広島で一番暑い日
今年も広島に8月6日がやって来ました。
広島市内は午前7時ごろ一時的に激しい雨が降りましたが
その雨もほどなく止み、
原爆の投下された午前8時15分には灼熱の太陽が顔を覗かせる
暑い暑い一日でした。

私の記憶する限り、毎年広島の8月6日は太陽がきつく照りつける
とても暑さ厳しい一日というイメージがあります。
平和祈念式典の会場となる平和公園では毎年冷たい冷水が用意され、
この冷水を飲むことで、原爆投下直後、
水を求めてもがき苦しんだ被爆者の方たちの思いを感じ取ってくださいという
メッセージとともに振る舞われています。

原子爆弾のすさまじい偉力は、
放射能とともに、爆発と同時に襲ってきた爆風と熱線によるものです。
原爆資料館に足を運ばれた方はよくお分かりと思いますが、
原爆から放射された熱風は、大きな建物の太い鉄骨をも瞬時に溶かし、
ねじ曲げてしまうほどの偉力があります。

世界文化遺産にもなっている原爆ドーム(旧広島県物産陳列館)が、
ほぼ爆心地の直下にありながら崩れずに残ったのは、
天上のドームの部分が銅でできており、
原爆の熱風で瞬時に銅の屋根が溶け、
爆風が建物を上下に突き抜けたためであると言われています。

広島市内に住んでいる私の周りには、
実際に原爆を体験された被爆者の方が何人もおられます。

その被爆者の方たちからお聞きし、
また原爆に関する資料にもよく書かれていることですが、
被爆直後、多くの人が喉の渇きを訴え、水を求めたということです。

暑い暑い8月6日、原爆の放射能、爆風、熱風に体を傷つけられ、
全身に火傷を負った人たちの苦しみ、喉の渇きはいかようだったでしょうか。

扇状地である広島市には、市内の中心を何本もの川が流れています。
その川に多くの人が水を求めて飛び込み、
どの川も数え切れないぐらいの死体で埋まったそうです。

原爆直後の広島市内を撮った写真で最も有名なものが
爆心地から南南東に2300メートル離れた場所にある御幸橋西詰めの写真です。

原爆投下3時間後 御幸橋西詰め

この写真は原爆が投下された3時間後に撮られたもので、
写真右端辺りの延長線上に爆心地があります。

私の家はこの写真を撮ったカメラマンの背中数百メートル後方で、
この御幸橋はたびたび通ることがありますが、
当然のことながら、昭和20年、あの被爆当時の面影はまったくありません。
  (上の写真とともに被爆の様子を紹介する碑が設けられています)

現在の御幸橋

御幸橋の1キロメートルほど北側に比治山橋という橋があります。

被爆者である知り合いの女性は、
毎日出勤途中この橋を通るたびに被爆直後のこの橋の様子を思い出すのだそうです。

当時この橋には数え切れないぐらいの死体や負傷者が集められ、
この橋の下から船に乗せられ、
広島から少し南にある似の島という島に運ばれていったそうです。

橋を通る時、横たわっている怪我人や死体でいっぱいで、
どうしても足で踏みつけなければ通ることができず、
今でもサンダルの裏に残るあの柔らかな感触が忘れられないと語ってくださいました。

そして今、比治山橋を通る時、
心の中で「ごめんね、ごめんね・・・」と唱えるのだそうです。


たまたま知り合いに誘われて、まったく縁もゆかりもなかった広島に来て17年、
その間たくさんの平和や原爆に関する話を聴かせてもらい、
またみんなで話し合ったりもしてきました。

たぶんそういった機会は、
広島市以外の土地に住んでいる人たちよりもはるかに多いと思います。

けれども何度原爆の悲惨な体験談をお聴きしても、
実際に体験された被爆者の方たちの苦しい思いの万分の一も
己の体で感じ、理解できないというもどかしさを覚えます。

広島には平和公園があり、資料館があり、
市内各所に原爆の爪痕を残す被爆建物があります。

けれども最も後世に伝えなければいけないのは、
そういったモノではなく、
被爆者の方たちが持っておられる強い強い平和への思いなのではないでしょうか。

「原爆とボクたち」にも書かせていただきましたが、
今年は縁あって被爆者の方の思いを綴るホームページを作らせていただきました。
  「原爆とボクたち」(旧制広島県立第二中学校23期生ホームページより)

人類における20世紀最大の事件といわれる原爆投下から62年が経ち、
被爆者の方たちの声を直接聴くことのできる機会は少しずつ減ってきてはいますが、
被爆者の方たちの平和への願いは私たちが受け継ぎ、
決して絶やしてはいけないものです。

私もこれからはこのホームページを通し、
より積極的に平和へのメッセージを発信していきたいと考えています。


平和な社会の実現は、誰しもが持つ共通の願いです。
しかしこの平和な社会を実現するのは、国や政府、偉い人たちではありません。
私たちひとりひとりがどう行動するかにかかっていると思います。

昨日はこのホームページに
私たちにとって最も重要な環境・食糧に関する問題は、
私たちひとりひとりの行動に解決の鍵がある、
ということを書きましたが、
平和の実現も同じことです。

平和は、誰かが実現してくれるのではなく、
私たちひとりひとりの意識と行動が作り上げるものです。

平和を実現するためには、私たちはどのように考え、行動すればいいのか、
まず身近に実践できることからひとつずつ始めてみようではありませんか。

私も、私にできることは何かを考え、実践していきます。


最後になりましたが、
広島、長崎で原爆の犠牲になられた多くの方々に
心よりご冥福をお祈りいたします。

  安らかに眠ってください 
     過ちは繰り返しませぬから


2007.08.06 Monday


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