ヨガナンダ 心の時代のパイオニア
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ヨガナンダ



形と型

多くの人が感じているように、
これまでの形ある “もの” に価値の中心に置いていた時代は終わり、
これからは形のない “心” というものが、
より大切となる時代がやって来ます。

形あるものとないもの、物質と精神、
これはふたつひとつの陰と陽の関係で、
お互いに切り離して考えることはできません。

本来霊的存在である私たちは、
肉体という物質を持ってこの世に生を受け、
その物質によって霊、心というもを磨きたいと願っているのだと思います。

ですから物質中心の時代の終焉を迎え、
物質への執着を断ち切り、手放すというスペースクリアリングが、
己の心を見つめ直す手法としてとても大切なものとなってきています。

そして体という物質の健康を追い求めていくと、
その対極にある心のあり方が問われることとなるのです。

これから素晴らしき心の時代になったとしても、
その心を見つめ直させてくれるツールとしての物質の価値は、
変わることなく存在し続けると思われます。

心と物質は、理論と実践の関係と同じです。
心や頭の中にある理論は、
形ある物質の世界での実践を通し、より強固なものとなっていきます。


形の世界の理想を追い求めていくと、
ひとつの “型” というものが生まれます。

その理想的な型を目標とし、それを目指し研鑽する世界、
それが華道、茶道、武道といった道の世界です。
私が身近に関わっているところでは、
掃除道やハガキ道といった、日常の行為を通して心を磨く世界もあります。

定められた型を重んじ、それに絶対的な価値を置くこれまでの宗教も、
ひとつの道を追い求める世界です。


こういった型を重んじる道の世界がいいのか悪いのか、
それを一概に評価することはできません。
いい面もあれば悪い面もあり、まずはそのことを考え、
自分というものをしっかりと持った上で関わっていくことが大切です。

型を学ぶことにより、あるひとつの目標地点にいち早くたどり着くことができます。
自分の判断力が未熟であった場合でも、
型によって大きく間違った方向にそれるのを防ぐことができます。
型を重んずる道の世界は、最も効率的な自分磨きの方法とも言えるでしょう。

けれどもその反面、型を重んずるがゆえ、
自分の中から湧いてくる声に耳を傾けなくなり、
本来価値の主体である自分というものを見失い、
自分の外に絶対的なものが存在するのだと錯覚してしまう危険性があります。

理想の型は素晴らしいものですが、
それと同時にその理想を求める過程で得られる知恵もまた大切なものであり、
最初から理想の型を提示してしまう道の世界は、
その大切な知恵を学ぶ機会を奪ってしまうことにもなりかねません。


この時空を陰陽五行の理で見ると、
これからは陽から陰、物質から心の世界へと移ろい、
五行の木火土金水で言えば、金属から水の世界へと
急速に変化しつつあります。

型を重んずるのは硬く形の定まった金属の理です。
変幻自在、定まった形を持たず、何とでも融合する水の理は、
型を重んずる道の世界とは対極的な存在です。

道の世界がいい悪いの問題ではありませんが、
そのいい面と悪い面、ふたつの面を考えた時に、
今は明らかに硬直化した道の世界は、
悪い面が少しずつ大きく現われるようになってきています。


こんなことは以前にも書いたことがあると思いますが、
ここ数年の短い間だけでも、その変化の傾向は顕著であり、
より一層金属の時代が終わりに近づき、水の理が深まってきていることを感じます。

これまでの安定し、ひとつの道を突き進むような時代は、
形を定め、脇目もふらず、ただ前だけをみて歩いて行けばよかったのですが、
今のようにすべての価値や環境が激変し、
明日がどうなっていくか分からないような時代には、
多少目先の効率が悪くても、常に柔軟な姿勢を忘れず、
ひとつひとつ自分の頭で考えながら歩んで行く方がいいのです。

水に型は必要ありません。
型にはまらないところが水の特質でありよさです。

水はコップの中ではコップの形、雨となっては雨粒に、
様々なものに溶け込み、常温域で固体、液体、気体と常に形態を変化させます。

その場その場の状況、相手に合わせ、
自らの意志で変化させていく、ここに水の持つ素晴らしい価値があります。


型の定まった世界が悪いわけではありませんが、
悪い面が大きく露呈するようになってくるのは時代の必然です。

ハガキ道を実践し、毎日いろんな人にハガキを書いている人たちは、
ほぼ定まった様式の書き方をしています。
それが本来理想的な書き方なのでしょうが、
その様式を頑なに守ることによりパターン化し、
言葉は悪いですが思考が停止し、
まったく心のこもらない美辞麗句のみが並んだ文面になっていることが
よくあります。

その人は相手とのコミュニケーションを深めるために
ハガキを書いているつもりなのでしょうが、
そんなハガキは、返事を書かなければいけない分だけもらった方も迷惑です。

「トイレ掃除は心磨き」というのを合い言葉にトイレ掃除をしていますが、
その掃除の定まった方法(型)をどこまで忠実に実践するか、
その運営の仕方を巡り、人の輪が崩れてしまうこともあります。


理想の型が悪いわけではありません。
しかし形の世界は、その理想的なものを他人から提示してもらうことと同じく、
自ら探し求めていくことにも大きな価値があります。

いったん形が決まり、それを徹底的に突き詰めていくことも大切ですが、
常にその形を疑い、その形の意味というものを問い続けることもまた大切です。


価値の主体は自分の内側にしか存在しません、
これは絶対に変わることのない鉄則です。

形、型、それはその自らの価値を磨くために存在するのであり、
それを金科玉条のように守り、
己の内なる世界に目を向けることができなくなっては本末転倒です。


守破離、まずは形をしっかりと守り、次にその形を破り、
最終的には自らの知恵で、そこから離れていきましょう。

これからの水の時代は、
自らの知恵で大きく飛躍していく時代です。

2011.5.1 Sunday  
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