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1リットルの涙

1リットルの涙―難病と闘い続ける少女亜也の日記 (幻冬舎文庫)
1リットルの涙―難病と闘い続ける少女亜也の日記 (幻冬舎文庫) 木藤 亜也

おすすめ平均
starsあの。
starsキレイゴトじゃない
stars彼女は皆の心の中で生き続けているのです
stars亜也さん、ありがとう
stars難病に侵されながらも懸命に生きる少女

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脊髄小脳変性症という病に冒され25年の短い生涯を閉じた
木藤亜也さんの病と闘った記録を綴ったこの日記は、
本という形で出版された後、映画、TVドラマ化され、
大きな話題となり、多くの人の涙を誘い、感動を与えました。

私は話題になった当時、感動的なドラマで、TVドラマの中で亜也さん役の
沢尻エリカが好演技だということは耳にしてはいたものの、
リアルタイムで体験することはありませんでした。
けれどもこのたび遅ればせながら映画をビデオで見、三冊の本を立て続けに読み、
深い感銘を受けました。


亜也さんが体の異変に気がついたのは15歳の時、
それ以降10年間、治療、リハビリで病と闘いながらも、
脊髄小脳変性症という発生原因の解明も治療法の確立もされていない難病は、
彼女の体を確実にむしばみ、運動、生活機能を奪っていきます。

これから学校生活、友達との交流関係、趣味、恋愛と
楽しいことが山のようにある、まさに人生の華ともいえる時期に
少しずつ衰えていく自らの肉体と対峙しなければならなかった彼女の苦悩は
計り知れないものであったろうと思われます。

私はまず最初に映画を見て、亜也さんの病のこと、
病と闘いながら高校に入学し、その後養護学校に編入、そして入院という
彼女の人生の軌跡を知りました。

1リットルの涙
1リットルの涙 山本文太 田中貴大

おすすめ平均
stars強く生きなければ、と思える映画。
stars俺の涙腺は止められない
stars良い映画です
starsもったいない
stars生き抜いた・・どういうことか分かる作品です

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闘っても決して勝つ(回復する)ことのできない病に、
健気(けなげ)なほど明るく気丈に対峙する亜也さんの生き様は、
この映画で見事に描かれています。

亜也さん役の大西麻恵、お母さん役のかとうかずこ等役者の演技も素晴らしく、
感動は十分に伝わってくるものの、
限られた時間の中に盛りだくさんの内容、エピソードを
詰め込みすぎている感があり、
映画作品としての完成度は必ずしも高いとは言い難いという感想を持ちました。

木藤亜也さん、彼女の生き様をもっと深く知りたい、
そう考えた私は、映画を見終わってすぐに書店に行き、
  「1リットルの涙」 (亜也さんの日記)
  「ラストレター」 (亜也さんがお友達に送った手紙)
  「いのちのハードル」 (お母さんの手記)
この三冊の本を数日の間に立て続けに読んでしまいました。

亜也さんの日記「1リットルの涙」が多くの人の感動と涙を誘ったのは、
人生の最も多感な時期、脊髄小脳変性症という難病に冒されながらも
決して希望を捨てることなく、明るく前向きに、
そしてどんな苦しい時にでも周りの人たちに対する優しい気持ちを持ち続けた
亜也さんの生きる姿勢があればこそです。

「亜也さんのように難病に冒されながらもひたむきに生きている人がいる・・・。
 振り返って、私は健康な体を持ちながら・・・」
多くの人がこのように感じたのではないかと思います。

けれども私たちは亜也さんの書いた日記を読み、
どれほど深く彼女の苦しみを理解することができるのでしょうか。

彼女の強さ、明るさ、優しさが感動を呼んだのですが、
それがゆえに、彼女の文章からは、
彼女の真の苦しみのごくわずかな部分しか理解し得ないのではという
思いを強く持ちました。

私たちが読むことのできる彼女のメッセージは本に印刷をされた活字からですが、
彼女がノートに綴った文章は、病状の進行とともに乱れ、短くなり、
最後ははじめて字を覚えた子どもが殴り書きをしたようなものになっています。
  (直筆のメッセージの一部は本の中で紹介されています)
この事実だけでも彼女の苦悩の一端がうかがい知れるというものです。

ましてや文字としてメッセージを残せなくなった時が
彼女の人生最期の時ではなく、その後も数年間病は進行し続け、
真綿で首を絞めるように彼女の肉体機能、生活能力を奪っていったのですから・・・。


三冊の本を読んで、亜也さんの深い苦しみを感じ心打たれたのは、
皮肉なことに、彼女自身の言葉ではなく、
彼女を周りから見守っている人たちからのメッセージでした。

それはもちろん亜也さんの言葉が健気で前向きだから、
その裏側の部分を周りの人の言葉の中から感じるのでしょうし、
健康が当たり前のように日々過ごしている私は、
病気と闘う彼女の言葉より、健康な周りの人の言葉の方に
病のリアリティーを感じるほど感性が鈍っているのかもしれません。

「1リットルの涙」の巻末には、
主治医であった山本\子先生の手記が寄せられています。
脊髄小脳変性症という病気について、亜也さんの病院での様子、
医療従事者としての役割、苦悩、
医師として、一人の人間として亜也さんと関わってきた山本先生の語る言葉は
深く胸を打ちます。
映画やドラマだけを見てまだ原作を読んでいない方は、
是非巻末の山本先生、お母様の文章だけでも読んでいただきたいと思います。


ラストレター―「1リットルの涙」亜也の58通の手紙 (幻冬舎文庫)
ラストレター―「1リットルの涙」亜也の58通の手紙 (幻冬舎文庫) 木藤 亜也

おすすめ平均
starsとても感動した本、自分を見つめ直せました。
stars前2作を読んだ方は是非!

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亜也さんが高校時代の三人の友人に宛てた手紙からも
年を追うごとに病が進行していくのを感じ取ることができます。

その間波があるものの、一貫して病と前向きに闘い、
周りの人に対する気遣いを忘れない彼女の生き様が涙を誘います。

この本にも巻末に友人たちのメッセージが載せられています。
ほんの短いメッセージですがやはり心を打ちます。

たぶん私だけではないと思いますが、
本当に重い病で苦しんだことのない人間には、
“健康な人の眼” というフィルターを通さなければ
文章で語られる亜也さんの苦しみ、思いはなかなか伝わらないのだと思います。

体験していないことを理解できないのは無理ないことです。
ただそのことを常に頭に置いて物事を見られるかどうか、
この点が大切ですね。
そんなこともを亜也さんの本から学ぶことができました。


三冊の本の中で最も重く深く心に残ったのがお母様の書かれた手記
「いのちのハードル」です。

いのちのハードル―「1リットルの涙」母の手記 (幻冬舎文庫)
いのちのハードル―「1リットルの涙」母の手記 (幻冬舎文庫) 木藤 潮香

おすすめ平均
stars強さ
starsここまで強くなれるか
stars父親になった今
stars本当の涙が流れました・・・・
stars母親はスゴイ!!

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亜也さんが病と明るく前向きに闘い続けてこられたのも、
この素晴らしいお母様があってのことなのでしょう。
お母様の献身的な介護、家族や周りの人たちの亜也さんとの関わりの記録を読み、
亜也さんの闘病生活、生き様が少しだけ深く理解できました。

そしてこの本には、
亜也さんのメッセージには綴られていない(綴ることができなかった)
ほとんど言葉による表現手段を失った最期の四年間の記録も書かれていますが、
私にはそれらのことを簡潔に表現する術を持ちません。

「1リットルの涙」をテレビや映画でしか見たことのない方、
まだ本は原作の「1リットルの涙」しか読んだことがないという方、
そしてすべての医療従事者の方たちに
この「いのちのハードル」を読んでいただきたいと思います。
きっとみなそれぞれの立場、生き様で深く心に残るものがあるはずです。


人が生きていく上には、様々な種類の苦しみ、悲しみがあります。
そのことを私はこの本から強く感じました。

脊髄小脳変性症という難病に冒された木藤亜也さん、
最初は歩くのが不自由になり、車椅子に乗るようになり、
普通科高校に通えなくなり、寝たきりになり、
ペンが持てなくなり、言葉が話せなくなり、・・・
そして最期は植物人間のような状態になるまで身体機能が低下(喪失)し
死を迎える、
こんな深い苦しみが他にあるでしょうか。

また献身的な介護をしながらも、
我が娘の苦しみを救うことのできないお母様のつらさ、もどかしさ。
亜也さんが身の回りのことを自分でできなくなった最期の数年間は、
仕事(保健師)を持つ自分に代わって亜也さんの世話を家政婦さんに
お願いせざる得ないことの葛藤、・・・、
お母様の愛情が深い分だけ苦しみが大きかったことは
この本の中から十二分に伝わってきます。

亜也さんのお世話をする家政婦さんはのべ何十人と替わりましたが、
その中には心ない家政婦さんもいました。
身体能力が低下した亜也さんは、
最期は排泄行為ですら自分の力だけで行えないようになります。
その排泄のメッセージを乏しい体の力を使って家政婦さんに訴えても
うまく伝わらず、失敗しシーツを汚してしまいます。
そのシーツを家政婦さんが換える時、腹立ちまぎれに
まったく体、表現の自由の利かない亜也さんのお尻をたたいた
家政婦さんがいたそうです。

このことを読んで、心の奥底が凍り付くような思いがしました。
その時の亜也さんの感じたであろう深い悲しみはもちろんですが、
それ以上に、こんな残酷なことが平気でできるというその家政婦さんの心に
この上ない深い悲しみを感じました。

これは人間という存在自体が持つ悲しさ、哀れさ、弱さなのかもしれません。
私たちも気づかないうちにこの家政婦さんと同じようなことを
周りの人にしているかもしれません。
なぜかすべての存在に対して深く「許し」を請いたい気持ちになります。


三冊の本を読んでから一週間ほどたってからこの文章を書いていますが、
読んだ直後と今とでは読後感が少し変化し、
時間がたった分だけ亜也さんが伝えてくれたメッセージを
より客観的にみられるようになった気がします。

いわゆる『無知の知』です。
先に書いたように、彼女の苦しみのほんのわずかしか
自分は感じ取れていないということが分かってきたのです。

一週間でとらえ方が変化したように、
これから何ヶ月、何年もすると、亜也さんやお母様に対する見方も
また変わってくることでしょう。

そしてその変化の仕方で、
それまでの自分の生き様を振り返ることができるかもしれません。
またいつかこれらの本を読み返せる日が来るのが楽しみです。


映画「1リットルの涙」は、実際の亜也さんの人生の歩みに対して
ほぼ忠実に作られていますが、
TVドラマの方は亜也さんの生き様を題材にしたドラマとして
登場人物の名前、学校名等も変えられています。

三冊の本を読み、亜也さんに関して知りうる限りのことを知った今は、
ドラマとしての「1リットルの涙」を見るのは、
もう少し先の楽しみにしたいと考えています。

1リットルの涙 DVD-BOX
1リットルの涙 DVD-BOX 木藤亜也

おすすめ平均
stars生きるとは
starsいい作品だけど
stars恋愛したときの心情が分かりすぎて
stars内容も良いですが、音楽も優れています。
stars沢尻エリカ最高

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「1リットルの涙 (テレビドラマ) - Wikipedia」によると、
著書にない恋人役の男性クラスメートの設定がある。
これは今回ドラマ化にあたり、「亜也にも恋愛をさせてあげたかった。」
という母親の要望をフジテレビサイドが汲み取ったものである。

と書かれていました。

これが事実なら、なんともほのぼのと心温まるエピソードですね。



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