トイレ掃除は心磨き
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***  トイレ掃除感想文  ***


トイレ掃除から学んだこと

先川孝德


私は平成12年4月、かっての上司竹内光弘様を通じ広島掃除に学ぶ会第55回(会場:アリスガーデン)で、トイレ掃除と縁をもたせてもらった。素手素足に抵抗を覚えつつ、集団に従うしかない空氣の中で不思議な時間が過ぎていった。

汚れに触れる直前迄、ジェットコースターが一番高い所へ至る間の心境、触れた途端、心の中は絶叫しているが次第に落ちついてくる。
途中から訳は分からぬが、汗がでる迄体を動かしている。何も考えぬ。ただ無心に手が動いている。
エッ汚れが落ちたよ!途中で成果らしきものを感じる。じゃあこれはどうかな。次なる目標にチャレンジ。そんな中で、あっと言う間に終了の声を聞く。エーもうちょっとやらしてよ。何かこれじゃあ中途半端でスッキリしない。そういう呟きもでるが、終了してみると、ジェットコースターから降りた氣分。ちょっとめまいはするが、オッ何かスッキリしてる。こんな感覚今迄なかったな!何かスゴイことをしたと自分をほめてやりたい氣分にもなる。

当日百人を越える参加者であった。日曜日の朝8時に集合して約二時間、得にもならぬことに参加する人がいる。これは私にとってショックで、まだ広島も大丈夫と本氣で思ったものである。日頃何かあると、自分は何もせずに批判ばかりしていた私にとっては、まさに衝撃だった。

その清々しい氣持ちも翌日からまたズタズタにされていく。不平不満のかたまりとなる。掃除に行くと楽にはなる。しかし、実は当時暴走族の取締りの仕事をしていた私は、掃除に行くとスッキリするが、これで暴走族をなくそうと活動されている竹内様には疑問を感じ、こんなことをするより仕事に取り組む他ないという思いを強くしていた。
さて、そんな思いの中で苦しみの絶頂に達する。イライラの中で吸う煙草で変な咳が続く。やってもやっても成果を感じない。やればやるほど苦しくなる。それ迄の自らへの自信は何だったのか自問が続く。狂っている、皆狂っている日常の中で平氣で生きているものだ、次第に腹が立ってくる。
そんな中でトイレ掃除に参加し、心軽くさせてもらう中で大いなる氣付きを頂く。汚れの中で問題は起きている。生きているということは汚すこと、それを放っているから問題が生じるんだ。汚しながらきれいにしていく存在になることが大切なんだ、ということに氣付かせてもらった。狂った世の中の原因は汚れ、その汚れを作った原因は私にもある。そう思う中で新たな力を与えられる。汚れた世の中にいて臭いと叫ぶ人を見て、その人同様に叫ぶ自分がいた。叫ぶより汚れを取り去ることが解決につながる、なんと虚しい叫びを続けてきたことか。たとえ正論であろうと、叫ぶだけでは汚れは汚れのまま。自分からその汚れを取っていこう。それを支えてもらう言葉、『一つ拾えば 一つだけきれいになる』まさにその通りである。

さて、あとはやっていくのみなのだが、キリがない。やってもやっても汚れがなくなることがない現状に腹が立ってくる。そこにはきれいにした私がないがしろにされたという思いしかない。私が、せっかく私が、とあくまで私しかない。そのうちこんな思いとなる。きれいにすることを目的とすると、汚されると腹が立つ。きれいにする筋肉をつける訓練と思えば、翌日汚されてもきれいにしていけばいいだけ。そう思えば楽になるのである。
今の日本を変えていくにはトイレ掃除しかない、本氣でそう思いを抱く私である。しかし、その活動を何らかの利得に結びつける時、偽りの活動になっていくように思う。
この活動をして一般的な得はない。しかし得にならぬことを淡々と出来るようになると、我が小さくなっていくように思う。人は我が大きくなることで苦しむのだから、我が小さくなれば楽になるのである。我を小さくする実践を続けていくうち、それ迄は感じなかったことを感じるようになる。これがトイレ掃除によって得られるものだと思う。
かの坂本龍馬もこの国を一度洗濯したく候と姉に手紙を書いているようだが、利得、我欲にまみれた世をきれいにしていくことこそ原点ということではないであろうか。この活動は自らの浄化である。我々は金魚鉢の中の金魚同様であり、まずは一人一人が汚しながらきれいにしていく存在へと変化していくことが大切かと思う。その一人が数人となり広がっていく時、その広がりに応じて日本が変わってくるのだと思う。もう待ったなし。全てが行き詰まっている。批判して人を動かすことより、まず自ら行動する人間になろう。これがこの活動の原点である。社会の一番汚れた所に自己の責任を見出す時、大いなる学びを頂けることだろう。
日々風呂で体を洗うように、歯を磨くように、汚れた社会をきれいにしていこう。できる範囲でいいから続けていこう。組織なんか作らなくていい。組織を維持することに力を要し、組織の力が弱まっていることを直視すれば自明の理である。数人のグループがいい。アメーバー的に広がっていくのがいい。アピールなんていらない。感動を伝えられる人に伝えていくのみ。小さな渦を作っていくうち徐々に大きくなっていくように。

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