宇宙の音
松山の道後温泉の近くにとっても素敵な宿、松山ユースホステルがあります。
そこはオーナー平野さん(通称:大統領)のお人柄でしょうか、
様々な人たち、精神世界のリーダー達が集まってきます。

初めて松山ユースを訪れた時、広間にあるステレオを少し見させていただき、
その後で大統領に色々な話を聴かせていただく機会がありました。
そんな中、音についての様々な思いを語っていると、
「酒井さん、面白いものをお見せしましょう」
と言って持ってきていただいたのが「ティンシャ」というチベット仏教の法具。
二枚のシンバルの様な金属盤を皮ひもで結び、
それぞれのフチとフチとを当てることにより音を出します。
  (本当はシンバルのようにして使うのです)

チベッタンベル

多分お祈りの時に使われる法具だと思われます。
以前ダライ・ラマ十四世の主治医の方が松山に来られ、
松山ユースに宿泊された際にお土産として置いていかれた貴重なものだそうです。

装飾は一切なく無粋な形ですが、手で持ち上げるとずっしりと重量感があり、
鈍い金属の輝きが神々しくもあります。
両手で皮ひもを持ち、軽く二つの金属盤を当てるように音を鳴らしてみました。

「チーン」という透明で美しい音色、
そしてその余韻がほんの少しのウナリを伴いいつまでも響き続けます。

「これは宇宙の音ですね。こんな美しい音は生まれて初めて聴きました」
あまりの美しい音色に驚嘆し、こんな言葉が口をついて出てきました

宇宙の音とは「オーム」です。
ヨガの世界では「宇宙はオームで満たされている」と言います。
「オー」は開く音、「ム」は閉じる音、
つまりオームとは「陰陽」、「あうん」と同じことを意味しています。
神社に行き狛犬を見てください。ふたつ並んだ狛犬、向かって右側は口を開け、
左側は口を閉じています。
つまりこれもオーム、陰陽の調和のとれた世界を表しているのです。

このティンシャの響き、これはオームそのものです。

「そんなに気に入られたのなら、これは酒井さんに差し上げますよ」
なんと大統領はその場で宝物のティンシャをプレゼントしてくださいました。

私は音に関することをライフワークの一環として取り組んでいます。
このすばらしいティンシャが手元に来たということ、
うれしいのと同時に何か運命のようなものを感じます。

それ以来、いろんな場所、いろんな人にこのティンシャを鳴らしていただいています。
そうして分かったのは、このティンシャの音色が、鳴らす人、場所によって
大きく変化するということです。 

金属盤をつないでいる皮ひもを伝って人体も共振するからでしょう。
一般的に男性が鳴らすと力強い音色に、女性は優しい音色になります。
また体調の悪い人の場合は音がにじみ、お腹が弱い人は低い音があまり出ません。

「トマティスメソッド」の理論のように、低い音から高い音、どの音域が出にくいか、
また濁りがあるかで、体調診断ができてしまうのです。

そして逆にこれを鳴らすことにより、美しい波動、音波を身体に伝え、
心身を癒す効果があるのではないかと考えられます。

場所によっても音色は様々に変化します。
気のいい場所、気持ちがスッキリするといわれる場所では
ティンシャも澄んだ音色で響きますが、
そうでない場所では音が濁り奇妙なウナリがついてきます。

音は空気を伝わって響きますので、その空気の状態が音色を変化させるのでしょう。
不思議ではありますが、普通の人にでもハッキリと分かるぐらい響きが変わります。

私にとってこのティンシャの最高の宝物であり、
その音色は、すべての音に対する基準音となっています。



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