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言葉の限界<3>

意志表現、意思伝達の手段としての道具である言葉にとらわれると、
その奥にある本質を見誤ってしまうことがあります。

「ありがとう」という言葉を例にして考えてみましょう。
ありがとうという言葉は素晴らしい言霊です。
ありがとうという言葉を習慣のように普段から口にしていると、
それに伴って自然と心から感謝の念がわき上がってきます。

また言霊ですので、音そのものに力があり、
ただその音を口の中で響かせているだけで、
何らかの力を人に与えることができます。

ありがとう、ありがとう、ありがとう、・・・
幾度となくありがとうと唱えていると、
その分だけ感謝の気持ちが増幅されてきます。

しかしそれと同時に、
ひとつひとつのありがとうという言葉の持つ感謝の気持ちが希薄となり、
言葉が気持ちの表れではなく、
単なる記号となってしまう可能性もあります。

普段から仏頂面で無口な人に、ポツリと「ありがとう・・・」と言われると、
ものすごく感謝された気持ちになり、
嬉しくて頬がゆるんでしまうことがあります。

その逆に、いつも誰にでも愛想のいい人に、
微笑みながら「ありがとう!」と言われても、
「この人は本当にありがたいと思っているのかな ・・・ ?」
と疑問を感じてしまうこともあります。


ありがとうという言葉は、
感謝の気持ちを伝える手段として本来の価値があるのであり、
逆にありがとうを唱えた結果として感謝の気持ちがわき上がってくる、
円滑なコミュニケーションのツールとしてとにかく習慣的に感謝の言葉を口にする、
そういったことに主眼を置いていると、
どこかおかしな方向に行ってしまう危険性があります。

その危険性は、ありがとうの持つ言霊の力よりも大きいものだと感じています。


言葉はすべてそうですが、
ありがとうという言葉を口から発する時は、
自分は何に感謝をしているのか、
何を「有り難い」ことだと感じているのか、
そのことをしっかりと頭の中、心の中でイメージしていただきたいと思います。

それが言葉を大切にするということであり、
そうして口から(心から)発したありがとうという言葉は、
相手に感謝の念として伝わるとともに、
我が身にも深い感謝の気持ちが染み渡ってきます。


「ありがとうというのは素晴らしい言霊だ。
 ありがとうをたくさん唱えることによって俺は幸せになれるのだ!」
こんな思いで口先だけで唱えても、多少は胸の内に感謝の念がわき、
言霊としてのパワーの恩恵を受けることはあるかもしれませんが、
まったく逆のマイナスの力をその人に与えてしまう可能性があります。

・・・  ありがとうをたくさん唱えると幸せになれる。
     ありがとうをたくさん唱えなければならない。   ・・・

この思いは、
「今現在の自分は幸せではない、
 だからたくさんのありがとうという言葉によって幸せになりたいんだ」
という、現在の自分が不幸せだということを肯定するイメージに繋がるのです。


願望実現法について書かれた本の中に、
願望は常に完了形でイメージするべきだということがよく書かれています。

「幸せになりますように」というイメージは、
「今現在の私は幸せではないのです」というイメージとなり、
幸せを掴むという願望を遠ざけてしまうという理屈です。

ですから願望は完了形として
「私は幸せになりました。ありがとうございます」
とイメージするのがいいということです。


唯足るを知る、今この瞬間の自分に満足し、喜びを感じ、
その喜びと感謝の思いでもって口の中から
「ありがたいな〜」とこぼれるように湧き出てくる言葉、
これが最高の感謝の念のこもった言霊です。

「ありがとう、ありがとう、ありがとう、・・・
   これで足りたかな? これで幸せになれるかな?
   心配だからもうちょっと言っておこう。
 ありがとう、ありがとう、ありがとう、・・・」
こういう自分の現状に対する不満から発せられるものは、
たとえありがとうという言葉であっても、
感謝の言霊ではないのです。


言葉は思いがこもるからこそ大きな力を発揮します。
そしていい言葉を思いを込めて唱えるからこそ、
その思いが胸の中に広がっていくのです。

言葉には意味がある。
言葉を発する時は、その言葉の意味を噛みしめながら口にするべきである。
この当たり前のことを、今一度再認識してください。

2010.12.24 Friday  
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