トイレ掃除は心磨き
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***  トイレ掃除感想文  ***

                                                              渡部憲

 7月9日、平和公園の公衆トイレ掃除に参加しました。参加してみて率直に感じたことを少し書かせていただきます。一言で言うのなら「掃除は、頭でするものじゃない。」ということになるのでは、と思った次第です。
 私はこの掃除に参加する以前から、鍵山秀三郎さんの書物を何冊か読み、講演会で鍵山さんのお話を聞いたこともあります。そして鍵山さんの理念の下、自らトイレ掃除を実践なさっている方からもお話を聞かせていただいてきました。
 でも、実際に掃除用具を持ってトイレの前に立ってみると、それらの言葉が「それがどうした?」と嘲笑われているかのように、それだけでは何の役にも立っていないことが実感されました。
 当日午前9時、簡単なミーティングを済ませると、早速レストハウス裏の公衆トイレ掃除にとりかかりました。とりかかると言っても、周りの方はきびきびと動かれているのに、私の手は最初から止まってしまいました。どうしていいか分からなかったのです。目の前に男子用便器があって、クレンザーとサンドメッシュを手渡されているので、きれいにしていけばいいのですが、きれいにしていく手順で戸惑っていました。知らず知らず、何か「ひな型」となるものを周りに求めていました。
 隣の方はいやがるでもなく、ていねいに便器を掃除する方法を自らが実践して教えて下さいました。その方が便器を磨いていかれると、みるみるきれいになっていくように見えました。率直な感想の方がいいでしょうからそのまま書きますと、その時思ったのは、「これなら意外と早く終わるんじゃないかな?」 ということでした。
 それは、「早く帰りたい」という思いではなく、不遜にも「意外と簡単なのでは?」という思いでした。
 その思いは、5分と待つことなく打ち砕かれました。見える部分は軽く磨いても汚れが落ちていく実感があります。それが、便器の見えない裏側の部分に手をやると、こびりついた尿石がしっかりと付着しているのが分かります。10回、20回程度こすったくらいで落ちる代物ではないことが実感できました。
 「どうすれば効率良くきれいにできるか?」そんな思考の入る隙間はすでになくなり、ひたすら便器の中で手を動かしていました。
 手に尿石が当たる度に異臭がしてきます。その匂いが自分の着衣や頭髪に染みついていくのが分かります。決して心地良い匂いではありませんが、イヤではなくなっていました。感覚がマヒしたわけではありません。「このままレストランへ行ったら、みんな席を替えるだろうな。」などと冷静に思いながら、その匂いの中で気持ちは落ち着いていました。
 時折、隣の便器を掃除なさっている方から、横から黄ばみの残っている箇所を指摘して下さいます。同じように酒井さんからも黄ばみの指摘を受けたり、あれを持ってきて、と結構容赦ない指示もいただきました。でも、それが心地良かったりします。(もちろん、私に変な気はありません。)相手を気遣って言葉のトーンを下げることなく、さほど役には立っていない私にも対等の対応をしていただいたのだと思います。それが、とても嬉しく感じました。
 初参加の私には、周りの方はすべてはじめてお会いする方たちばかりでしたし、さほど会話をしたわけではありませんが、とても安心感を感じました。どうしてか分かりませんが、率直な感想です。帰りの車の中で、全身に匂いが染みついていることを感じながら、それでも青い空を眺めながら穏やかな気持ちで家路につきました。

 付け加えて良いなら、もう少し書かせていただきます。私自身がトイレ掃除の良さを薄々感じながら、これまで実行に移せなかったのは、一つは私の行動力のなさにあります。それは間違いありません。それにもう一つ挙げるとすれば、それは「取り込まれる」ことを無意識に警戒していたのかもしれません。長くなるので簡単に書きます。
 以前、私は環境活動のグループに関わっていたことがあります。地球のために良かれと共感して集まった人たちですが、時間の経過とともに活動内容を一部の人が決めて、周りの人はその方針に沿って指示を受けて行動する、とおよそワクワクする内容からは遠のいていたと感じていました。そんなことからか、「○○の会」など名のつくものからはちょっと距離を置きがちです。
 今回、掃除に誘っていただいた酒井さんは、そんなこともお見通しで活動されている方では、と思い参加いたしましたが、お会いしてみてやはりそうだと思いました。というよりも、掃除を含めた色々な活動をそんなスケールでは見て おられないと感じました。周りの方たちからも安心感を感じられたのは、そんなところにあるのでは思いました。
 トイレ掃除にはこれからも参加していきたいと思います。人のためにもなり、自分のためにもなる、とまだ1回きりながらも実感しました。これからもよろしくお願いします。

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