がり、私のところに次々に来るようになりました。

少年院を出た子ども達の話を聞くと、小学校に行くくらいまでに両親が離婚している。
親のどちらかが男か女をつくり、子どもを捨てて逃げています。それで片親が育てます。
それは育てるのではなく餌を与える状況です。犬、猫なら時々は可愛いと言って餌を与えますが、犬、猫以下で可愛いと言いもせず育てます。つまりただ餌を与えるだけです。

そうして15歳ぐらいになった時に子供は次のようなことを考えます。
逃げた親に対しては、自分が5歳ぐらいの時に悪いことをしたから、それが原因で逃げたと思い、自分で勝手に自分を悪者にしています。今冷たく育てている親に対しては、愛情から厳しく育てているのだと勝手に思い込んでいます。そう思い込まないと生きていけないからです。

それで15歳位になって、そうしたことを整理して何を考えるかというと、親孝行したいと考えるようになります。そして最終的に行き着く結論は、この世から自分がいなくなることが親孝行であると判断します。それで自殺を試みます。手首を切ったり、飛び降りたり、いろんなことをやります。
次に死ねないからオートバイを盗んだり、暴走したり無茶苦茶をやって、それで事故死しても自分の望むところなのです。
そういうことをやっていて、たまたま警察につかまって、それから少年院に行って、出てきて私に最初に言う言葉は「死にたい」という言葉です。これが子供の世界です。

■ 非行に走る子供の親の特徴は

それから親とも何十人と会っています。親から話を聞くと二つほど特徴があります。
まず「人の話を聞かない」、私の話を聞かないのはもちろんのこと、自分の子供の話を聞きません。直接非行に走った原因を「何故か」と聞くと、「親に話を聞いてもらえなかった」と言います。
小学生、中学生の時に「お父さん」とか「お母さん」と話しかけると、「うるさい!」と言われ、「そんなこと知っている」と言って、とにかく親が人の話を聞きません。

二つ目は、学校が悪い、社会が悪い、警察が悪い、役所が悪い、誰が悪い、彼が悪いといって、自分が悪いという言葉が出てきません。この二つが特徴です。

子供の世界と大人の世界を見たら、どちらがおかしいかというと、親が100%悪いです。
三十代、四十、五十代です。なぜおかしいかと考えた時、(第二次大戦の)敗戦で民主主義が入ってきて自由と権利が言われ、地位と名誉と金が手に入れば幸せになれるという新しい価値観で生きてきました。この世代の親は、戦前の価値観を持った一世です。
だから今の十代、二十代は、そういう親に育てられた二世です。
十代、二十代がおかしいのではなくて、おかしい人間は三十、四十、五十代です。
彼等が非行に走ったり、家出したり、暴走族をやっていることは、「今のあなたたちの世代の価値観はおかしいよ」と口で表現できないから、非行という行動で表現しているのです。

そこで私は、世の中を何とかしていこうとしたら、三十、四十、五十代の人たちの価値観を良くしていかない限り、十代、二十代は立ち直れないと思っています。
親から相談を受ける時は、子供に一回も会わないでも親が変われば子供は立ち直ります。
子供から相談を受ける時には、立ち直りの一番の敵は親です。
だから、三十、四十、五十代の人たちの人間性を何とかしたいということで、私はこうして講演をして歩いてきましたが、なかなかそういう人は聞きに来てはくれません。

■ 女子高生Aのこと

これまで親子関係を抽象論で話しましたが、少し具体的な例をお話しします。
ここに高校一年生の女の子Aがいます。半年ぐらい家出をしていて、私の所に出入りしていました。
私の所へは先の少年院を出た子が紹介者です。
しかし100%本当のことを言わない限り、私は更生の手伝いをしないというのが絶対原則です。
彼は少年院を出て働いていますが、まだやはり金曜日の夜なんかは夜遊びをして、街で女の子をひっかけて帰るわけです。
それが高校一年生の女の子だったので持て余して、「山口さん、面倒を見てあげてください」と電話がかかってきて、私のところに来るようになりました。

そうしてずっと私の所に出入りしていました。私は親に連絡はとりません。
しかしたまたま親がどこかで聞きつけてきて私の所に来て、「娘を助けたい」と言われました。
「それでしたら、それだけの覚悟がありますか。全財産を出して、全生命をかけて助ける気持ちがありますか」と聞くと、「あります」という返事でした。
「よし分かった。お手伝いしましょう。本当のことを言ってあげましょう」と返事をしました。
「お父さん、娘さんが何故家出したか、なぜ三度も警察に補導され、そういう非行をしているか言ってごらんなさい」と聞きました。
「自分は会社のエリートであり、娘は出来が悪かったから、劣等感から家を出ている」と。
「お母さん、なぜそうなったか言ってごらんなさい」と質問しました。
「四人兄弟の末っ子で、甘やかしたからそうなった」と言われました。

「では、本当のことを言ってあげましょう。娘さんはすべて知っています。お父さんには十六年前から愛人が一人いるでしよう。三年前から二人目もできたでしょう。それと手を切ってきなさい」と私は言いました。
また、「お母さん、五年前から男がいるでしよう。それと手を切ってきなさい」と。
「では今から帰って夫婦で話をして、この夫婦でもう一度やり直す気があるならここにおいでなさい」と言いました。すると次の日にもう一度来られて、「夫婦でやり直します」と言われたから、本人にありのままを伝えました。今では本人も立ち直って元気に働いています。

つまりこのように、両親は完全に誤解しています。家族三人で、つまりお父さんとお母さんとそして自分とで夕食を食べることなど「あほらしくてやっていられない」とその子は言います。
各々に男と女がいるわけですからね。自分がこの二人の親から生まれたことは事実であっても、一家団欒で三人一緒に夕食など食べてはおられないと言います。
だから家出などをして、あなた達はおかしいとメッセージを発していました。

■ 女子中学生Bのこと

もう一人の中学一年生の女の子Bなどはまだひどいですが、実は兄貴に家の中でいたずらされています。お父さんも知っているし、おじいさん、おばあさんも知っていますが、何も注意しない。お母さんは男を作って逃げています。それでその家族では話は無理ですから、お母さんを呼び出しました。愛人と一緒に私の所に来ました。本人も来ました。そして四人で話をしました。
「お母さん、悪いですが、今は中学一年生だから、あと二年ほど育ててあげてください。中学を卒業したら本人は働くと言っているから」と頼みました。

お母さんは本人を目の前にして、「いやです。この子は捨てました」と言いました。
その足ですぐ母親の両親(祖父母)に会いに私は行きました。
その人たちも「孫の女の子の面倒を見ない」と言われました。そうなるとその中学一年の娘は、両親から捨てられ、兄弟からも捨てられ、両方のおじいさん、おばあさんからも捨てられてしまった。もうこの世で怖いものなどないですよね。期待もされていないしね。
その子の心はずたずたです。

私がいろんなケースを当たったら、みんな全部、100%親が悪いです。
ではその子供たちがそのことを学校で話すか、警察で話すかというと、絶対に話しません。
恥ずかしいから話しません。学校へ行っても、警察へ行っても、「私が悪い、どうにでもしてくれ」と言って、全部自分が悪いと言って通します。
その子供たちに対して、親が、学校が、警察が、あるいは社会がどう対応しても立ち直らないですよ。
子供は全部本来はいい子です。大人の世界がおかしい。
だから大人の世界を何とかしたいというのが私の考えです。

■ トイレ掃除参加のきっかけは

もともと私はトイレ掃除に興味がなくて、7年くらい前から「行こう、行こう」と誘われていたのを、「いや、いい、私は人間性や人格が出来ているので、トイレ掃除などしなくてもよい」(笑い)と断り続けていました。
今は少年院を出た子供の面倒を見、それに就職の世話もしていますが、トイレ掃除に行くことを条件にしています。

もう少し詳しく話しますと、17歳位で少年院を出てきた子は、私のところに来た時は、二百万円位の借金を持っています。そのバックにヤーさん(ヤクザ)がついています。
未成年者は本来なら借金できないのですが、何だかんだといって、自動車販売会社に車のローンを組ませたことにして、利率29.2%で年間60万円ほど利息だけを追わなくてはいけないようにされています。
ですから毎月5万円をバックについているヤーさんに取られている。そういうヤーさんは一人で何十人もそんな子を持っている。
そのヤーさんに対して私は、「借金を踏み倒しますから」と連絡します。20歳未満は自分ひとりでは借金できないので、違法のため払う必要はありません。それで警察と連絡を取ったり、弁護士と連絡を取ったりしながら関係を切るわけです。
向こうは商売の邪魔をされるわけですから、私の所に夜中でもどんどん電話をかけてきます。
夜中に私に「出てこい」と言うから、「私は私の身分を隠してやっているのではない。東区役所の三階にきたら私はちゃんとおります。文句があったら来なさい」と言っていますが、一回も来たことはありません。もちろん来たら逮捕されるから心配しなくてもいいのです。

ヤクザとの関係を切って、そしてトイレ掃除に行かせて、それで就職を世話します。
というのは、「価値観」が全然違いますからね。そのままパッと就職したって、もう相手の会社に迷惑をかけるだけです。
トイレ掃除を一回やるとガラッと変わります。それを私は体験で知っていましたからね。
これまでも、私が体験する前に既に30人も40人もトイレ掃除に行かせていました。
そんな状況の中で一人に、「トイレ掃除に行ってこい、そうしたら就職を世話する」と言ったら、
「おお、オッサンよ、お前が行くならワシも行ってやる」と言い返してきたので、「よし、分かった」と言って、(トイレ掃除に)出かけました。(笑い)それが私の第一回目です。

■ 安西高校でのトイレ掃除

復活!安西高校

そんなわけでトイレ掃除に行くようになりました。
それが安西高校でのトイレ掃除の第一回目です。
安西高校は、その時に全国一退学率の高い広島の県立高校で、年間150人ぐらいが退学していました。

その時に私と同じ掃除の班に突っ張った特に目立つひどい女の子がいました。
その子は自己紹介する時にもものを言いません。
「はじめます」と言っても5分ぐらい掃除に取りかかりもしませんでした。
それで私は「ほっとけ」と言って、「皆でやろう」と言ってやっていた。
そうすると5分遅れぐらいで入ってやりだしました。
そして今度は「あと5分で掃除をやめるよ」と言ったら、「いやもう少し待ってください」と言って、
12月だったのですが、床を這いずり回って、トレーナーをびしょびしょにしてやっていました。
終わってから皆でむすびと味噌汁を食べました。
そこにはセロファンとか紙コップがある、もちろん各自が自分で捨てに行こうと思っています。
それをその子がサッと立って、自分で拾い集めて捨てに行きました。
そして会が終わった時には皆に対して「ありがとうございました!」と言って。一人一人にキチッと頭を下げていました。
そして結局突っ張ったところがまったくなくなり、素直な女の子になっていました。

たった2時間で何故こんなに変わるのか。
その時はそのことがすごく印象に残りました。
それ以降、私は安西高校には行かなかったのですが、2回目、3回目のトイレ掃除を実施され、その成果として、7年ぶりに運動会ができました。
安西高校では、トイレ掃除を三回連続してやることで、素晴らしい成果を出されたのです。

■ 暴走族対策としてのトイレ掃除

私にはお巡りさんの飲み友達がたくさんいて、その人たちがみな一生懸命です。
トイレ掃除そのものについては、広島ではもともと県警が最初に一生懸命やりだしました。
その県警の飲み友達の竹内さんが、掃除道具としてのホウキがない、刷毛がない、ペンキがないというので、私はもともと役所の土木出身ですからその調達をしては、手に入れて持っていったりしていました。
当時県警はトイレ掃除以外にも、落書きのペンキを消したり、ガム剥がしをやったり、いろんな取り組みを暴走族対策ということでやられていました。
現役の暴走族を連れてきてはやられていました。
しかしどれもあまり効果が出なかったです。もちろん効果ゼロということはありません。
しかし劇的に良くなった取り組みはトイレ掃除です。

掃除に学ぶ会も、最初は公園のトイレ掃除をやっていました。
その当時は、学校のトイレ掃除を申し込んでも一切貸してくれなかったのです。
宗教活動だ、とか言いましてね。
それで私に頼んできて、「どこか場所を探してきてくれ」、「どこかの中学校をトイレ掃除に貸してくれ」と言いますから、それではと私も頼んでみたのですが全部断られていました。

広島県警は、 トイレ掃除がすごく効果があるということをよく知っていました。
それで吉田町と吉田署が、やはり学校を中心にしてトイレ掃除をやっていました。
数千人の町ですが、吉田署が熱心にやっていて、結果としてほとんど犯罪ゼロに持っていったことも知っていました。

そうしたよい事例を私はたくさん知っていました。
その頃は広島は暴走族がすごかったのです。
平成15年度の予算を組む時に、各区役所に30万円ずつ暴走族対策費がつきました。
「広島市から暴走族を無くすためには、とにかく市の仕事としてやらなければならない」ということです。
それは警察だけに任すのではなくて、市には暴走族についての条例も出来ていました。
市の仕事としてもやらなければいけないということでした。
30万円の予算がついて、区の担当者から私のところに具体的なプランが上がってきました。
担当が「講演とパレードを行う」と言いますので、「バカも休み休みに言いなさい。そんなことをやっても何の意味もない」と言って、「トイレ掃除に取り組め」と言いました。ポカンとしていました。

それでとにかくトイレ掃除を体験しろと4名ほど行かせました。それでトイレ掃除が終ってから、
感想発表というのがありますが、その4人は「来年度からは東区役所はトイレ掃除に取り組みますから、よろしく」と私には相談もないまま挨拶をして帰り、「今後、東区役所はトイレ掃除をやると言ってきました」と事後報告がありました。

さて、今日の会場の皆さんの中にトイレ掃除の体験者がおられますか。
体験していない人は、その体験がないと今までの話をよく分からないと思いますし、これから話すこともあまり分からないと思います。
ただ中学生がこういうことを言いました。
中国新聞の記者の取材を受けて「トイレ掃除はどうだった?」と質問されて、「なんぼ口で言っても分からんよ、あんたもやってみれば分かる」と言いました。
中国新聞もさすがで、これがちゃんと記事になっています。
これがトイレ掃除の効果の答えです。

トイレ掃除の効用については、体験した人には快感ホルモンがどんどん出ます。
このことは口でいくら説明しても分かりません。聞いて頭で理解するより体験は10倍も20倍も素晴らしいです。これを頭に入れながら聞いてください。

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