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2013年1月11日 ・・・ 音楽は命
まずはお詫びを。
1月6日のページに寺井尚子の弾くカッチーニの「アヴェ・マリア」の紹介をし、
その動画へのリンクを張ったのですが、
後になってそのリンクアドレスを間違えていたことに気がつきました。(修正済)
通常YouTubeの動画を紹介する時は、
ページに動画そのものを貼り付けるのですが、
寺井尚子の「アヴェ・マリア」は「埋め込みコード無効」になっていたため、
YouTubeの該当ページへのリンクを張っただけだったので、
うっかりしてその場で間違いに気がつきませんでした。
ここであらためてリンクを張り直します。
寺井尚子(Naoko Terai) Ave Maria /Caccini ( Vavilov )
この「アヴェ・マリア」をこの五日間で百回ぐらい聴きましたが、
何度聴いても心に染み入り、聴き飽きることがありません。
先の「命を活かす」の中で紹介した意識障碍の患者さんへの治療法のひとつに、
全身の筋・関節をリリース(開放)するために微振動を与える
用手微(ようしゅび)運動
というのがありました。
振動、波動というのは命の持つ重要な属性であり、
極論すれば、命もモノもすべて振動、波動であると解釈することができます。
寺井尚子のヴァイオリン演奏における振幅の大きなビブラート、
大きくうねる流麗なメロディーライン、
これらは彼女の持つ生命力の強さそのものの表れであると感じます。
その生命力が音からにじみ出ているため、
ゆったりとした流れで主旋律を奏でていても、
聴くものを飽きさせず、その音楽に惹きつけることができるのです。
この曲を普通の技量の人が、
彼女の演奏と同様ピアノとヴァイオリンというシンプルなアンサンブルで弾いたなら、
きっと冗長で退屈なものとなるでしょう。
彼女の持つあふれんばかりの生命エネルギーは、
様式美を重んじるクラシック畑にはどう考えてもマッチしません。
より自由なジャズというジャンルで彼女らしさを発揮しているのは必然です。
そしてその彼女が時折こうしてクラシック音楽の魅力を私たちに再認識させてくれる、
なんともおしゃれで素敵なことだと感じます。
この曲は前半と後半、 2分40秒あたりから曲調が大きく変わります。
彼女の音の魅力はその艶、流麗さ、そしてうなるような低音の響きです。
特に後半部分の力強い低音を耳にすると、
魂の底から湧き上がってくる生理的快感を覚えます。
この曲を繰り返し聴き続け、
彼女の身体の芯に宿っている強靱なエネルギー体が
頭の中でイメージされるようになりました。
それはまるで「2001年宇宙の旅」に出てくる巨大な石板モノリスのようなものです。
![](img/130111_1.png)
グラスファイバーのように強靱でかつしなやかな生命エネルギーが、
寺井尚子の持つ魅力的な音、音楽を作り出す源泉なのだと感じます。
彼女の日常生活での表情、動作、考え方、これまでの人生の歩み、
それらはいったいどんなものなのでしょう。
素敵な音楽家と出会うとその源を知りたくて、
いつもそんなことを考えます。
寺井尚子の音は、
同じくヴァイオリニストのヴァネッサ・メイのそれと似ています。
寺井尚子の力強い中心力に対し、
ヴァネッサ・メイは疾風の如き瞬発力といった感じです。
寺井尚子は常に強い中心力を保持し、
大きく揺れ動いても、
その強い中心力で必ず中心に戻ってバランスを保とうとするのに対し、
ヴァネッサ・メイはより軽やかに揺れ動き、
揺れ動いてできた新たな態勢のまま、
その中で新たなバランス関係を築こうとしているかのようです。
これは二人の音楽を聴いて感じる音楽的特性であり、
それはまた二人の身体的特性にも通じるものと感じます。
もう少し音楽のことを。
懇意にしていただいている松山の龍源さんの1月9日のブログに、
ベトナムの歌姫カーン・リーさんのことが紹介されていました。
ベトナム戦争で両親、兄弟を亡くした彼女が歌う歌には
郷土への思い、命の儚さ、同じ民族同士が殺し合うことの空しさ、
そういった思いがこめられています。
赤い地の果てに あなたの知らない 愛があることを あなたは知らない ♪
やはりこの歌はベトナム戦争を経験した彼女にしか歌えない、
表現できない歌です。
日本人歌手も何人かカバーしているのですが、
どれを聴いても今ひとつ心に響きません。
今の演歌界でも飛び抜けた歌唱力を持つ島津亜矢が歌っても、
たしかに歌は上手なのですが、
歌の世界が「日本の演歌」の世界であり、
赤い地の果てに ・・・ という歌詞が心に入ってきません。
(あくまで私見です)
<カーン・リーの歌うチン・コン・ソン作詞・作曲「美しい昔」 追記有り>
<加藤登紀子 07.03.05 『美しい昔』から始まったベトナムとの縁>
歌にはその人の生き様が表れます。
特にそれが魂を切り裂かれるような辛い体験であればなおさらです。
昨年大晦日の紅白歌合戦では、
美輪明宏の歌う「ヨイトマケの歌」が大きな反響を呼びました。
<美輪明宏:「2ちゃんねるが絶賛?」ヨイトマケの唄反響に驚き>
二十代までの若い人たちは、この歌を初めて聴いたという方が多いのですね。
その若い人たちが「ヨイトマケの歌」を聴き、
感動し、涙を流したということをネットで見て、
「若い人たちも捨てたもんじゃないな〜」と嬉しい気持になりました。
これは汗水垂らして労働する母親のことを歌った歌ですので、
この思いは世代を超えて響くのですね。
それに情感込めて歌う美輪明宏の歌いっぷりが最高です。
YpuTubeには紅白の時の動画が著作権の関係で、
アップされては削除されるということが繰り返されています。
<ヨイトマケの唄 - YouTube>
音楽は素晴らしい。
そして音楽、それを構成する音自体にも、
その人の生き様、肉体的・精神的特質、その人のすべてが投影されています。
これは決して嘘をつくことのできない世界です。
だからこそ人の心を動かすのですね。
2013.1.11 Friday
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