座右の銘
テレビやラジオ、雑誌、様々なメディアを通して膨大な量の新しい情報が日々発信され、
そのまっただ中にいる私たちは、それらの情報をいち早くキャッチし、
生活に取り入れなければ時代に乗り遅れ、幸せになれない・・・、
そんな「幻想」を抱かされているような気がします。

しかし私たちが普通に生きていくために本当に必要な情報は、
その内のごくわずかでしかありません。
前項で80対20の法則というものをご紹介しましたが、
「情報」に関していえばこの比率はより極端なものとなります。

広辞苑には二十数万個の語句が載っていますが、
日常会話の80%以上は、
その中でよく使われる上位1%の言葉で成り立っています。

私たちが絶対に必要だと感じている情報の中にも、
実際にはほとんど価値のない、ただ取り入れることが習慣化してしまっているだけ
というものも数多くあるように思われます。


読書倶楽部の読書について(未読の方は是非お読みください)のページで、
読書のあり方を食べ物の採り方になぞらえてお話ししましたが、
ここの「読書」という言葉を「情報」にそのまま置き換えることも可能です。

一般的に現代人の多くは、
目の前に次から次へと運ばれてくる「新しい情報」という華美なご馳走を
どんどんと口の中に入れ、ほとんど噛まずに飲み込み、
消化不良で栄養過多、運動不足で便秘気味となり、
肥満をはじめとする生活習慣病に悩まされている、
そんな状態ではないのでしょうか。

セミナーや講演を聴きに行ったり新刊書を読んだり、
新しい情報を次々と取り入れること、それ自体が悪いことだとはいいません。
ただその前提として、自分にとって本当に必要な情報は何なのか、
その必要な情報を自分の生活や仕事の中に如何に取り入れ、
これからの生き方の中でどう活かしていったらいいのかという智恵、判断力がなければ、
膨大な情報を消化しきれず、
頭と心の健康を害してしまうことに為りかねないのです。


断食道場、断食療法という言葉を最近よく耳にします。
一時的に食を断つことで、体内の自然治癒力が飛躍的に高まり、
多くの難病や不定愁訴に対して大きな効果があるようです。

瞑想も外部からの情報を断つことで、
内なる声、智恵に耳を傾ける方法です。

ガラクタ捨てれば自分が見える―風水整理術入門を読み、
家の中からたくさんのガラクタを処分された方は、
今まで身近にあったものを十分活かし切れていなかったことを感じると同時に、
本当に必要なものだけが身の回りにあるということが
いかに豊かなことなのかを実感されたことと思います。

時には情報も「情報断食」というものを行い、
情報というものの真の価値を見つめ直してみるのがいいかもしれません。

「いかに多くの新しい情報と接するか」ということに傾けるエネルギーの一部を、
今現在あるものを見つめ直すことに注いでみられては如何でしょうか。

「幸せの青い鳥」のように、探し求めていたものはもうすでに自分の手の中にあった
ということになるかもしれません。

人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ
人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ

情報過多の現代人にとって、新しいものを大量に摂取するよりも、
情報断食をし、体内の代謝を高める方が、
頭と心の健康にとって有益な場合が多いようです。


情報と付き合うポイントは、
  1.自分にとって何が本当に必要な情報かを見定める
  2.その情報を実生活に活かし、蓄積する
この二点にあります。

高額な参加費を払って著名な講師のセミナーに参加しても、
ただ「よかった」と思うだけでは何の価値もありません。
そこから何かを得、その後の生活や仕事にいい変化を起こさせなければ、
自己満足という喜びを得たに過ぎないでしょう。

「感激」と「感動」の違いは、感激はただ単なる心の動き、
その心の動きが実際の行動の変化へと結びついて、はじめて感動となるのです。

いい話を聴いて感激をしたならば、
是非それを実生活に活かし、感動へと昇華させたいものです。

貴重な時間とお金を使って著名な講師の話を聴きに行っても、
話の内容は本に書いてあるのと同じこと、
そんなことがよくあります。

しかし実際に生で講師の顔を見、声を聴くことができたならば、
話の内容がより深く心に刻まれ、感激が感動となり、
日々の暮らしの大いなる糧となるかもしれません。
そこに価値があるのでしょう。

ですから逆に言えば、
人から又聞きしたり、道で拾った新聞や雑誌から得た情報でも、
そこからヒントをつかみ、人生を変えるキッカケとすることができるならば、
こんなに素晴らしいことはありません。

またそれができる人が本当の賢者かもしれません。


情報の価値とは極めて相対的なものです。
インターネット上では価格十万円などというマル得情報が取引されていますが、
それを使って大もうけした人にとっては、その情報は大いに価値のあるものですが、
まったく役立てることができなかった人にとっては、
無価値どころか労力をかけた分だけマイナスの価値となる可能性もあります。


情報の価値を高めるのに必要なこと、
当たり前のことですが、それはその情報を活かすことです。

一冊の本、あるいはセミナーでの話、そこにあるたくさんの情報の中で
たったひとつでいいですから、これだけはしっかりと心に留めておきたい、
これだけは今日からの生活で活かしていきたいというものを見つけることです。

たくさんあるすべての情報を活かすことは無理です。
たったひとつで十分です。
そのひとつのことを活かすことができ、実践できれば、
自ずと周りの情報にも目が向くようになってきます。

書店に並んでいる新刊書はだいたい一冊二千円程度します。
それを一冊買い、読んだ中で役立つと思われるものをひとつだけ一年間しっかりと
実生活で活かしてみてください。
一年たって振り返ってみると、
「あの本を買ってよかった。二千円以上の価値があった」
必ずそう思えることでしょう。

本を読んでも、どこかで話を聴いても、たったひとつ、
本当に自分の生活、生き様の中で役立つものを見つけようという意気込みで
接してみてください。
そうすることで、その本や話の持つ情報の価値が飛躍的に高まってきます。

またこのことを念頭に置いて様々な情報と接すると、
「今の自分にとって本当に必要な情報とは何なのか」
という情報を選別する能力が自然と身に付いてきます。


もうひとつ大切なのは、価値ある情報を蓄積しておくということです。

本を読んだり話を聴いて、そこから得た自分にとって必要な情報が
「毎日一杯のみそ汁を飲むことが健康の元である」 (本当です^^☆)
ということならば、それを日々実践することで活かすことができます。

しかしその価値ある情報が精神論であったり、
ある条件下における行動様式であったりしたならば、
どこかに文字として残しておかなければ
いつかは必ず頭の中から消えていってしまいます。


本を例に取りますと、私は本を読む時、
ラインマーカーでポイントとなるところをチェックするようにしています。
そうすることで、どこが大切な箇所か注意して読むようになり、
本の内容が深く頭に入ります。
また読み返す時に短時間でポイントをつかむことができ、とても効率的です。

エビングハウスの忘却曲線が示すとおり、
人間の記憶は時間の移ろいとともに急速に薄れていきます。
ですから本当に気に入った価値ある本は、読み終わってしばらく(数週間)経ってから
斜め読み程度の感じでもなるべく読み返すようにしています。

そしてそのポイントの中でもとくに大切な、いつも心に留めておきたい言葉は、
普段愛用しているシステム手帳の中に「座右の銘」として収めています。

システム手帳に記載している座右の銘

バインダー方式のシステム手帳ですので、
年が変わっても「座右の銘」はそのまま残すことができます。

私は字があまり上手ではありませんので、
紙に手書きするのではなく、パソコンで打っています。
手書きの方が思いがこもっていい面もあるのでしょうが、
印刷したものは小さい文字でも鮮明に読め、編集が楽で、
パソコン内部にも情報として残るのがメリットです。

私のシステム手帳はごく一般的なバイブルサイズ(171×95o)ですが、
用紙は無地のものが売っていて(200枚で315円でした)、
普通のワープロソフト(Wordや一太郎)とプリンターで簡単に印刷できます。
ご存じない方が多いようですね。


自分にとって最高に価値ある情報を集積した「座右の銘」は、
何物にも代え難い最高の宝物となっています。

ある情報と接した時、その情報の中でポイントはどこにあるのか、
それをどうすれば活かすことができるのか、
そしてそのポイントとなる価値ある情報を蓄積し、
今後末永く活かし続ける為にはどのようにすればいいのか、
このことを心に置き、自分なりの方法を実践してみてください。
より豊かな自分自身と出会うことができるでしょう。

2005.10.20 Thurseday



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