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つぼみ

今日3月19日は母の16回目の命日です。
16年前の95年は阪神淡路大震災の起こった年で、
西宮出身の母は、自分の生まれ育った町が瓦礫の山となり、
毎日テレビで被災地の様子を見ては涙を流していたそうです。

そしてその震災の二ヶ月後、
母は胸に悲しみを抱いたまま、
静かに天国へと旅立っていきました。
  <母の愛>

肉体を持つ人間存在としての母は、
きっと様々な思いがあったことと思います。
親不孝息子であった私も、
母に対してはいくら後悔してもしきれないほどの懺悔の念があり、
その思いだけで心が張り裂けそうになりました。

けれども母は自らの命を通し、愛の尊さ、
命の本質が持つ光に満ちたまばゆいばかりの輝き、
そしてその輝きが永遠であるということを教えてくれました。

それでも母が亡くなった当初は毎日涙に暮れ、
生きる意欲を失ったようになった私ですが、
今は母から授けてもらった愛と命の輝きをしっかりと見つめ、
それを生きる原点として前向きに歩んでいます。

肉体的な命はいつかは滅んでも、
その奥にある命の輝きは永遠です。

そしてその命の輝きは誰しもが持っているものであり、
すべての命の輝きはみなひとつであり、つながっているのです。

ですから亡くなった人にでも思いは必ず通じます。
両親、ご先祖様、自然、あるいは神様、
そういったすべての存在からいただき、受け継いだ命を大切にすることが、
亡くなった人に対して思いを伝える最高の手段だと考えています。


家のすぐ近くに御幸橋という橋があり、
ほぼ毎日そこを自転車に乗って通っています。

広島 御幸橋

ここは原爆の爆心地から約2キロのところで、
被爆直後の様子をとらえたものとしてはたぶん一番有名であろう
この写真が撮られたところです。

原爆投下直後の御幸橋

あれからもう65年の歳月が流れ、
当然ながら被爆直後の面影はまったくありません。
橋のたもとに写真と説明文の載った案内板があるぐらいです。

原爆投下直後は、
今後数十年間は草木も生えないであろうと言われた広島の大地は、
その後見事なまでに急速な復旧、復興を遂げました。

それは私たちからするとごく当たり前のことのように感じるのですが、
大きな天災や紛争で国土に痛手を負った国の人々から見ると、
まさに驚異であり、希望の星のように映るそうです。

広島には原爆の被害の大きさを後世に伝えるための原爆資料館や
原爆ドームがあります。
けれども本当はそれだけでは足りません。
その大きな被害からいかに復興していったのかを伝える復興資料館、
そしてそこから何を学び、私たちはどんな未来を創造していくべきなのかという
未来提言館、それらも合わせて必要だろうと考えています。

原爆の被害、戦争の愚かしさ、
そこからの復興の歴史、人々の逞しさ、
そこから学んだより明るい未来を創るための提言、
これらが三位一体として求められているのです。

特にこのたびの災害に接し、あらためてこのことを強く感じました。
今は一日も早い被災地の復旧、復興を目指すと同時に、
今後それらの過程を世界に向けて範として示す責務があります。


今日も御幸橋を通り、橋のたもとに植えられた二本の桜の木に目をやりました。
今年は冬の寒さが厳しく、例年よりもいくぶん桜の開花が遅れています。

まだ固く閉ざされたつぼみは少し寂しげで、
かれらもまた私たち人間の深い悲しみを
共有してくれているかのような感覚を覚えました。

御幸橋の桜

例年よりもペースの遅い桜のつぼみですが、
それでもあと二、三週間して時期が来れば、必ず美しい桜の花びらを咲かせます。
それはここ広島が、時間をかけ、
多くの人の努力によって復興していったのと同じことです。

桜の花は本当に美しい。
それはまさに命の喜びそのものです。

私たちが幼い子どもを愛したり、
犬や猫のペットを可愛らしいと感じるのは、
彼らが懸命に生きようとしている姿に心動かされるからです。

そしてその生きようとしている姿からは、
限りない生命の喜びが伝わってきます。

命とは、人に感動を与え、喜びを伝えるものです。

そのことを、今日という日に今一度心に刻み込みたいと思います。

2011.3.19 Saturday  
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