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鉄は魔法つかい

懇意にしていただいている伊万里焼 鍋島瀬兵窯の陶匠高麗誠さんから

「酒井さんにおすすめの話しがあります。
 畠山重篤(はたやましげあつ)さんです。
 牡蠣のスペシャリストでありますが、
 地球を救うキーワードを自然に体得なされていると思えます。
 学者目線ではなく、
 身体から心から生み出されている姿には学ぶ世界が沢山あります。
 沢山の本をかかれていますが、森は海の恋人と言うフレーズがよいですね」


というメッセージをメールでいただきました。

畠山重篤さんという名前は初耳だったのですが、
東北の牡蠣養殖の漁師という立場からたくさんの本を書かれているようです。

早速近所の紀伊國屋書店に行って調べてみると、
「鉄は魔法つかい」という新刊があることが分かりました。
子ども向けの児童書のコーナーに並べられていて、
たくさんのイラストが挿入され、難しい漢字にはルビがふられています。

なんだか簡単に読めそうな本だと思い、
最初は店内備え付けの椅子に座り、その場で読み始めたのですが、
読み進めてすぐにその内容の奥深さを感じ、
購入し、家でじっくり読むことにしました。

鉄は魔法つかい鉄は魔法つかい
畠山 重篤 スギヤマ カナヨ

小学館 2011-06-01
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畠山さんが進めている「森は海の恋人」というプロジェクトは、
川の上流にある山の豊かな森が、
その水が流れ込む海の豊かさを支えているという自然の循環系に着目し、
私たち人間の自然に対する関わりを見つめ直し、
新しいライフスタイルを提案していこうという取り組みです。

その森と海とをつなぐキーワードが鉄です。
山の豊かな森が海に鉄分を供給し、それが海の資源を育て、豊かにし、
その循環系が世界の隅々にまで行き渡っています。

そのことはこの本を読めばよく理解することができますが、
少し前までは、大手製鉄会社の環境部の人でも知らないことであり、
縁あって畠山さんがそのこと伝え、
そこから太古の鉄鉱石のあるオーストラリアへと話が広がっていきます。

この本に書かれているのは、
地球上で最も豊富な資源である鉄というものを中心に繰り広げられる
壮大なる知のワンダーランドです。

気仙沼の海からそれを育む森へ、日本の海から世界の大洋へ、
三十五億年前の太古の時代、氷河期の時代から現在まで、
話はどこまでも果てしなく広がっていきます。

知のワンダーランド、そこに現れてくるひとつひとつの知は知識でも、
それらが大きく広がる中で、すべてが有機的に結び付き、
すべての知識は生きた知恵となって昇華していきます。

新たな知識と出合い、
それが大きな生命体としての地球の中でどのような役割を果たしているのか、
それを知ることは快感です。
本を読み、ページをめくるたびに胸がドキドキするような興奮を覚えたのは
本当に久し振りでした。


昨日はじっくりと一通り読み、
今日は大切な箇所にラインマーカーで線を引きながら、
さらにゆっくり味わうように読み進めています。

書かれている内容は、是非実際に本を手にとってお読みいただきたいのですが、
この本から学べることは、
自然の中での鉄の果たす役割とともに、
すべての自然は偉大なる結び付きによって成り立っているということです。

スピリチュアルな世界の本でも、
すべてはひとつであるということが語られていますが、
それを実際の自然現象の中で説いているこの本は、
きわめて高い価値のあるものです。


科学万能主義が文明を高度に発展させるとともに、
自然環境を壊滅的なまでに破壊させてきました。

けれども科学そのものに罪があるわけではありません。
その科学というミクロ的思考にのみ囚われ、
全体を見る目を失ってしまったことがいけないのです。

畠山さんの科学的知識を活かしながら自然全体を観察するという姿勢は、
今の私たちに最も求められているものです。


この本は分類としては児童書ではありますが、
書かれている内容はきわめて深く、
理科や科学に興味を持つ高校生ぐらいの子どもから大人まで、
誰にでも深い示唆を与えてくれる本としてお薦めできます。

多数挿入されているイラストや解説も分かりやすく、
書かれている内容を理解する上で大いに役立ちます。

すべてのものの繋がりを感じ、
物事を探求していく姿勢を学ぶ本として、
これより優れたものはなかなかないと思います。

これから社会に巣立っていく子どもたちに、
自然環境を守ろうと懸命に取り組んでいる人たちに、
是非ともご一読いただくことを強く願います。



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