ヨガナンダ 心の時代のパイオニア
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ヨガナンダ



2012年9月17日

被爆地広島で暮らすようになって22年、
ここでは日常的に人々によって平和のことが語られ、
被爆の爪痕を残す資料も数多く残されています。

けれど生まれてこの方、戦時下に身を置いたことのない
“戦争を知らない子どもたち” の一人である私は、
いくら戦争や平和についての資料や証言を見聞きさせられても、
それを実感として体で受け止めることができません。

また実感として体で受け止められていないということすら、
平和な日常生活の中で感じるがありません。

竹島、尖閣の問題で、隣国韓国、中国との関係が悪化する中、
ようやく平和の尊さが一段深く理解できるよっになってきました。
とても情けないことですが、あまりにもぬるま湯のような日常が続く日本では、
国民全体が平和ボケになってしまうのも致し方ないことだと感じます。

失ってみて、初めてそのものの有り難さに気づくということがあります。
深い闇があるからこそ、光の輝きを感じ取ることができます。


広島出身の佐村河内守という作曲家がいます。
佐村河内氏は幼い頃から音楽の英才教育を受けますが、
20代で聴覚異常を発症し、35歳で全聾になり、
今も耳がまったく聞こえず、絶えず大音量の耳鳴りが響く状態で、
幼い頃に培った絶対音感を頼りに作曲活動を続けています。

佐村河内氏は全聾となり、絶望の淵で暮らしている時、
ある縁がきっかけで複数の障害のある子たちのいる施設を訪れ、
そこで彼の存在を100%受け止め、喜びを表し、
また苦しんでいる時に懸命に祈りを捧げてくれる子どもたちと接し、
『闇の底に光を感じた』と語っています。

その時に思ったんです。
闇が暗ければ暗いほど、小さな光の尊さを感じることができるんだと。
その小さな光というのは、日常のなんでもないようなささいな喜びとか、
当たり前と思っているようなことです。
明るい光で満たされた毎日を送っていたら、
その小さな光に気づけず、ありがたさも分からない。
地獄の底の暗闇の中をさまよっていたからこそ、
私は初めてその小さな光の尊さに気づくことができたんです。


真の心の平安や平和というものは、
その対極にある葛藤を経なければ手にすることができません。
肉体という制約を持って生まれた私たち人間が目指すべきは、
やはり葛藤の果てにある “浄なる世界” なのだと思います。

先日広島に行って改めて思いました。
原爆が落ちて六十数年というと、ほんのちょっと前のことだったと。
そんなに昔ではない過去に、大勢が一瞬にして消えたんです。
ところが、そんな悲惨な体験をした町にいま住んでいる若者たちは、
すべてではないけれど、平和が当たり前、
戦争がないことが当たり前という雰囲気に浸ってしまっている。
これは本当に怖いことだと私は思います。
私はそういう人たちに言いたいんです。
「闇を背負いなさい」と。



佐村河内氏作曲のシャコンヌです。
古典的な神聖な響きの中に、現代的な輝きを感じます。
これが闇の中で見いだした光なのでしょう。



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2012.9.17 Monday  
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