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価値ある一枚

世の中が便利になり、ものがたくさんあふれるようになってくると、
もののありがたみが分からなくなってきます。

どんなものでも、いつでもどこでも大量に手に入る、
それは便利ではあっても、
決して心の豊かさにつながっていくものではありません。

日常の用品であれ、何かを記録したものであれ、、
または芸術の分野のものであっても、
限られたもの、少ないチャンスの中から得られたものの方が、
そのものの持つ価値が私たちに深く伝わってきます。

これはものそのものが持つ特質ではありません。
もの(あるいは こと)と私たちとの関わり、
または私たち自身の内面における感じ方の問題です。

いつも言うように、
価値とは自分の外側のものやことの中にあるのではなく、
もの(こと)と自分との関わり、
あるいは自分自身の中にのみ存在するのです。


今は毎日CDをかけて音楽を聴いています。
CDは手軽に扱えて音もよく、
また何度聴いても傷付いたりすり減ったりすることがないので、
ゆったりリラックスした気分で音楽に浸ることができます。

これは大いなるメリットですが、
反面デメリットとして、音楽に対する思いが希薄になり、
何の感動もなくただ聞き流すだけといったことになりかねません。

その昔、レコードで音楽を聴いていた頃は、
レコード盤のほこりを慎重に拭き取り、
一回聴くごとに盤面が少しずつすり減ってしまうのを意識し、
まさに魂をすり減らすような思いで音楽に耳を傾けたものでした。

これは音楽を作る立場でも同じです。
マルチトラックレコーディングですべての楽器を別々に録音し、
その中で上手く演奏できたパートのみをつぎはぎして作った音楽に、
数少ない機会に演奏者全員が気迫を込めて行った演奏のような、
音楽の深い陰影を見ることは不可能です。


小中学生だった四十年ほど前、
当時の遠足や修学旅行には、大切にしていた小さなカメラを持っていきました。
フィルムは白黒だったりカラーだったりしましたが、
たいてい一回の行程で使えるフィルムは一本で、
1コマの半分で一枚撮るハーフサイズのカメラだったので、
24枚、36枚撮りフィルムはその倍の枚数が撮れるのですが、
それだけですべての旅行の思い出を撮ろうと
頭を働かせてシャッターチャンスをうかがったものです。

今は本当に便利になりました。
デジカメはバッテリーさえ保てば、ほぼ無限に近い枚数を撮ることができます。
しかも失敗しても気軽に削除することができ、無駄な経費は一切かかりません。

いつもバックの中にはコンパクトなデジカメを入れているのですが、
何かを写真に収める時は、
失敗した時のことを考え、何回かシャッターを押すことを心がけています。

ひとつの場面を少しずつ角度を変えながら何度もシャッターを押していると、
心の奥に、ほんの少しの情けなさと痛みを感じます。

〜  こんな気軽に何の思いもなくシャッターを押して、
       本当にいい写真が撮れるのだろうか ・・・  〜

大げさな言い方かもしれませんが、
ただ思いもなく惰性でシャッターを押す行為は、
自分の中の大切な何かをすり減らしているような気にさえなってきます。


パソコンの中にはイベントがあるごとに大量の写真データが蓄積されていきます。
今のパソコンは大量のデータ保存ができますので、
あまり上手に撮れていない写真でも、ついそのままになってしまいます。

これは誰しもが同じことを感じておられるでしょう。

たくさんの写真が欲しいのではない、
本当に欲しいのは、思い出に残る一枚です。


つい先日ネットのニュースを見ていたら、
新卒の新入社員に、入社と同時に子会社の社長を任せるという記事が出ていました。
  <写真共有サービス「my365」運営シロクの構想--内定者が一気に社長>

大学生が企画開発したコンピュータサービス(アプリ)を、
新しく入る会社の中に作った新会社で責任者として運営しようというものです。

そしてそのサービスが「My365」というものなのですが、
このサービスの内容を記事の中で知り、
とても素晴しいものだと感心してしまいました。
  <My365>

My365 は iPhone 向けの写真共有アプリで、
自分で撮った写真をネットにアップし、カレンダーのように日付順に表示します。
ただし毎日アップできる写真は一枚だけで、
複数枚アップした場合、先にアップしたものは消え、
最後の一枚だけが残るという仕組みです。

ですからその日にアップした写真は、
必然的に『その日の思い出の一枚』ということになります。

なんとも素晴しいではありませんか。
その日の一枚、・・・ その日一日にたくさん写真を撮ったとしても、
その日の一枚を撮りたいという思いで撮れば、
自然とカメラを構える思いも違ったものになるでしょう。

そしてそれがカレンダーの上に蓄積されていけば、
どんな素敵な思い出になるでしょう ・・・ 。


私はこのサービスを今すぐ使うことはありませんが、
この素晴しいアイデアを、
なんとか自分の日々の生活に活かしていきたいと感じました。

その日の思い出に残る一枚、
それはその日の自分にとって最も価値ある一枚とも言えます。

その価値ある一枚を撮ることができる瞬間はどこにあるのか、
それを見つめていくことは、
流れゆく時の瞬間瞬間の価値を見つめていくことです。


今この瞬間、何気なく過していると見過ごしてしまうこの瞬間を
価値あるものに変えていきたい、
それは自分自身の思いと見つめ方を変えればできるのだと思います。



2012.1.20 Friday  
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