企業活動の根底にあるもの<2>
日本人は元々しっしかとした思想を根底に持ち、
生き様、志といったものを何よりも大切にしていました。
それが近年になってなぜ理念なき表層的思考をするような民族になったのでしょうか。


二十年ほど前、心理学者 岸田秀の唱える「黒船幻想」という考えと出合いました。
  
黒船幻想―精神分析学から見た日米関係 黒船幻想―精神分析学から見た日米関係

江戸末期のペリーの黒船来航による開国、太平洋戦争敗戦による民主主義の導入、
日本はここ百数十年の間、二度に渡って、自国の意志とは関係のない強制力でもって
新しい価値観を受け入れてきました。

この迎合と屈辱の耐え難い体験、
これを進んで受け入れようとする外的自己とあくまで民族的伝統を守ろうとする内的自己、
このふたつの相反する考え方の葛藤によって、
日本人は分裂病気質になってしまったというものてす。

内的自己と外的自己、本音と建て前、
企業においては理念と日々の企業活動は別物になってしまったということ、
黒船幻想を知ってから、このことをずっと考えてきましたが、
あながち間違いではないのではと考えています。
皆様はいかが感じられますでしょうか。


そしてそれと期を同じくして日本人の食生活、生活様式の変化による
日本人の肉体的変化も大きな要因としてあると思われます。

そのことは、「身体論的日本語教育」「呼吸法<3>」にも書きましたが、
肚、足腰の弱体化が深い思考をする妨げとなってしまっているのです。


理念の欠如という現象は、当然のことながら企業だけではなく、
個人にも大きく現れています。

昨今の「成功哲学ブーム」で、書店には数多くの成功哲学、願望実現といった
幸せになるためのノウハウ本が並べられています。

それらの本の中で共通して紹介されていて、手法のメインとなるもののひとつに
願望を明確にし、具体化し、実現手法を考え、期限を決め、それを紙に書き、
つねに頭の中にインプットしていこうというものがあります。

これは企業活動でいうところの事業計画そのものです。
明確化された人生計画に基づいての行動と思考、
それが願望を現実化する大きな力となることは真実だと思います。

けれどもこの願望、人生計画を明確化するための根底となる
その人独自の理念とは何なのでしょうか。

その人にとっての幸せとは、生まれてきた意味、役割とは、・・・
こういったことを深く思索するように促している成功哲学書は
ほとんど目にしたことがありません。

ただ単にお金が儲かればいいのでしょうか、
若くして事業で財をなし、セミリタイヤして優雅に暮らすことが『成功』なのでしょうか。

この理念の欠如が、自分の考えていた『成功』は手に入れたけれども、
幸せではないという現実を生み出しています。

このことは「シンクロ日記」にも書きました。
ここでご紹介している

成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語
表の体育 裏の体育―日本の近代化と古の伝承の間に生まれた身体観・鍛練法

この二冊は是非読んでいただきたい本です。


稲は生長する一時期、わざと水を涸らし、栄養枯渇状態にすると
将来的に強く大きく成長し、より多くの実りをつけるといいます。

水が涸れたその時期は、一時的に成長が遅くなってしまいますが、
その苦しい時期に大地からの栄養をしっかり取ろうと丈夫な根が育ち、
風が吹いても倒れない丈夫な稲穂となる基盤が作られるのです。

水を涸らすことができるのは、根っこを育てるということに着目し、
将来的な実りを得るためのビジョンがしっかりとあるからです。

このビジョンが理念です。
企業でも個人でも、このしっかりとした理念なくして、
目先の利益、効率ばかりを追い求めていたのでは、
長い目で見て豊かな実りを得ることはできないのです。



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