冬ソナに涙
人よりワンテンポ遅れて昨年の十二月、
「冬のソナタ」をインターネットの動画配信で観ました。

Yahoo!動画では冬ソナの第一話のみが無料配信されていて、
それを観るとつい次も次もということで、
結局全二十話、ノーカット版で二十時間ちょっとを三日間かけて二回も観てしまうことに。

さすがは歴史に残る人気を博したドラマ、何度も感動シーンでは涙を流し、
時には声をあげて号泣することも・・・、
そばに誰もいなくて本当によかったです。 (*^-^*)ゞ

なぜ冬ソナがこんなにも観る人の心を掴んだのか、
いろいろと考えてみて、自分なりに分析したのですが、
あまりにも時期はずれということでずっと保留にしてきました。

けれども思い切って「懐かしの・・・」ということで感じたことを書かせていただきます。
素晴らしいドラマは時を越えた輝きを持っていますので。

冬の恋歌(ソナタ) オリジナルサウンドトラック完全盤 ~国内盤~
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名作と呼ばれる映画やドラマには、
亡くなった主人公を回想するという筋書きがよくあります。
近年では大ヒット映画タイタニックもそうでした。

人は死によって永遠の純粋性を持つことができます。
それは「死んだ人を悪く言ってはいけない」という道徳律から来るのではなく、
人は死によって煩悩という執着から離れ、純粋な魂の存在に還るということを
誰しもが本能的に知っているからなのだと思います。

タイタニックで、愛する二人が奇跡的に生命をとりとめ、
二人して幸福な晩年を迎え、当時の状況を追想するという設定では、
絶対に観る人に大きな感動を与えることはできません。

主人公のジャックが自らの生命と引き替えにローズを救い、
その愛を形として証明したからこそ、
デカプリオ演ずるジャックが、永遠に尊い存在として人びとの心に残ったのです。


冬ソナの中で一貫して流れているのは、主人公ジュンサン(イ・ミニョン)の
生命感の危うさです。

父親の存在を知らずに育ったということで、自らの生に憎しみを持つジュンサン、
あの静かで冷酷な眼差し、そしてその奥にほんの少しかいま見える優しさ、
あの目つきができるスターといえば、日本では市川雷蔵、外国ではジェームス・ディーン
が思い浮かびます。
どちらも短い人生で生命を燃焼し尽くし夭逝した大スターです。

実際ジュンサンは、不慮の交通事故によってストーリーの上で人格的死を迎えます。

そして過去の暗い記憶を忘れ、満点の笑みを持つイ・ミニョンとして再登場したジュンサン、
しかしユジンと再会し、自らの過去の記憶を少しずつ取り戻すと同時に、
二人の過去の関係も元に戻ろうとするのですが、
今度は「血縁」という生での苦しみを味わいます。

様々な葛藤の末誤解が解けた後も、交通事故の後遺症による自らの生命の危機を迎え、
ユジンの前から去っていくジュンサン。

最後は、視覚という極めて大切な現世との接点を無くすることにより、
生きながらにして俗界から離れ、ようやく二人は永遠の愛を実らせることができるのです。

ジュンサンとユジン二人の愛は、常に死と隣り合わせで、
今にも崩れ落ちそうな生命の基盤の上に成り立っているが故、
より純粋で尊いものに感じられるのだと思います。

冬のソナタ ビジュアル オリジナル サウンドトラックDVD
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冬ソナをキッカケに、主演したペ・ヨンジュは日本人女性にとって
憧れの超人気スターとなりました。

荒削りな輝きを持つ高校時代のジュンサン、
誰しもが羨むような爽やかなエリート好青年イ・ミニョン、
そして視覚を失って菩薩のような微笑みを讃えるラストシーン、
三つのまったく違った顔を見事に演じ分けたペ・ヨンジュ、
これは彼の内的な演技力と実際の人柄の力と言うしかありません。

彼の人気の秘密は、その内面の美しさを感じさせるような演技、ルックス、人柄とともに、
ドラマの中で高校生のジュンサンが人格的な死を迎え、
後に失明によって得た永遠の輝きを、
多くの人が現存する役者である彼にだぶらせてイメージしているから
ではないかと思われます。

実際日本の女性ファンのヨン様に対する熱狂振りは、
他のアクションスター、例えばトム・クルーズやブラット・ピット等に対するものと比べても、
心の底から渇望するかのような激しさを感じさせます。

またそれには、ペ・ヨンジュのどこか寂しげな微笑みの奥に、
死を感じさせる精神性をキャラクターとして持っているということも加わっているのでしょう。

彼の写真の中に、目を閉じて微笑んでいるものが数多くあります。
ドラマで最後失明するのと同じく、目を閉じるということは死を暗示させるものです。

死というのは悪い意味ではなく、精神性を象徴するということですが、
彼ほど目を閉じた微笑みが美しい役者は他にいないのではないでしょうか。
ドラマ冒頭のタイトルバックでの、ユジンに雪玉をぶつけられた時の微笑み、
男性から見てもとても魅力的だと感じます。

死者を仏様と尊称で呼ぶのと同じく、ペ・ヨンジュは尊い精神性を象徴している
という意味で、ヨン様という尊称で呼ぶに値する存在となったのでしょう。

冬のソナタ オフィシャル写真付き切手
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若くして一旦人格的な死を遂げたジュンサン、彼はその時点で永遠性を持ちました。
永遠性は普遍性をも意味します。

日本から多くの女性ファンたちが韓国にある冬ソナのロケ地を訪れました。
それはただ単に「憧れのドラマの舞台に立つ」という意味を越え、
普遍性を持つが故に、自己の恋愛を含めた過去の追想体験にもなり得た
のではないかと考えています。

ロケ地を訪ねた多くの女性が、「心が豊かになった」、「心癒されました」
と語った気持ちがとてもよく理解できます。

ジュンサンの訃報に接し、同級生たちが湖で紙を燃やすシーン、
あの瞬間に彼らの思い出多き高校時代は終わり、永遠性を持ち、
普遍性という面では、私たち観ている者全員の共通した過去の思い出として
昇華していったのだと思います。

冬のソナタ DVD-BOX vol.1
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そして最後にはジュンサンが失明し、やっと結ばれた二人にとって、
スキー場での思い出等過去すべての記憶は、同じような形で追体験できないという意味で、
すべてが心象風景となってしまいます。

それは同時に観ている私たちにとって、ドラマすべてのシーンが、
私たちの心象風景にもなったということでもあります。

冬のソナタは、私たちにたくさんの感動と涙を与えてくれたのとともに、
素晴らしいかけがいのない思い出を贈ってくれたのです。

ペ・ヨンジュ 公式サイト
冬のソナタについて
冬ソナ.com
青木さやかの「拝啓、ヨン様」
韓流ナウ
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韓流日報

2005.08.14 Sunday


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