数感覚を鍛える
日本では昔から学力といえば「読み・書き・計算」と言われてきました。
つまり国語の読解力と算数の計算力です。

国語力は能力の幅を広げ、応用力を司ります。
算数の計算力は基本的な処理能力を高めてくれます。
この二つは他のすべての学問の学力、能力を育てる基礎となるものです。

国語、算数どちらも道具学問、ただ単に「知っている」だけではダメで、
道具として完全に使いこなせなければ役に立ちません。
しかし現在の日本の義務教育は「ゆとりの教育」という方針の下、
主要教科の授業時間数が削減され、「読み・書き・計算」といった本来徹底的に
習熟することが求められる分野での練習時間の不足し、
いわゆる「落ちこぼれ」と呼ばれる子供たちを生む最大の原因となっています。

最近は大人の能力開発を目的とした「計算ドリル」、「国語ドリル」も発売され
ベストセラーとなっています。

脳を鍛える大人の計算ドリル―単純計算60日
脳を鍛える大人の計算ドリル―単純計算60日
川島 隆太

混沌とした社会情勢の日本で、原点に戻った基礎的な能力、価値が
再認識されているのでしょうか。
日常生活をより豊かに過ごす方法として、とてもいいことだと感じています。

子供にとっても大人にとっても大切な基礎能力のひとつ、
数感覚を鍛える方法を3つの面に分けて考えてみます。

1.四則計算の徹底

算数・数学は積み重ねの学問です。
四則計算が十分に習熟できて初めて分数計算を楽に解くことができます。
そして分数計算に習熟することによってその上の複雑な方程式が解けるようになるのです。
背の高いピララミッド型の塔を思い浮かべていただくと分かり易いでしょう。
最も底辺にある四則計算という土台が磐石であればこそ、
高等数学という頂を持つ高い塔を築くことができるのです。
最近は四則計算に習熟するための「100マス計算」等のいいテキストが
数多く市販されています。
年齢に関係なく、ラクラクできる易しいところから再トライして、
計算力の土台をしっかりと築き上げてください。

2.数の量的感覚の育成

数直線を頭の中でしっかりと思い描いたり、
複雑な計算式でも概算で答えを出せる能力のことです。
針のついたアナログ時計で時刻を見ると、
現在時刻が分かると同時に前後の時間との差を量的に知ることができます。
この様なアナログ的数感覚をどの様な数式のどの様な数字を見ても
感じることができるようにすることが大切なのです。

数字を覚えたての幼児の場合、1〜100、1〜1000と
数字を順番に書き取る訓練が効果的ですが、
一般におすすめできるのが、公文式の教室で取り扱っている「磁石すうじ盤」です。
子供から大人まで、毎日継続して実践すれば必ず大きな効果を体感することができます。

3.数の質的感覚の育成

数の質的感覚とは、ある数の性質、因数を正確に掴み取る力のことです。
例えば 3×14=42 などの掛け算の答えを速く正確に導くには、
九九をしっかりと暗記し、四則計算に習熟することで可能です。
しかし逆に42を素因数分解し 42=2×2×3×7 と速く正確に答えるためには、
四則計算の能力とともに数の質的な理解が必要です。

最小公倍数、最大公約数を求める力、
分数計算の約分、通分する力などがこれに当たります。
この力を身に付けるには、数多くの計算問題に取り組むことも大切ですが、
素因数分解を暗算でできるぐらいに訓練することが最も効率的な方法です。

具体的には、英単語の学習などでよく使われる単語カードを利用します。
表面にある数を書き、裏面にその数を素因数分解した式を書いて、
それを瞬時に答えられるよう繰り返しトレーニングします。
表面裏面) () () () (2×2) () (2×3
           ・・・ (122×2×3
これを1〜100、できれば200まで、
力に応じて少しずつ大きな数まで範囲を広げながら練習してみてください。

同様にカードを使った最小公倍数、最大公約数の暗算練習も効果的です。
最小公倍数  (表面裏面) (4・612) (8・1224) (9・618
最大公約数  (表面裏面) (18・24) (36・5418) (32・4816

IT大国と呼ばれるインドでは、学校で11〜20までの二乗を暗記させられるそうです。
これも覚えておくと役に立ちます。
   11×11=121  12×12=144 ・・・ 20×20=400

最後に、桁数の多い数を、2、4、9などの小さな自然数で割った時の余りが
素早く計算できる力も身に付けておきたいものです。
そのためには2、3、4・・・といった数の倍数の性質(法則性)を知っておく必要があります。
   2の倍数 ・・・ 1の位が0または2の倍数
   3の倍数 ・・・ すべての桁の数の総和が3の倍数
   4の倍数 ・・・ 10の位が奇数の場合、1の位が2または6
              10の位が偶数の場合、1の位が0、4、8
   5の倍数 ・・・ 1の位が0または5

7を除く12までの倍数の性質を知っておくといいでしょう。

この三つの方向から数感覚を鍛えれば、
大人の方でも、日常生活できっと役に立つことがあるはずです。
高校生以下のお子さんの場合は、処理能力が速くなり、計算ミスも少なくなることでしょう。

未知なる可能性への挑戦をしてください。




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