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立腰

『教育の基本は立腰にあり』
偉大な哲学者、教育者であった森信三先生は、
背筋を伸ばし、腰骨をきちんと立てることの大切さを繰り返し述べられました。

立腰とは、
一、腰骨を立て
二、アゴを引き
三、つねに下腹の力を抜かぬこと

立腰とは、自己の主体性の確立をはじめとした人間形成を実現する
極めて実践的な方法であり、
「人間に性根を入れる極秘伝」とまで述べられています。


九年前、初めて南インドのホームを訪ねた時、
日々明るく、体全体から生きる喜びを発散している子どもたちと接し、
その喜びのエネルギー、輝く笑顔の源が、
彼らの姿勢のよさから来ていることを感じ、
それまで頭では知っていた立腰の大切さを、
実感として深く感じ取ることができました。



腰骨、背骨は、肉体の中心軸となる支柱です。
そしてこれはまた精神的な支柱でもあり、
この支柱が曲がっていては、
生活、物質的環境、健康、人間関係、・・・
様々な生きていくための条件、基盤が整っていたとしても、
それを享受し、幸せに生きていくことができません。

この世の中(時空)にあるものはすべて共生し、循環しています。
体の上端にある脳と、胴体の下端にある腸が極めて似た形状、
つまりフラクタル(自己相似形)であるということにはとても深い意味があります。

脳と腸は陰と陽の関係であり、
この二つが連携した共生関係を持ち、
互いに情報、エネルギーを循環させることによって
生命を維持し、心身を健全な状態に保つことができます。

この脳と腸とのいい連携を維持するためには、
その間にある中心軸、腰骨、背骨を直立した状態に保つことは
絶対に必要不可欠な条件です。

少し難しい説明かもしれませんが、
これが立腰の根本意義だと考えます。


立腰は極めて重要な教育目標であり、
教育の、またはすべての人にとってよりよく生きていくための
目指すべき最終目標のひとつだと言っても過言ではありません。

腰骨を立てるためには、
日常生活の中でそれを意識するだけでは不十分です。
腰骨を立てられるかどうかは意識だけの問題ではなく、
そうできるための肉体的条件が必要だからです。

ですから腰骨を立てるためには、
立腰ができるための体作り、体育が必要であり、
その体を育てるための食育もまた必要です。

九年前、南インドから帰ってすぐ書いたレポートの中に、
このような図を入れました。



この時の思いは今もまったく変わっていません。
森信三先生が様々な提言をされていた数十年前は、
日本人の体は今よりもしっかりとできていて、
『教育の基本は立腰にあり』と唱えると、
その言葉に応えて背筋を伸ばすことができたのでしょう。

けれど残念ながら今の日本人の肉体は、
数十年前の日本人の肉体と比べて退化してしまい、
意識付けだけで腰骨を立てることができなくなってしまいました。

ですから“腰骨を立てる”ことではなく、
それ以前の“腰骨を立てられるようにする”
そのための教育、指導が求められているのです。


昔の日本人の姿勢のよさを示す写真として、
長崎の原爆で亡くなった弟を焼き場まで背負ってきて、
直立姿勢で順番を待つ男の子の写真が有名です。



この男の子とことが先日ネットで紹介されています。
<「焼き場に立つ少年」血にじむ唇 米写真家の被爆地記録>

この写真が撮られたのは今から72年前、
それから現在に至るまで、
日本は極めて大きく経済発展を遂げ、多くのものを得ると同時に、
この男の子の姿勢に表れているような身体文化を失ってしまいました。

この貴重な身体文化が今はまだ貧しい暮らしをするインドでは残っていて、
それを目の当たりにすることによって、
失われた大切なものに気づかせてもらうことができました。

けれどインドも今は急速に経済が発展し、
生活環境は豊かに、そして快適になりつつあります。
机も椅子もなく、床に直接座らなければいけなかった教室にも机と椅子が入り、
三年前に駐在したコスモニケタン日印友好学園の男子寮には、
立派な二段ベッドが並ぶようになりました。



人間は目に見えるものには敏感に反応しますが、
目に見えないもの、すぐに結果が表れないものに対してはあまり関心を持たず、
鈍い反応しか示しません。

快適で便利な方向へと進む文明の流れは止めることはできませんが、
目には見えなくても極めて大切である身体文化の保持ということを
真剣に考える時が来ています。

人間はあくまでも自然の一造物であり、
人間の生命を育んでくれている地球といい関係を保つには、
正常な身体感覚、身体文化は欠くことができません。


立腰の大切さは、たびたびいろんなところで取り上げられています。

正しい姿勢は脳にいい影響を与え、幸福感をアップさせるとのことです。
  <背筋を伸ばすだけで幸福感も生産性もアップする>

この動画では、うつむいた弱々しいポーズをとると、
ストレスホルモンの値が高まり、海馬が萎縮し、記憶力も低下すると語られています。




腰骨を立てるという身体文化は、
新しい日本を支える基底文化とも呼べるぐらい重要なものです。

立腰の大切さは、近いうちに新しいコーナーを作って
詳しく書いていきたいと考えています。



2017.8.12 Saturday
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