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2018年12月19日 ・・・ アシュリー事件

この夏、数年ぶりに再会した高校時代の友人から、
先日、広島での講演会の案内を受け取りました。

友人は福祉関係の仕事をしていて、
そこで知り合った児玉真美さんという
自ら重症心身障害を持つお子さんを抱えながら、
障害者や生命ということをテーマに発言をされている方の講演です。



友人からはこの案内とともに、
児玉さんが以前講演された時のレジュメも送られてきて、
そこには生命の尊厳に関する様々な事例が紹介されていて、
まったく知らなかったことも多く、
大きな衝撃を受けました。

日本でも一昨年、津久井やまゆり園という知的障害者福祉施設で、
入所者19名の命が奪われるという痛ましい事件があり、
生命倫理、障害者の生きる権利というものに対し、
大きな議論が湧き上がりました。

生命(いのち)とは人間存在の根本です。
また人間を人間たらしめるのは、
その知的能力や身体能力であるという考え方もあり、
もしその機能が損なわれたのなら、
その生命の尊厳はどのように扱うべきか、
または自ら死を選ぶ権利はあるのかどうか、
いくら深く検討しても絶対的結論の導けない問題です。


児玉さんのレジュメの中にこれまでまったく知らなかった
「アシュリー事件」という障害者の権利、生命の尊厳に対する
とても重要なテーマを含んだ問題が述べられていて、
児玉さんの数冊の著書の中に、
そのアシュリー事件に関する本があり、
今それを読んでいるところです。



アシュリー事件とは、2004年、アメリカのシアトルこども病院が、
当時6歳であったアシュリーという女の子に行った医療介入であり、
手術です。



アシュリーは生後一ヶ月頃から発育に遅れが見られ、
六歳当時、上体を起したり言葉を使ったりすることができず、
栄養は胃ろう依存という状態でした。

ただし身体の発育は健常児と変わらず、
両親は生涯アシュリーを自らの手で介護することを望み、
そこで彼女のQOL(クオリティー・オブ・ライフ、生活の質)
を向上させるため、
両親が病院の医師に対し、
1.ホルモンの大量投与で最終身長を制限する
2.子宮摘出で生理と生理痛を取り除く
3.初期乳房芽の摘出で乳房の発達を制限する
これらのことを求め、実際それが行われたというものです。

その詳しい理由は、
① 子どもを産まないので無用。
生理痛予防。 病気予防。 レイプされた時の妊娠予防。
② 授乳しないので無用。
寝たきりの身に巨乳は邪魔。 性的虐待予防。病気予防。
③ 家庭介護をずっと可能に。 本人の活動性・生活の質を守る。
④ 知的には赤ちゃんで身体だけ成熟した女性は グロテスク。
⑤ 利益とリスクを比較検討して、総合的に「本人の最善の利益」

こういったものです。
そして両親はそれを自らの子どもアシュリーに施すだけではなく、
アシュリーと同じ重症障害者にもQOL向上のために
積極的に行うべきだと訴えたのです。


この結論の出ない問題には様々な意見があり、
障害者の生命の尊厳に否定的な意見としては、
このようなものがあります。

人間の乳児よりも知的機能の高い犬や猫だって我々は尊厳を認めない。
生後3ヶ月ないし6ヶ月程度で知的発達が止まったアシュリーに
尊厳を認める必要はない。

パーソン(権利主体としての人格)と認めるには、
生物学上のヒトに生まれてくるだけでは不十分で、
理性とか自己意識など一定知能が必要である。
それによって生きものを「パーソン」、「ノーパーソン」とに
序列化すべきである。

これはいわゆる優生思想というものですが、
この是非を議論する前提として必要な、
障害というものの実際の状態を見るというところからしてあやふやであり、
まずはそこを十分に行わなければなりません。

「アシュリー事件」の中で特に印象に残ったのが、
障害は個人によって様々な状態であるにも関わらず、
新聞やネットメディアで記事を書く記者の多くが、
“脳に傷を受けたら、知的には即真っ黒”という認識の下、
障害を持つ人たちを十把一絡げに捉えていると指摘している点です。

実際、アシュリーは言葉を使ったコミュニケーションはできませんが、
身近に人がいることを認識し、
周りとの触れ合いで可愛い笑顔を見せることがあり、
人間としての情緒的活動は十分に機能しています。

こういったところに目が向いたのは、
やはり著者の児玉真美さんがご自分の子どもさんの介護を通し、
障害を持つ人との心の交流をずっと続けてこられたからに
他ならないと感じます。

けれど多くの人は、知的能力、言語能力が欠如していることは、
即植物人間と同じ状態であると認識してしまう傾向があるようで、
本書の中には、医療の現場に当る医師ですら、
そういった知的表現の微妙な違いに目を閉ざしている現状が
あるということが述べられています。


人権、生命の尊厳というと、
共産党一党独裁の中国のことが思い浮かびます。

先日、ファーウェイ副社長がカナダで逮捕、拘束された際は、
中国政府はすぐに「理由なき不当な逮捕、拘束は許されない」
という声明を発表しましたが、
彼ら自身、これまで、また現在もどれほどの人権弾圧を行っているのでしょう。

これは広島で行われたウイグル自治区の現状を知らせるための集いの
ネット記事です。
  <広島『知られざる事実』>

ウイグルルでは、多くの人が臓器摘出のドナーにされるための
健康診断を強制的に受けさせられ、
生きたままその体内から臓器を抜き取られるという
極めて非人道的なことが行われています。

これは上記サイトに載っているウイグルの飛行場の通路の写真です。
『人体の臓器を運ぶ通路』と矢印で示されています。



人間にとって最も大切な生命、
大切だけれども知らないことだらけの生命を取り巻く現状を、
もっともっと知る必要があります。

2018.12.19 Wednesday  
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