ヨガナンダ 心の時代のパイオニア
 ヨガナンダ > 感動するコピペ > 103

ヨガナンダ


小さい頃の夏休みに、自転車でどこまでいけるかと小旅行をした。
計画も、地図も、お金も、何も持たずに、国道をただひたすら進んでいた。
滝のような汗をかきながら、青空の下みんな笑顔だった。

途中大きな下り坂があって自転車はひとりでに進む。ペダルを漕がなくても、何もしなくても。
ただ、ただ気持ちよかった。自分は今、世界一速いんじゃないかと思った。
子供心にすごく遠いところまできた事を知り、一同感動。

しかし、帰り道が解からず途方に暮れる。不安になる。怖くなる。いらいらする。
当然けんかになっちゃった。「泣いてね~よ」と全員赤い鼻して、目を腫らして強がってこぼした涙。

交番で道を聞いて帰った頃には、もう晩御飯の時間は過ぎてるわ、親には叱られるわ、 蚊には指されてるわ、自転車は汚れるわ。
でも次の日には全員復活。瞬時に楽しい思い出になってしまう。絵日記の1ページになっていた。

今大人になってあの大きな下り坂を電車の窓から見下ろす。
家から電車でたかだか10個目くらい。子供の頃感じたほど、大きくも長くもない下り坂。
でもあの時はこの坂は果てしなく長く、大きかった。永遠だと思えるほどに。

今もあの坂を自転車で滑り落ちる子供達がいる。
彼らもいつの日にか思うのだろうか。

今、大人になってどれだけお金や時間を使って遊んでも、あの大きな坂を下っていた時の楽しさはもう二度とは味わえないと。
もう二度と、友達と笑いながらあの坂を自転車で下る事はないだろうと。
あんなにバカで、下らなくて、無鉄砲で、楽しかった事はもう二度とないだろうと。




ひとつ前へ ホームへ メニューへ 次へ
Link Free
Copyright 2010 Sakai Nobuo All right reserved.