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もの食う人びと

もの食う人びと
もの食う人びと
辺見 庸

旅立つ前に
残飯を食らう
食いものの恨み
ピナトゥボの失われた味
人魚を食う
ミンダナオ島の食の悲劇
食と想像力
胃袋の連帯
うどんの社会主義
ベトナム銀河鉄道〔ほか〕


「自動起床装置」で芥川賞を取った辺見庸の世界を旅して綴った
食のルポルタージュです。

『人びとはいま、どこで、なにを、どんな顔をして食っているのか ・・・
 ただ一つだけ、私は自身に課した。噛み、しゃぶる音をたぐり、
 ものを食う風景に分け入って、人びとと同じものを、
 できるだけいっしょに食べ、かつ飲むこと。』


全三十の短編からなる本書は、
短編であるが故の抽象性と、元ジャーナリストで山谷のドヤ街に住みながら
文筆活動を続けたという辺見庸の毒々しいまでの
リアリティーあふれる文体があいまって、その文章からは、
旅した国の土、生活、“食い物”の匂いが漂ってくるようです。

上記の目次を見ていただいて分かるとおり、
これは美味しいものを求めたグルメ紀行本ではありません。
様々な国の民族の底流を流れる食の有様を描いた民俗学の本であり、
そこから人間の本質を浮き彫りにした文化人類学の書です。

バングラデェシュの貧民窟ではすえた匂いのする残飯を、
統一直後のドイツでは刑務所の囚人食を食らい、
チェリノブイリでは放射能に汚染された食物をも口にする。

世界中の特異とも思える食の情景を淡々と描くことにより、
逆に飽食日本の異様な食事情が浮き彫りになってきます。

町中では、24時間季節に関係なく様々な食料品が手に入り、
いつまでたっても腐らない加工食品、
化学添加物によって刺激的な味付けがなされた食品を常食し、
食糧自給率がきわめて低いにもかかわらず、
巷には過食による肥満、生活習慣病に悩む人たちであふれている日本。
この本は、この異常な日本の食の現状に警鐘を与えてくれる警告の書です。

私は本書を古本屋などで見つけると、すぐに買い求め、
周りの知り合いに半強制的に渡して読んでもらっています。

どなたにでも読んでいただきたいですが一冊ですが、、
特に何らかの食に関わる仕事をされている方には是非、
魚柄仁之助氏の本とともにお読みいただきたいものです。

明日の日本を考えるために。
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