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しなやかな生命

先の「魂に響く歌声」でご紹介した若干16歳住田愛子さんの「ギンギラギンにさりげなく」はすさまじい人気です。
4ヶ月前にアップされたこの動画が561万回再生、他にも同じ動画をアップしているチャンネルがあるので総再生数はこれ以上です。

先のページにも書いたように、彼女の魅力は強靱な体幹から生み出される安定感にあると感じます。
激しい動作でもぶれない体の中心軸、鞭のようにしなり引き締められた手脚の動き、陰陽で言うならば強い収縮力を持った陽性です。

陽性は男性の理合いです。
古典芸能である歌舞伎では、男役である立役は背筋を常に真上に伸ばして安定した姿勢を保ちます。
安定し、左右均等のバランスの取れた姿勢こそ男性性の象徴であり、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」におけるこのシーンは、歌舞伎からヒントを得たと言われています。

対する女性性は不安定さです。
小首をかしげる、ウインクする、しなだれかかる、こういった左右不均等な動作が女性の魅力を引き立てます。

安定がよくて不安定が悪いのではありません。
この時空間に完璧に安定したものは存在しません。

「陰と陽」に記した「宇宙の十二の変化の法則」の9番目に、

完全に中立なものはなにひとつない。
どんなものでも陰か陽のどちらかが勝っている。

とあるように、どのようなものも多少の不安定さを持ち、周りの影響を受けながら安定を目指して変化し続けます。
これが止めどなく続く循環の理合いであり、『諸行無常』の源です。

この不安定さが新たなものを創造し大きな変化をもたらす原動力となっています。
ですから陰陽のはじめの理合いである陰、無から有を生み出す女性性は不安定さの中にあり、いったん生み出されたものを発展させる男性性は安定感がより尊ばれます。

 

住田愛子さんのダンスが安定、陽性の魅力を持っているのに対し、その真逆の魅力を持つのが安室奈美恵です。

そのアムロのダンスを久しぶりにYouTubeで見て、あまりの素晴らしさに心震えました。

たぶんこの動画が撮られたのは90年代後半、今から三十年近く前でしょう。
けれども今見てもまったく色あせないどころか、今はこんな高度なパフォーマンスを見ることはできません。
完全に時代が劣化しているではないですか!

アムロのしなやかなダンス、流れるような身体の動き、バックのスーパーモンキーズのダンスも素晴らしいものですが、アムロの動きは別格で光っています。

住田愛子さんの動きにその軸や重心となるところがハッキリと見て取れるのに対し、安室奈美恵の動きはあまりにもしなやかで、まるで彼女の周りの空気が粘性の持つ液体となり、そこに水草が漂っているような、魚が軽やかに泳いでいるような、そんな印象を受けます。

住田愛子さんが常に安定した動きをしているのに対し、アムロの動きは不安定さの連続であり、それが次の動きへとつながり、その一連の流れの美しさに彼女の魅力があります。
彼女の動きはある刹那における安定感ではなく、時間軸の流れの中にある”動的平衡”とでも呼べるものです。

動画平衡

より正確に言うならば、たとえ安定していてもそれを切れ目なく連続した流れの中のひとつとして見せてしまう、その自然さが”しなやかさ”です。

住田愛子さんが顕在意識での安心感を抱かせるのに対し、安室奈美恵のダンスはより深い潜在意識下での、ある意味性的エクスタシーに近い官能的興奮を憶えます。
それは彼女のダンスがより生命の本質に近いからであり、これが多くの人の心を引き寄せ、アムロ現象と呼ばれる社会ムーブメントにまで発展したのでしょう。

 

安室奈美恵のダンスは至高の芸術だと感じます。
これは天賦の才があればこそです。

先の動画を繰り返し見ていると胸が熱くなり、歌心りえさんの歌を聴いた時と同じく目頭が熱くなってきます。
けれど歌心りえさんの歌から受ける感動とは種類が異なるように感じます。

人間の流す涙には三種類あると言われています。
ひとつは玉ねぎを切ったりくしゃみをした時に出る生理的涙、二つ目は嬉しかったり悲しかったりした時に出る感情による涙です。
そして三つ目は、偉大な自然と出合った時などに込み上げてくる畏敬とでも呼べる、そんな涙です。

自分が安室奈美恵のダンスを見て感じ取ったのは、三つ目の、生命の尊厳、偉大さに触れたような、そんな感動と涙です。

 

貧しい環境の中、こんな素晴らしい歌姫として世に出たことにも心動かされます。