振動で音は変わる
音は空気中を伝わる振動です。
ステレオ機器において、すべての機器の振動対策がそこから発せられる音に
大きな影響を与えているということが最近明らかになりつつあります。

ステレオでレコードを再生する場合、
レコード盤の溝でレコードプレーヤーの針を振動させ、その振動をアンプで電気増幅させ、
そしてスピーカーのコーン紙を振動させて音を出しています。

CDの時代になり、音情報はデジタル信号で記録されるようになり、
ステレオ機器で直接的に機械振動を扱うものはスピーカーだけになりました。
(CDプレーヤーには、CD盤とピックアップを動かすためのモーターは入っていますが)

CDプレーヤーもアンプも電気振動を扱うだけですので、
その機械振動の管理は問題にならないと考えるのが一般的でした。
しかし実際には音的に振動とは無縁のはずのCDプレーヤーやアンプも
きちんとした置き台に置き振動を制御すると、
機械的に振動しているスピーカーと同様に大きな変化が表れてきます。

アンプ(CDプレーヤーでも同様です)を硬い金属の上に置くと金属的な響きになり、
柔らかいゴム板の上に置くと角のとれたゴムっぽい音になり、
その素材の持つ響きが上に置かれた機械から出る音色に大きく影響を与えています。
これは実際に音を聴いてみるとすぐに分かります。

そのことを徹底的に研究し、理想的なインシュレーター(ステレオ機器の置き台、脚)を
開発しているのがローゼンクランツの貝崎静雄氏、
ステレオの世界では知る人ぞ知る独自の哲学をしっかりと持ったオーディオ職人です。
貝崎氏の開発するインシュレーターは他のものと違い際立った特徴がいくつかあります。



ひとつは神様が作られた偉大な構造体、人体を模しているという点です。
その構造は人体の歯と歯茎と同じ構造になっています。
上下ふたつに分かれたインシュレーターは、下のものはあごの骨、歯茎、歯、
上のものは歯、歯茎、頭蓋骨という構造になっていて、
振動を理想的に吸収できるようになっています。
骨と歯の部分は真鍮、歯茎の部分は ハンダで構成されていて、
そのハンダの部分の微妙な厚みも実際に試作品を数多く作り、
ヒアリングを繰り返し理想のバランスを追及したのだそうです。

理想の振動吸収体を求めた結果、人体構造の中にそれがあったというのは、
素晴らしい発見です。

また歯の部分の尖り具合も色々と実験をした結果、
ピラミッド、水分子の構成角と同じ105度が理想的だったとのこと、
こちらも宇宙の神秘、古代人の偉大な知恵に脱帽です。

もうひとつは材料を生成する時の方向性の問題です。
鋳型に材料を流し込む時、その流し込まれ生成された方向が最も振動情報を伝えやすい
というのが貝崎氏の理論です。
実際に貝崎氏のインシュレーターをその指定された方向からずらして置いてみると
とたんに音に力がなくなってしまいます。

貝崎氏はその金属の方向性を調べるために、材料となる金属(真鍮)の延べ棒を手に持ち、
どの方向、どの持ち方が最も軽く感じるかでその方向性を探っています。

方向性とは、金属の場合は、生成時の生成順、重力が関係し、
木の場合は、根っこから先端へ、幹の中心から表面に向かってが
エネルギーの流れやすい特質を持っているということです。

目に見えないもの、形のない物について文章で表現するのは難しいことですが、
音というものを通して、人間が機械測定の限界を越え、
新たなる物質の本質を感じ取る能力があることを教えてくれています。



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