循環<3>
陰陽と同じく、中国や日本では古くから宇宙にあるすべてのものを
木火土金水(もく・か・ど・ごん・すい)という五つの要素に分けて考える
五行説というものが、生活の中で身近な知恵として伝えられてきていました。

陰陽も五行も、今ではあまりなじみが薄いものかもしれませんが、
一週間の日月火水木金土という曜日は、
日が太陽で陽、月は陰、
そして火水木金土が木火土金水、五行の各要素となり、
一週間の七日を陰陽と五行で表していることからも、
昔から陰陽も五行もいかに生活に密着したものであったかが
お分かりいただけると思います。

興福寺五重塔

お寺にある五重塔も、ひとつひとつが五行の各要素を表し、
万物を治める象徴としての役割を担っています。


五行の根本思想は循環です。

すべてのものは時の流れとともに変化し続けていて、
新しいものが生まれると同時に、古いものは少しずつ滅していきます。

五行では、この万物が生まれ滅する作用を
相生(そうしょう)、相克(そうこく)というふたつの形で表しています。


これは万物誕生の作用を表す相生図です。

相克

木が燃えて火となり、
火で燃やされたものは灰となり土となる。
土の中から金属は生まれ、
金属には露(水)が生じ、金属(ミネラル)は水を活かす。
そして水は木を育てる。

木火土金水、それぞれを生かすための循環サイクルです。


こちらは万物滅亡の作用を表す相克図です。

相生

木は土の養分を吸い取り、
土は水を濁らす。
水は火を消し、
火は金属を溶かす。
そして金属は木を切り倒してしまう。

木火土金水、この中で相手の働き、存在を殺してしまう循環サイクルです。
ジャンケンのグーとチョキ、チョキとパー、パーとグーの関係と同じです。


相生、相克、どちらの関係も、宇宙全体の循環の仕組みの中で大切であり、
なくてはならないものです。

新しいものが生まれ、成長していくのと同じように、
古いものが滅し、次なるものへとすがた形を変えていく働きがあって
すべての循環がスムーズに行われます。

“生かし合う循環がよくて、相手を滅してしまう循環が悪い”ということではない
ということをよく理解してください。


この宇宙にあるものはすべて共生、循環の関係にあり、
究極的に見て、不必要なもの、悪いものは何ひとつ存在しないのです。



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