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掃除道
公衆トイレ掃除ボランティアの活動をはじめて
この三月でちょうど一年になりました。
今では私の生活の中のほとんどど真ん中に位置するぐらい、
なくてはならない大切なものとなっています。
トイレ掃除は自ら実践するだけではなく、
できれば周りにも輪を広げ、
自分たちの暮らす地域全体をよくしていきたいという願いをいつも持っています。
「トイレ掃除は素晴らしいものですよ、・・・」
その思いを伝えるために、
実践している人の体験談とともに
具体的な掃除方法を説明した冊子を作りたいと考え、
現在掃除仲間と相談を重ねているところです。
そしてその冊子を作る参考にということで、
目で見て分かる掃除の具体的方法、掃除の効用が書かれた
鍵山秀三郎先生の「掃除道」の本を二冊知り合いからプレゼントしてもらいました。
マンガでわかる!鍵山秀三郎「掃除道」
<見本ページ>
「写真・・・」の方はトイレ掃除だけではなく、道路、公園、、学校、洗車、・・・
掃除ノウハウの紹介は多岐にわたっています。
「マンガ・・・」の方はトイレ掃除全般について分かりやすく書かれています。
この一年間、みんなが集まる会としても、また個人としても、
様々な公衆トイレの便器を磨かせていただきました。
また何度か「日本を美しくする会」の活動にも参加して、
学校の清掃活動にも参加しました。
その中でトイレ掃除、その他の清掃全般のノウハウといった
掃除道具の種類や使い方ということを学んできたつもりでしたが、
この二冊の本を読んで、
まだまだ掃除には奥深い世界があるのだということを痛感しました。
掃除に使うひとつひとつの道具は、
どのように使うのが最も効率よく、
かつその道具の持つ特質を活かすことができるのか、・・・。
水道のホースは使い終わったら丸めて片付けます。
ホースの片方の先端約10センチのところに印を付け、
それを起点に約100~120センチのところにも同じく印を付け、
そこにテープを巻いて、
ホースを巻く時は、そのテープがきれいに重なるようにすると、
すべてのホースがきれいに同じ大きさで巻き上がります。

水切りしたバケツは、まず開口部を下に向けて外側から拭きます。
次に開口部を上に向け、
バケツを腕と脇で挟んで拭いていきます。

この二冊の本の中には、このような掃除のノウハウがビッシリと詰まっています。
けれどもこれらは「掃除のハウツー本」ではありません。
掃除というものを通し、その中で余分なものを一切排除し、
徹底して道具というものを活かし、大切にし、
そして掃除する対象を限りなく美しくなるまで磨き上げる方法を学んでいく。
これは掃除だけではなくすべてのものに通じる美学であり、
やはり「掃除道」という言葉以外では表現できない世界です。
華道を学んでいる人は、
「私は花をきれいに生けるノウハウを学んでいます」
とは言いません。
「花を美しく生けるという目的を通して、言葉で表現できない、
生きていく上での大切なものを学んでいるのです」
と言われるでしょう。
掃除道もそれとまったく同じことです。
これらの本の中には、本棚の整理の仕方、押し入れの片付け方、
そういった身近なものの整理の仕方については書かれていません。
けれども掃除道を実践し、(外回りを含めた)身の回りをきれいに磨き、
そのための道具を最大限に活かし、大切にすることに心を傾けたなら、
必ず他のすべてのものも大切にして
もっともっと活かしていきたいと思うようになるはずです。
本の中には掃除のノウハウという “知識” しか書かれていませんが、
それを実践しているうちに他のいろんなものにも応用したくなり、
またできるようになっていきます。
これが “知恵” であり、掃除道の “掃除道” であるゆえんです。
知識は伝えることができますが、
知恵は伝えることができません。
知恵は自らの実践でしか身につけることができないのです。
スペースクリアリングとは、空間を活かす術、
身近にある大切なものに命を与えるための方法です。
一事が万事、一芸に秀でるものはすべてに通ず。
掃除道を通してものを大切にし、活かす生き方(!)を学ぶことは、
スペースクリアリングのみならず、
すべてのもの、生き方に通じる大いなる知恵です。
お腹をすかしている子どもに一匹の魚を与えると、
その子は一日の食をまかなうことができる。
その子に魚の釣り方を教えると、
その子は一生の食をまかなうことができる。
そしてその子に魚を観察させ、自ら魚を捕る方法を編み出させると、
その子は魚だけではなく、鳥でもウサギでも自ら捕れるようになる。
2010.3.1 Monday
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