ヨガナンダ 心の時代のパイオニア
 ヨガナンダ > スピリチュアル夜話 > 一匹目の猿



ヨガナンダ



一匹目の猿

ライアル・ワトソンという生命科学者がその本の中で紹介した
「百匹目の猿」というお話は、
スピリチュアルな世界に興味を持つ人たちの間ではあまりにも有名です。

九州の幸島というところに暮らす猿の一頭がイモを海水を使って洗うようになり、
その行動を他の猿たちも真似をするようになり、
その猿たちの数が一定の数(百匹目)を超えた時、
その行動がその群れを超え、
それまでまったく接触のなかった猿たちにまで伝搬したというお話です。



串間市には2004年に「百匹目の猿現象発祥の地」という
石碑まで建てられています。
上の石碑の写真の後ろに見えるのが無人島である幸島です。


たった一人の思いや行動は力がないけれど、
その思いや行動の輪が広がり、
一人、二人と共感してくれる仲間が増え、
その輪がある一定以上に大きくなった時、
みんなの思いや行動は一気に大きく世界に広がっていく ・・・ 、
なんとも感動的で素晴らしい話ではないでしょうか。

この感動的な話は、
ごく短期間の間に多くのスピリチュアルな世界で広まり、
このことを本のタイトルにしたものまで出版されるようになりました。
その急速な広がり方は、まさに百匹目の猿現象のようです。

スピリチュアルなことが一部の人たちの間ではブームになっているとは言え、
まだまだ世の中は欲にまみれた経済原理が主導となって動いていて、
日々のニュースもほとんどが暗く世知辛いものばかりです。

その暗い世相の中でも、
なんとかして新しい時代の価値観を築き上げていきたいという
スピリチュアル愛好家の方たちにとって、
この百匹目の猿というお話はまさに希望の星のように思えたのでしょう。
その気持ちはとてもよく分かります。

けれども、もうすでに多くの方はご存じのように、
ライアル・ワトソンが提唱したこの百匹目の猿というお話は、
実際には存在しない創作された、いわゆる作り話です。

文化人類学者の河合雅雄が幸島の猿の生態を研究し、
その論文を元にライアル・ワトソンが独自に創り出したものであり、
そのことは河合雅雄、ライアル・ワトソンともに公に認めています。


百匹目の猿について知ったのは、
たぶん十年ちょっと前ぐらいだと思います。

ご多分に漏れず、私も話を聞いた当初は興奮しました。
想念とはかくも偉大なものなのか、・・・
一歩ずつ、まずは身近な足元から広げていけば、
確実に世界は変わっていくんだ、・・・
ホントにホントに、素晴らしいエピソードであり、
時代を変える鍵となるお話だと感動しました。

その感動の話が作り話だと知ったのは、
7、8年ぐらい前だと思います。
インターネットをはじめてまだ間もない頃、
何気なく百匹目の猿について検索をして、
そんな情報を目にしました。

最初そのことを知った時は、信じられない思いでしたが、
いろいろ調べてみて、
「作り話説」は信憑性の高い情報であると思わざる得ませんでした。


その当時ネット情報は、
百匹目の猿現象を礼賛するものであふれていて、
当時で言うところのニューエイジムーブメントの旗頭にでも祭り上げられた
ような感がありました。

その頃から定点観測をするつもりで、
定期的に「百匹目の猿」という言葉をネット検索しています。
  百匹目の猿 - Google 検索

当初は「自分たちも百匹目の猿になろう!」というような情報ばかりだったのが、
時が経つにつれ、百匹目の猿が寓話だという認識が広がり、
4、5年ぐらい前から信奉する人たちとの割合が同程度になりました。

そして最近はその比率が逆転し、検索上位のサイトには、
きちんと作り話であるということが書かれるようになっています。


私は作り話を広めたライアル・ワトソンを批判したり、
百匹目の猿の話を信じている人を馬鹿にするために
こんなことを書いているのではありません。

たとえ寓話だとしてもこれだけ話が大きく広がり、
そしてその真相が多くの人たちに知られるようになったというのには、
きっと何らかの深い意味があり、
その意味を知りたいと思うからです。

人数は少なくても、志を同じくする人たちの思いや行動がひとつになれば、
それで世界を変えていくことができる ・・・ 、
これはとても素晴らしい話ではありますが、
それよりももっと素晴らしいのは、
自分の身の回りの世界はすべて自分が創り出している、
だから自分が変わりさえすれば世界をどのようにでも変えることができるのだ、
ということです。

これは百匹目の猿という寓話が語っているものよりも、
より深く真理に近いメッセージです。


百匹目の猿の話をメインテーマとするあるブログに、
サブタイトルとしてこんなことが書かれています。

  一人一人が変われば、世界が変わる!

これは間違いではないと思います。
けれども私たちがより深く心しなければならないのは、

  一人(自分)が変われば、世界が変わる!
  自分を変えることでしか、世界を変えていくことはできない。


ということです。

百匹目の猿の「騒動」は、
このことを私たちに伝えるために現われたのではないのかと考えています。


私はたち一人一人はみな、
すべてを創り出す力を持つ 一匹目の猿 なのです。

2011.2.15 Tuesday  
ひとつ前へ  ホームへ メニューへ 次へ
Link Free
Copyright 2010 Sakai Nobuo All right reserved.