天上の楽器 ライアー | ||||||||||
楽聖モーツァルトはその短い35年の人生に於いて、 声楽曲、宗教曲、器楽曲・・・様々な分野のクラシックの名曲を700曲以上残しました。 彼は作曲する時に譜面に音符を一気に書き連ね、 決して書き直しをしなかったというのは有名な話です。 きっと彼の頭の中には天上から授かった音楽が鳴り響き、 彼はただそれを譜面に直す作業をしていただけなのかもしれません。 もし天上界という世界があるのなら、 そしてそこに音楽が鳴っているとしたならば、 それはきっとモーツァルトが残してくれた比類無き優美な楽曲のように 聴く人の心を優しく包み込んでくれるようなものであろうと考えています。
天上界で鳴っている音楽がモーツァルトであるとするならば、 その曲はどんな楽器で演奏されているのでしょうか。 またどんな楽器の音色が天上界に最もふさわしいのでしょうか。 これまでそんなことは考えたことがなかったのですが、 最近ライヤーという楽器の演奏を何度か聴く機会があり、 その心とろかすような美しい響きに心奪われ、 これこそまさに天上界で奏でられる天上の楽器だと思い至るようになりました。 ライアーといって思い浮かぶのが千と千尋の神隠しの主題歌を歌っていた 木村弓さんです。
彼女はライアーを弾きながら歌を歌っていましたが、 私が最近演奏を聴かせていただいたライアー奏者の宇月彩さんは、 ライアーの美しい響きにすべてを歌わせておられます。 ![]() 最初毎週参加している積極人間の集いで宇月さんの演奏をお聴きし、 そのすばらしい音色にいっぺんに心奪われ、 宇月さんを囲む交流会、生徒さんたちとの発表会と続けて参加させていただきました。 ライアーは構造的にハープとほとんど同じですので、音もとてもよく似ていますが、 その音から受ける印象にはかなり大きな違いがあります。 楽器自体が大きく、楽器を床に置いた状態で演奏するハープは、 音の芯がしっかりしていて低音が豊かに響き、 まさに豪華な音です。 それに対してライアーは、母親が赤ん坊を胸に抱くようにして演奏し、 耳元でささやくような可憐な響きを持っています。 ハープが盛装して出かける音楽会で聴く音楽なら、 ライアーは、子供の頃に母親の膝枕で聴いた子守唄のようなものかもしれません。 ライアーで奏でる音楽は、音楽以前のひとつひとつの音、 ゆっくりと紡ぐようにして奏でられる音と音とのつながりに 人の心の奥深くに響かせる大きな魅力を持っています。 音楽における音そのものの持つ力は大きいものです。 以前「大地の歌」で紹介したモンゴルの若者たちの歌声は、 その大地に根ざした生き様が音として伝わり、 発声練習を聴いただけて心打たれ、 彼らが歌う日本の童謡に忘れていた日本の伝統文化を感じ涙しました。 彼らの歌声が日々の暮らしの中で鍛えられた肉体から発せられる 聴く人の体の奥深くに響く音とするならば、 ライアーの優しい音色はもっとより精神的なところに響いてきます。 魂と呼ぶのか、またはオーラ、エーテル体と呼ぶのが相応しいのか、 そういった心の奥深いところにライアーの音色は響いてくるようで、 だからこそ “ライアーは天上界で奏でられている楽器である” と感じたのです。 宇月彩さんのライアーの演奏はこの上なく素晴らしいものですが、 それはライアー自体の魅力なのか、彼女が弾くから素晴らしいのか、 彼女のライアーの音色には彼女の持つ楽器の個性、彼女自身の響きというものが どの程度含まれているのか、 そういったことにとても興味を持ち、もっと深くライアーのことを知りたくなりました。 幸い二回演奏を聴かせていただいた直後に生徒さんたちとの発表会があるという 案内をいただきましたので、 会場となっている市内中心部にある広島ルーテル教会に出かけてきました。 ![]() 鉄筋コンクリートで作られた立派な教会の礼拝堂は、 大部分の壁が堅いコンクリートのままになっていて、 ライアーの美しい音を響かせるには最適な場所です。 発表会はほんの少しピアノや歌を交えながら、 様々なバリエーションの曲を生徒さんたちのソロやアンサンブルで聴かせていただきました。 どんな楽器にせよ、生徒さんたちの発表会を聴くというのは楽しいものです。 技術的にはまだ未熟でも弾く方は一生懸命ですし、 聴き手はそれを温かく受け止めようという雰囲気で 会場全体がとてもいい空気に包まれています。 それとプロの演奏家以上に生徒さんたちの演奏される音からは その人の持つ個性というものが感じられることが多く、 音楽の素晴らしさ、演奏する楽しさを知ることができます。 ライアーにはいくつか種類があるようで、 たしかに基本的な音色が異なるものがありましたが、 生徒さんたちの奏でるライヤーの響きはみなとても優しい音色で 個性以上に共通した部分がとても大きいことに驚きを感じました。 それは開放弦を優しく指で撫でるように弾くという ライアーという楽器の持つ特性であると同時に、 ライアーを奏でる人たちがその音色によって、 みな一様に心優しい気持ちになってくるからではないでしょうか。 音楽は人の心を癒す力があります。 癒しの音楽、ヒーリングミュージックというジャンルがありますが、 ライアーの心をとろかすような優しい音色は、 人の心を癒す最高の力を持っているといえるでしょう。 音は耳だけで聞くものではありません。 音を鼓膜で聞く気道聴覚と、より振動に近い形で骨を通して聞く骨導聴覚があります。 ライアーを演奏される方は、常日頃すばらしい音色を耳で聞き、 それと同時にひざの上に乗せたライアーからその響きを体で感じ取っておられるのですから、 日々深い癒し体験をされているのでしょう。 「ライアーを弾くようになって、日々の忙しさは変わらないものの、 心に落ち着きが出てきたように思います」 「ライアーは、 “家にある” というよりも “家にいる” という感じがします」 生徒さんたちのそんな声を耳にしました。 ![]() 発表会の最後には先生である宇月彩さんの演奏で 何曲かライアーを聴かせていただきました。 心通じる生徒さんたちに囲まれ、 それまでお聴きした演奏以上に心の奥深くにしみわたってきます。 明るく気さくで、甘いものが大好きといわれる宇月さんのお人柄が 彼女のライアーの響きから感じ取れるようです。 宇月彩さんのライアー教室、演奏会の案内などは、 宇月さんへ直接 メール でお問い合わせください。 ライアーの美しい響きは、きっとあなたの心にも大きな癒しと安らぎを与えてくれるでしょう。 2007.11.12 Monday |
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