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素直が一番

正直に思いを表すことをモットーとしていると、
楽な反面、たとえ一時でも気まずく不快な思いをすることがあります。
けれどそれは致し方のないことです。

相手が目上の人であっても、
またその分野にプライドを持つ専門家であっても、
自分が感じたことで、それに対して自信があったなら、
たとえ相手に対して苦言となるようなことでも、
あえて言わせていただくようにしています。
またそうであらねばならないと常に心がけています。

それが自分自身の生き方であり、
相手を本当に尊重するならば、
その人の生き方のプラスになることは、
どんなことでもハッキリ言わせていただくことが、
その人のためになると考えるからです。

その時に自分に問うことが二つあります。
ひとつは、その言葉の中に、
純粋に相手を思う気持ちしか込めてはいけないということです。

その中にほんの少しでも相手を馬鹿にしたり、
自分の優位性を誇示しようとする気持ちがあったなら、
相手は必ずそれを感知し、
その言葉を素直に受け取ってはくれません。

もうひとつは、相手に対して厳しい意見を述べ、
それを要求するということは、
自らに対してもまた厳しいものを求めるということです。

人にだけ厳しく、自分に対して甘いのでは話になりません。
この世は鏡の世界です。
相手に求めるものはまた自らに求めるもの。

私の場合は、自分に厳しくありたいと望む気持ちが、
人に対してハッキリとものを言うという面を導いているとも言えます。


そんな苦言でも、相手がすべて快く受け止めてくれるとは限りません。
時には気まずくなり、それをキッカケに疎遠になることもあるのですが、
それはその人の中にある志よりも、
表面的な感情やプライドが勝っているということなので、
どうすることもできません。

そういった人とは疎遠になっても仕方ありません。
私が望むのは、真に高い志を持ち、それに向かって生きている人です。


「素直が一番」、最近このことをよく思います。
子どものような素直な明るさは、
それがたとえどんな形であっても周りの人を和ませます。

けれど感情をストレートに表現する素直さがあっても、
その元となるその人の感情や考え方が、
おかしな方向に行ってしまっていたら問題です。

自分の内に整合性の取れた考えを持ち、
それがそのまま表現できたら最高ですが、
自分勝手な論理をありのままに表現されては、
周りに大きな迷惑をかけることになりかねません。

それでもなお、内面の整合性の取れた思考より、
素直な表現というのは価値が勝っているように感じます。


十数年前、土木の解体工事の仕事を数年間していました。
土木の中でも解体というのはほぼ底辺の仕事で、
そこに身を置くだけで様々な人間模様を垣間見ることができます。

周りの若者の中には少年院上がりや保護観察中の人間がゴロゴロいて、
私がいたある会社では、在籍期間中に元従業員が繁華街で殺人事件を起し、
店員と客の二人を殺害したとして逮捕されました。

その会社には言葉遣いも丁寧で紳士的なリーダー格の人がおられたのですが、
しばらく会社に顔を出さないなと思ったら、
県内の他の街で、集団窃盗事件の主犯格として逮捕されていました。

その会社のM社長というのがハチャメチャな人間で、
口から出る言葉にまったく整合性がありません。
朝令暮改これ極まれりといった感じで、
その場その場で都合のいいことばかり言う人間なのです。

朝自分が乗っていくように指示したダンプが、
昼頃になって車検が近いということを知ったら、
従業員にケイタイで「なんでそのダンプ乗っていったんや〜!」
と平気で怒鳴りつけるのです。

また仕事には怪我や事故は付きものですが、
そんなトラブルがあるたびに、結果論で相手を責める、
その場その場の感情がすべての判断の元になっているような人間です。

そんなとんでもない男なのですが、
根っから人間性が悪いかというとそうではありません。
背の小さなひょうきんな体型をした男ですが、
いつもガムをくちゃくちゃと噛み、機嫌がいい時にはいつもニコニコし、
くだらない冗談を言い、
仕事が終わってみんなでプレハブハウスでたむろしていると、
千円札を何枚か出し、誰かにビールとつまみを買ってこさせて、
よくハウスの中で酒盛りをしました。

仕事にも熱心で、朝8時の集合時間には必ずハウスにいて、
夕方もほとんどみんなの帰りをそのハウスで待っています。

従業員もみんなその社長にあきれ果て、
陰で悪口を言うものの、
「憎めん奴」ということで、適度な関係を保っていました。


その会社に安(やっ)さんという味のある従業員がいました。
年配で解体工事暦が長く、その世界では主のような存在です。
普段は苦虫を噛みつぶしたような顔をしていますが、
時折話す言葉に愛嬌があり、
みんなからとても親しまれていました。

その安さんにはとんでもない悪癖があり、
手当たり次第いろんなものを盗むのです。

「安さんと一緒の現場になったら、カバンや財布を隠しとかないかんぞ」
そんなことを言われながらでも、
みんなといい関係を保っていけるというのは、
たぶん一般の企業社会では考えられないことでしょう。

安さんは風来坊で、ある時その会社からいなくなってしまったのですが、
しばらくすると、別の解体業者で働いていた安さんが廃棄物を捨てる際、
勝手に元いたその会社の名前で伝票を処理したということが発覚しました。

「あの馬鹿安がまたやりやがった〜!」
短気なM社長は当然のように激怒しました。

その件がその後どう処理されたのかは分かりませんが、
それから一年ぐらいしたら、
何食わぬ顔で安さんが元いたその会社のダンプのハンドルを握っていました。

安さんとM社長、
その場しのぎの身勝手な生き方ですが、
自分の感情に正直に生きているという点では共通しています。

だから気が合うのでしょうね。
それにしても一般常識をはるかに超越した世界です。


安さんはテキ屋もやっているので、
その後花火大会の屋台で顔を見かけたことがあります。

M社長が経営していた解体工事の会社は、
数年前に倒産してしまいました。
今はどうやって生きているのでしょう。
まったくもって憎たらしい男ですが、
たまに顔を見てみたいと思うから不思議です。


これらは極端な例ですが、
一般企業で上下関係の軋轢の中、
自分を押し殺し、ゾンビのような無表情で日々過す生き方より、
この二人のような滅茶苦茶な生き方が、
私には魅力的に映ります。

やっぱり「素直が一番」です。
けど素直さを行使するには、大きな自己責任も伴いますね。

2012.2.26 Sunday  
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