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日本でも最近体幹力という言葉をよく目にするようになりました。
体幹とは体の幹、体の中心軸のことであり、
この体の根幹部分の力を鍛えることにより、
身体機能の向上、日常動作の安定化を図っていこうというものです。
インドでもこの体幹力という言葉を使うのかどうか分かりませんが、
インド人の持つ体幹の力は、
日本人のそれと比べ圧倒的に優れています。
インド人は水瓶や重い大きな荷物を運ぶ時、
頭の上にその荷物を載せて歩きますが、
この動作をするためには、体の中心軸にブレのないことが絶対条件であり、
これが体幹の力そのものです。
重い荷物を頭の上に載せていても、
それで体が緊張し、ギクシャクすることはありません。
適度に脱力し、しなやかに歩く姿は優美でさえあります。
この強靱でしなやかな肉体を培い、保っているのは、
幼い頃からの生活、労働習慣と、
生命力あふれた健全な食生活にあるのだと考えられます。
コスモニケタンでは、
最近プライマリースクール7年生の教室にハイスクールのお古の机が入りましたが、
1年生から6年生は、
今も硬い石畳の床に直接座って授業を受けています。
机がない、床に座って授業を受ける、・・・
こう聞くと、とてもかわいそうな印象を持たれるかもしれませんが、
実際に子どもたちが教室で勉強している姿を見ると、
そういった感情はほとんどわいてきません。
日本でも学校の遠足の時は、
芝生の上にシートを広げてお弁当を食べますが、
そんなおおらかで、ちょっとだけのびのびとした、そんな雰囲気を感じるのです。
それはインドの大人たちがごく自然な動作で頭上の重い荷物を運ぶことができるように、
子どもたちもまた、硬い床に一日中あぐら座りで腰を下ろしていても、
苦しいそうな印象をまったく与えることなく、
ごく自然なリラックスした姿勢で本を開き、ノートにペンを走らせているからです。
教室に机のあるハイスクールの生徒たちも、
試験の時は廊下に座って答案用紙に向かいます。
こういったことができる素晴らしく逞しい体を持っているということは、
何物にも代えがたい貴重な財産です。
体の中心軸が安定しているということは、
そこから伸びる手足を理想的な形で使うことができるということです。
子どもたちが床に座って授業を受けている時はもちろん、
遊んでいる時、掃除をしている時、または何かの作業をしたり踊っている時も、
その体、手足の動きはとても美しくて無駄がなく、
いわゆる手元が危なっかしいとか、
へっぴり腰、及び腰になってしまうことがほとんどありません。
逆にその動きに見とれてしまうほどです。
インドもこれから少しずつ環境が整備され、
学校も机が完備され、家でも硬い床で寝起きをしたり、
様々な肉体作業から解放される日がきっと来るでしょう。
けれどそうなっても、
今持っているインド人の肉体的逞しさ、体幹の力は、
大切な文化としていつまでも持ち続けて欲しいと願います。
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