衝撃
『ザルカウィ容疑者が犯行声明、映像公開 イラク邦人殺害』


イラクで「テロリスト集団」の人質となり、彼らによって殺害された香田証生さん。
その殺害の場面を撮影した映像を今日、インターネットで見ました。

言葉がありません。
同じ人間として、なぜあのようなことができるのか・・・。

ネットにおける個人のニュースサイトで映像を見たという記事が載っていました。

検索エンジンにいくつかのキーワードを入れ、調べると、
あるサイトに香田さんを殺害した武装勢力のサイトのアドレスが記されていました。

そのアドレスが記されていたサイトは掲示板です。

映像を見た多くの人の意見が書き込まれています。

   むごい、吐き気がする、
   見なければよかった、
   夜眠れなかった、
   あんなに簡単に・・・。

私も同感です。

映像を見た時、恐ろしさを感じるとともに考えたのは、
殺害したグループのメンバーたちの考え方を自分は理解できるだろうかということです。

理解できない、彼らと話し合いなどしても無駄である、
論理は通用しない、身体が生理的にそう判断しました。

けれども本当にそうなのでしょうか。


7年前、神戸連続児童殺傷事件が起きた時、
マスコミは、前代未聞の凶悪事件、極めて異常な犯行、
このように報道しました。

たしかに凶悪な事件ではありますが、
広い意味では、前代未聞、極めて、という言葉は当てはまらないと思います。

刑罰の歴史に詳しくはないですが、
日本に於いて、ほんの数百年、厳密に言えばたぶん百数十年前まで、
首切りということは公然と行われていたはずです。

死をもって尊としとする武士が切腹をした後は、
介錯人が首をはねていました。

犯罪者は首を落とされ、さらし首ということがあったそうです。

その処刑の場面も公開されていたと聞きます。
(すべてかどうかは分かりません)

戦場で敵の大将を討ち取ったら首をはね、それを持ち帰り首実検をしたといいます。

討ち取られた大将は、家系を絶やし、遺恨を残させないため、
幼い子供も含めて一族郎党すべての者を処刑したといいます。

織田信長は敵の将軍の髑髏(どくろ)で杯を作り、酒を飲んだそうです。

日本人だけが極めて残虐な民族であるということでは決してないと思います。

どこの民族の歴史の中にも同様のものがあるはずです。

ただ、家系でいえば十代ぐらいしかさかのぼらない
ついこの前まで行われていた残虐な行為、
そのことを私たち日本人は忘れてしまっているのではないかということです。

神戸の事件は凶悪で、極めて憎むべき事件です。

しかし私たちの民族的な血、歴史、潜在意識(民族的自意識)というものを考えたならば、
この事件は、「極めて異常な突然変異的に現れたもの」
ではないというふうに私は考えています。

「異常」という言葉は、より深く相手の心理を探り、
自分との関係性を求める行為を拒否する言葉です。


9年前のオウムサリン事件、
優秀なエリート(!)と呼ばれる彼らが犯した大量殺人、
膨大な量のマスコミ報道の中で、そこまで至った彼らの心理を
的確に捉えた報道がいくつあったでしょうか。

結局は、元々彼らの心の中に邪悪で凶悪のものがあったからそうなった、
そんな安易な結論のものがほとんどだったように記憶しています。

私は、もし彼らと同じ立場、環境に置かれても、
彼らがしたような凶行には及ばない、と100%言い切る自信はありません。

彼らを「悪人」とののしり、石を投げることは私にはできません。

何が彼らをそうさせたのか・・・、犯罪に至る心理、
周りの環境によって人間はどう変わるのか、
そのことをしっかりと検証しなければ、本質的な問題解決は得られません。

オウムの事件では、その掘り下げがまったく不十分であったように感じます。

またいつか同じような「悪人」が現れて、凶行が繰り返されないでしょうか。
そうならないことをただ祈るのみです。


香田さんを殺害したグループは、
私に様々な疑問を投げかけました。


個人が営利目的で人を殺せば犯罪者です。
ではなぜ、国の営利のため、戦地で敵を殺せば英雄になれるのだろうか。

なぜ人を殺してはいけないのだろうか。

聖戦、ジハード、聖なる戦いとは何だろうか。

人間の生命と論理、主義、信仰、どちらが尊いのだろうか。

「善なる行為」とは何なのか。
本当にそんなものがあるのだろうか。

先住民インディオの大量虐殺の上に作り上げられたアメリカという国を善とし、
それに対抗するアラブの「テロリスト集団」を悪と捉え駆逐することが、
世界の平和に繋がるのだろうか。

すべては簡単に結論が出せるものではありません。


殺害された香田さんのご遺族の方たち、
殺害したグループに対して、大事な家族が無残に殺されたこと、
またその映像を公開されたこと、
それこそ言葉に出来ないほどの憤り、悲しみを感じておられることと思います。

またその映像を興味本位で見た人間に対しても、
きっとこころよい感情は持たれていないことと思います。

その点は、映像を見た人間として、心よりお詫び申し上げます。

先ほど亡くなられた香田さんに
黙想をしてご冥福をお祈りいたしました。

私にできることは、こうして祈りを捧げることと、
このことから何かを学ばせていただくことだけです。


どうか安らかにお眠りください。

何百万、何千万という人たちが
あなたの死を悼み、
心からご冥福を捧げています。

2004.11.04 Thursday



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