音の魔術 |
昨日は音に対して新たなるひとつの目を開かせてもらいました。 けれど昨日体験したことについて、それを正確に表現する自信がありません。 それはこれまでの体験を大きく越えたことであり、 また体で感じたことを文字に置き換えるというのは至難の業であるからです。 音や音楽の根底は、人の生き様やすべての自然のあり様と同じです。 それを同じと語れるのは、音と音楽、そして人生における経験を積んだ人のみです。 逆に言うならば、自分の経験の範囲内でしか、 音も音楽、そして人生をも語ることができないということです。 昨日は最近懇意にしているエレクトーン奏者の藤原由紀さんを、 超一流の音の職人であるローゼンクランツの貝崎静雄さんのところにお連れし、 藤原さんの愛用しているエレクトーンのチューニングをしていただきました。 オーディオのパーツを開発し、オーディオの音をよくしていくことと、 楽器の音を改善することは、似てはいるものの本来は異なる分野です。 けれども貝崎さんの仕事にかける姿勢は、 自然、人間、動植物、すべてのもののあり様を根底から突き詰め、 そこから真理を求めて行くというものなので、 どんなものにでも応用が利き、その根本の部分に作用するのです。 エレクトーンの音をチューニングしていく前、そしてチューニングをしている時も、 音、音楽とは何なのか、その根本にある自然、民族性、言語、 それらがどういった関わりを持ち、音や音楽にどの様な影響を与えているのかということを、 淡々と、かつ熱を込めて語り続けておられました。 貝崎さんは私にそのことをホームページに書くように言われましたが、 私にはその言葉を正確にここに再現することができません。 貝崎さんの言われることを、あえてその場でメモしませんでした。 それはそれらをどれだけ自分の胸に刻み込めるかを確かめたかったからです。 けれど過去の自分の体験値を越えた言葉や表現は、 その場では頭に入り、一応は納得できるものの、 体の中に染みこむことはなく、今ここに、要約としても再現することはできません。 言えるのはただ “無知の知” ということだけです。 貝崎さんの仕事ぶりを見、その話(というよりも語り)を聞いていて、 自分自身の経験不足と、 無垢な心で自然と対峙する姿勢がまだまだ欠けていることを痛感させられました。 貝崎さんがエレクトーンをチューニングした音の変化はまさに驚くべきものです。 それは自分の耳と体で強く感じました。 けれどそれを体で受け止められたのは、本当に変化したもののどの程度だったのか、 また体で受け止めた何割ぐらいが意識として頭の中に届いたのか、 そしてその届いたもののどれぐらいを言葉で表現できるのか、 そう考えると、自分の持てる能力、表現力の矮小さにほとほと嫌気が差してきます。 ですからここに書くことは、実際にあった出来事のほんのわずかな部分です。 そのことを初めにしっかりと分かっていただきたくて、 言い訳のようなことを書かせていただきました。 藤原さんは、愛用しているエレクトーン ヤマハのD-DECK(ディー・デック)、 そのスタンド、椅子、アンプ内蔵のPAスピーカー、そのスタンド、ケーブル一式を、 ワゴンタイプの乗用車の後ろに積んで移動しておられます。 昨日土曜日の朝、広島の貝崎さんのお店で待ち合わせをし、 車から一緒に機材を下ろし、店の中でセッティングしました。 普段はこれを藤原さん一人でやっておられるのですが、 女性一人で行うにはかなりの重労働です。 貝崎さんは音のプロフェッショナルではありますが、 楽器の演奏はまったくされません。 まったくしないがゆえに語ることのできる音楽の世界、 貝崎さんの話の手本は、いつも目の前に広がっている自然そのものです。 今回藤原さんを貝崎さんに紹介しようと思い立ったキッカケは、 貝崎さんが開発された新製品が、 楽器の音にも大きな影響を与えるだろうと考えたからです。 そしてやはりご縁、タイミングですね。 貝崎さんが普段活動をしておられる東京から広島のお店(家)に戻ってこられる タイミングと藤原さんの予定がピッタリと合いました。 これが新製品であるふたつのオーディオアクセサリーです。 丸い形をした方がローズ・バイブレーション、 丸い金属盤の中にバラの花びらのような模様が幾重にも描かれていて、 そこに振動をため、中心から外周へ、パターンが疎から密の方へと 美しく広がっていくよう設計されています。 そして四角いカミソリのような形をした方が、 オスカー・サウンドという新ブランドでOEM生産されるオスカーブレードです。 こちらは不要な共振を断ち切り、音にメリハリをつける働きを担います。 丸いローズ・バイブレーションが丸、美しさ、女性の象徴であるのに対し、 四角いオスカーブレードは、 直線、厳しさ、男性の象徴で、ふたつで陰と陽の関係になっています。 これらを楽器に取り付ける前に、まずは現状での音を聴かせてもらいます。 いつものようにエレクトーンに向かい、 両手両足、リズムマシーンとともに奏でられる華やかな音楽は、 普段耳にしているなじみのあるものであり、 私にはそこに何か大きな問題点があるようには感じられません。 けれど貝崎さんにはまったく聴くに堪えない音のようで、 「こりゃ〜まったくダメだ! この音をこれから見違えるようにしてあげるからね♪」 と話し、裏に両面テープを貼ったオスカーブレードを持ち、 左右スピーカーの両脇、エレクトーンの本体、スタンド等に一枚ずつ貼っていかれました。 貼る場所は辺の中央が基本であり、 そこに貼るだけで全体の不要共振が押さえられ、 大きな音の変化を感じ取れるようになります。 けれど今回は藤原さんの音楽的要望に合わせ、 特別に貝崎さんがその音色にマッチするよう、 適切な場所を探って行かれました。 貝崎さんが一箇所ずつ指でなぞるように機材に触れ、 「どの場所が適切かは機材に聞くんだよ。 そしたら機材の方から『ココだよ!』と返事をしてくれて、 ただそこに貼ればいいんですよ」 とのことで、左右のスピーカに貼る場所も、微妙に高さを変えられました。 オスカーブレードは、 スピーカーに貼った瞬間からスピーカーの存在感がまったく変わりました。 言葉で表現するのは難しいですが、寝た子が起きたと言ったらいいでしょうか、 キチンとした意志を持った存在に目覚めたといった感じが伝わってくるのです。 音の変化も直線的な見た目通りです。 オスカーブレードを少しずつ貼っていくに従って音の立ち上がりはエッジの効いたものになり、 音、音楽の流れにメリハリがつき、 エレクトーンから出てくる音が、演奏者である藤原さんと一体になっていくのがよく分かります。 ここで絶対音感という言葉が頭に浮かびました。 絶対音感とは、頭の中に音の高さを判断する絶対的な音感があり、 一音聞いただけでその音のキーを判断することのできる能力です。 私には絶対音感がありませんが、 「これがドの音です」と言ってドを弾いてもらい、 次にミの音を聞くと、それはミだと相対的に判断することは可能です。 貝崎さんには、この絶対音感ならぬ “絶対音質感” というものを、 これまでの数え切れないぐらいの音の経験から持っておられます。 だから藤原さんの最初の音を聞いた瞬間からその音の問題点を的確に判断されました。 私も最初は分からなかったものの、 その音が改善されていくにつれ、 当初抱えていた音の “実態” というものが相対的に理解できるようになりました。 D-DECKというエレクトーンは、様々な楽器のような音、効果音、 そして多彩なリズムマシーンと、 まるで音の万華鏡のような複雑で華やかな音を奏でることができます。 けれどそれらは本来あくまでも脇役であり、 主体となるべきは演奏者の意志と表現力で、 それをバックから支えるように、 あるいは呼応するように聞こえてくるのが理想のスタイルです。 しかし当初聞いた音はその理想のスタイルから大きくかけ離れ、 まるで言うことの聞かない犬を何匹も連れて散歩するように、 脇役のリズムマシーンの音に主役の藤原さんが懸命に追いかけて演奏し、 すべての音を後ろや横から無理矢理に束ねているといった印象を受けました。 いえ、正確に言うと、 そういった印象があったということを、 その問題点を払拭した後から気づいたのです。 オスカーブレードには、多少馴染むための時間が必要なようで、 貼ってすぐに効果が現れるものの、 数分単位で音の変化はさらに顕著に現れてきます。 藤原さんの使っておられるヤマハのPAスピーカーはアンプ内蔵、 エンクロージャーは樹脂製のものなので、 機械的振動を制御する製品が本当に効果を発揮するかどうか不安だったのですが、 それは完全に杞憂でした。 一枚ずつオスカーブレードの枚数を増やしていくたびに、 確実に音にメリハリがつき、音楽としての流れがよくなり、 これまで視線を下に落とし、死んだようになっていたひとつひとつの音が、 少しずつ顔を上げ、藤原さんの方に目を向けるようになってきました。、 オスカー・ブレードは全部で8枚貼り付けたのですが、 それだけでもう効果は絶大です。 そして丸いローズ・バイブレーションも貼りました。 こちらの方はオスカー・ブレード以上に効果が現れるまでに時間がかかりました。 付けた当初は逆にオスカーブレードの効果を弱め、 音が鈍ってしまったかのように感じられたのですが、 数分の時間経過とともに効果は徐々に現れ、 音全体に調和とまろやかさが感じられるようになりました。 ここまで来ると、これまでまったく言うことを聞かなかった音のすべてに調和が取れ、 演奏者である藤原さんを音全体が丸く囲むように手をつなぎ、 ともに楽しくステップを踏みながらダンスを踊っているかのように感じられます。 音に引っ張っていく音、引っ張られる音という区別がなくなり、 すべてが一体化し、渦を巻くような高揚感を醸し出すまでになりました。 不思議なことに、音全体のアンサンブルがよくなったということは、 バックに音がなく、単音で鍵盤を奏でている時にでも如実に感じられます。 それはアンサンブルというものが、 ある瞬間に鳴っているそれぞれの音の関係性によってのみ成り立っているのではなく、 時間とともに流れる音のつながりにも深い関係があるからです。 そのことが音を聴いていてよく分かりました。 それともうひとつ危惧していたのが、 聴衆位置でスピーカーと対面する私たちには音の変化が分かっても、 スピーカーの側面に座って演奏をしている藤原さんに、 微妙に変わっていく音色が分かるのだろうかということです。 けれどこれも完全なる杞憂でした。 貝崎さんや私以上に演奏している藤原さんは、 愛機の音の成長を全身で受け止めておられます。 それが演奏している音からこちらに伝わってきました。 次はD-DECKとふたつのスピーカーから伸びる電源ケーブルの方向性、 極性(+−の関係)、電源タップへの取り付け位置、これらを指定していただきました。 これによって音はさらにリファインされました。 音場の透明度が上がり、音はより一層凜々しいものになり、 音と音楽の贅肉がそぎ落とされ、研ぎ澄まされたといった印象を受けます。 一番最後はPAスピーカーに内蔵されたイコライザーやボリューム位置の調整、 そしてD-DECKとスピーカーをつなぐピンケーブルの 左右、方向性を指定してもらいました。 これは時間がなくて効果を検証することができなかったのですが、 音はさらに素晴らしいものになったものと思われます。 その音の劇的変化に感激され、 藤原さんから貝崎さんに握手を求められました。 この場で経験したことは、 きっと音楽家藤原由紀さんにとって、 生涯忘れることのできないものになると思います。 私の脳裏には、藤原さんと藤原さんが奏でる音楽とが一体となり、 これから加速度をつけてさらなる高みへと昇っていく姿がハッキリとイメージできます。 藤原さんがこういった機会を得られたのもご縁でしょう。 藤原さんは広島市北部の可部という町にお住まいですが、 そこは貝崎さんが以前暮らしておられた家や店舗のある町でもあるのです。 それを聞いた貝崎さんが、 「それは奇遇だね〜、やっぱり何か縁があるのかもしれないね〜」 と話されると、藤原さんが、 「けれど私は本当は可部の出身ではないんです。 生まれは呉市なんです」 と答えられました。 そしてよくよく聞いてみると、 なんと藤原さんの呉市にある出身高校は、 貝崎さんの奥さんの母校でもあったのです。 縁は異なもの、本当に不思議です。 最後に、藤原さんからいただいた感想のメールをご紹介します。 今日は本当に本当にありがとうございました。 おかげさまで、まさに新たなる人生が始まった日です。 貝崎さんという“本物”の方に出会え、 D-DECKが格段のグレードアップを遂げ、 それを媒体として、なにより私自身が覚醒した、 これは…言葉では言い表せない得難い経験です。 貝崎さんに処置を施して頂く中、 “誇り”(という言葉)が響き(振動)として、 体の中からじわっと湧き上がってくる不思議な、かつ確かな感覚を覚えました。 そして、オリジナル曲を演奏しながら、 内側からこみあげてくるものがあり、涙がじわっと出てきました。 諦めずに 音の世界を生きてきて 自分自身を生きてきて 良かった!! そんな想いでした。 初めて、理屈抜きに、自分&これまでの全てを全肯定できたのかもしれません。 実は…朝、顔を洗いながら、 「上に行け!」という内なる言葉を感じ受け取って、 → (?_?) だったので、 (変な人と思われそうですが…私はスピリチュアルオタクではないです(笑)) 貝崎さんと過ごした時間の中で、その意味が分かった次第です。 が、これは…その言葉が示す事柄の“始まり”のような気がします。 ちなみに…少し前は「Trust Me!」という言葉でした。 (鳩山元総理に軽々しく使ってほしくないのですが…) おかげで、同じ“信じる”でもbelieveとtrustの明らかな大きな違いに気づけました。 私は今まで、未だにbelieveで生きていましたから、 もういい加減に、自身を&自分の運命の底力を信頼しようよ!&してよ!(^_^;) って、 魂から&天から言われたような気がしました。 今や、D-DECKが真の相棒になりました。 音楽人のはしくれとして悔いなく生きる!という私の覚悟に応えて、 そのための状況を“整えて”くれたんだと感じます 心に響く音色を奏でられるよう 心と腕を磨きながら 楽しんでいきます。 YUKI FUJIWARA 音の魔術<2>へ 2012.12.2 Sunday Tweet |