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ヨガナンダ



2018年4月5日 ・・・ 共感

二十数年前、人生で最も苦しかった時期、
心の支えとなってくださったのはSさんという女性です。

「母の愛」の中にも書いていますが、
いつも苦しい時には相談に乗っていただき、
勇気づける言葉をかけていただきました。

Sさんは自分よりも二十歳ぐらい年上の女性です。
お父様が有名な宗教・修養団体の幹部でいらしゃったそうで、
世間から人格者として高い評価を受ける一方で、
家庭内では人間としての矛盾点を見ることがあり、
その体験からか、権威というものに頼ることを一切せず、
いつも自らの感性と判断で行動しておられました。

Sさんは、世間の目や常識に囚われ、
苦しみのどん底にいた自分に、
「もっと素直になりなさい」、「自分を愛しなさい」と、
繰り返し繰り返し、何度も語りかけてくださいました。


そのSさんの好きだったのが、
『ともに』、そして『ともに歩みましょう』という言葉です。

人の上に立って言葉をかけるのではなく、
上から引っ張るのでもなく、
ただ寄り添うだけ、ただ時、思いを共有するだけ、
その共感の姿勢が胸に響きました。


日本人はこの共感を、元来多くの人と持てる素晴らしい感性を備えています。

「寒いね」と 話しかければ 「寒いね」と 答える人のいる あたたかさ

これは俵万智の有名な短歌です。
共感とは、同じものを見つめ、同じものを感じる、
これが日本的情緒であり、あたたかさです。

西洋的な、お互いに向かい合い、目と目を見つめ合う理解ではなく、
横に並んで座り、同じ視線で同じものを見つめる、
ただそれだけ、そこには言葉による説明や理論は必要ありません。


広島の呉の外れに、野呂山という素晴らしい瀬戸内の景色を臨む山があり、
そこに滝行を熱心にされ、断食道場も開いておられる
大峰寺の柚原康峰さんというご住職がおられます。
  <滝修行・断食「修行のすすめ」>

  この動画は、野呂山の美しい風景がスライドショーになっています。
  よかったらご覧ください。



その柚原さんが毎月手作りの会報を送ってくださり、
昨日届いたその会報『安心(あんじん)』の中に、
著名な教育者、人格者である東井義雄先生の言葉が載っていました。

これが教育者として生徒と寄り添う理想の姿です。
読んでいて胸が熱くなりました。

広島県のある高等学校の話です。
水泳大会のプログラムの中に、学級対抗のリレーが組まれました。
ある学級で、四人の選手の中、三人まではすぐ決まりましたが、四人目でもめました。
その時、いじめグループの番長が、「Aに出てもらおう」と叫びました。
「そうだ、そうだ、Aがいい」と取り巻き連中が賛成してしまいました。
Aさんは、小児麻痺の女生徒で、とても泳げる体ではなかったのです。
でも、彼らの恐ろしさを知っているみんなは、それに抗議することができませんでした。
いよいよ大会の日、Aさんが泳ぐ番になりました。
1メートル進むのに二分もかかりました。
まわりの中からバカにした笑いとののしりの声が浴びせかけられました。
その時、背広のままプールに飛び込んだ人がありました。
そして「つらいだろうが、がんばっておくれ。つらいだろうが、がんばっておくれ」
と、泣きながらいっしょに進みはじめました。
校長先生でした。
冷たい笑いとののしり声がピタッとやんで、涙の声援に変わりました。
Aさんが長い時間をかけて25メートルを泳ぎぬき、プールサイドに上がったとき、先生も、生徒も、いじめグループのみんなも、一人残らず立ち上がって、涙の拍手をおくり、Aさんをたたえました。
その学校のいじめは、そのときからピタリと姿を消しました。
校長先生が、Aさんの輝きを、みんなに気づかせ、自覚させてくださったのです。



共感とは、言葉ではなく、心の状態、姿勢です。
そしてそこから表れる態度が人の心を動かします。

広島で不登校児を支える私塾『師友塾』を営む大越俊夫先生は、
著書の中でこう述べています。

子どもがパンを盗んできたら、母親はどうするべきか?
叱るより先に、まず、罪の証であるそのパンを子どもといっしょに食べてやってほしい。
私は不登校児の親たちにそう頼んでいる。

もちろん盗みは悪いことに決まっている。
しかし親は、警察官や裁判官であるまえに、罰を加えるまえに、親には泣きながら、子どもの「罪をいっしょに食べてやる」義務がある。


こう考えると、人生は変わるよ。こう考えると、人生は変わるよ。
大越 俊夫

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「心で記憶する」でご紹介した島田紳助の娘のいじめへの対応は、
極めて強烈なものですが、
これもいじめた生徒に向けた共感のメッセージと言えなくもありません。




こうして書いているといろんなことを思います。
先日、愛するプレジャーボートを火災で焼失させた加山雄三は、
歌の中でこんなことを語っていました。

幸せだな〜、僕は君といる時が一番幸せなんだ♪

これも共感の言葉ですね。
面と向かって相手に愛の言葉を贈るのではなく、
幸せを共有したいという思い、実に日本的です。


『情けは人のためならず』
人と人との関係は一方的なものではなく、
人に与えた情は、いつか自分に返ってきます。
人は誰かに何かを教えているつもりでも、
教えている人にとっても、必ずそこから学ぶべき何かがあるはずです。

ですから、人生は“ともに”が基本、
その姿勢が人との共感を呼び、自らの成長の糧となります。



2018.4.5 Thurseday  
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