オーディオの旅・四国、山陰
12月2日、3日の二日間、ローゼンクランツの貝崎さんとともに、
四国、山陰のユーザーさん宅を訪ねる旅に同行させていただきました。
今回は、傑出した才能と能力の持ち主だとかねがね噂で聞いていた
貝崎さんのご長男浄さんと一緒です。

浄さんとはこれまでなぜか縁がなく、今回お会いするのが初めてで、
それだけでも今回の旅の期待度はマックスです。


けれど今回のレポートは、肝心の音の変化について、
詳細を書くことはできません。
それはクリニックを施した後の音の変化が並外れて顕著なものであり、
到底言葉で表すことができないからです。

また無理に表したとしても、
実際に体験していなければ、
それをなんとなくでも感じ取ることは99.9%不可能です。
これはオーディオの体験を長く積んでおられても同じです。
それぐらい常識外れの音の変化なのです。

そしてもうひとつは、
その劇的変化を生じさせた処方というものが、
実に本質的であり、また本質的であるがゆえにシンプルであり、
ここにそれを記しても誰にでも真似ができるというものではないものの、
広くネットで公開するには適さないと判断したからです。


冷え込みの厳しい午前6時半、
車の外気温を示すメーターは摂氏2.5度を差しています。
これからしまなみ海道を通り、四国の愛媛、香川へと向かいます。

しまなみ海道を渡りきった今治に来島サービスエリアがあり、
そこで三人で食事をしました。
ここの鯛かま潮(しお)ラーメンが美味しいので、
貝崎さんはそれをいつも楽しみにしておられるのです。

鯛かま潮ラーメン

鯛のかまを唐揚げしたものが麺の上に乗っていて、
スープはほんのり塩味が効いています。
その塩味に鯛の旨味が溶け込んでいてとてもまろやかで、
それが塩ではなく潮と表現する由来でしょう。

なんともコクのあるスープは絶品で、
鯛のかまもカリカリに揚げられていて、
骨もすべていただきました。

こちらは貝崎さんが鯛かま潮ラーメンとともに頼まれた釜揚げしらす丼です。

釜揚げしらす丼

これも少しお裾分けしていただいたのですが、
新鮮なしらす(ちりめんじゃこ)とご飯、生卵、醤油、
これらが絶妙なハーモニーを織りなし、口の中いっぱいに甘い旨味が広がります。

材料が新鮮だとこんなにも美味しいのですね。
「こんな美味しくて新鮮な食べ物をいつも食べていたから、
 このあたりの海賊は圧倒的な力を誇っていたんだ」
貝崎さんがいつもそう話されているのが納得できます。
海が生み出したパワフル食です。

サービスエリアから来島海峡に架かる橋がきれいに見えます。



ここには渦潮が巻いているのですが、
渦の大きさでは鳴門海峡のものの方が大きいそうです。



けれど来島海峡は潮の流れが速く、それゆえに美味しい魚が捕れるのです。


今治から東に向かって走り、お昼前に香川県の善通寺に到着し、
ローゼンクランツのヘビーユーザーであるマコマコさんのお宅にお伺いしました。



スピーカーは私のものと同じRK-AL12/Gen2ですが、
きれいなフローリングの部屋、スタンドの下にはスパイクを履かせ、
専用のラックに高級機を配したその姿と音からは、
リアリティーのある透明で上質な雰囲気が漂っていました。

いつもいい音を聴かせていただくと、
「この上さらにどんな音世界があるのかな?」
と、想像しがたい世界に思いを馳せるのですが、
上には上があるものですね。

浄さんが部屋の中をうろうろと歩き回り、
ピンポイントでルームチューニングを施すと、
部屋の空気は徐々に、そして確実に変化していきました。

まるで部屋の空気の透明度が増したような、
部屋という物理的制約が取っ払われたような、
そんな感じです。

マコマコさんのお宅は、新しい家のほとんどがそうであるように、
部屋の壁は新建材である石膏ボードで囲われています。
石膏ボードは石膏で固められたボードに、
両側から裏紙と壁紙をサンドイッチしています。

その石膏ボードは、細い縦横等間隔に配置された木の桟によって固定されていて、
壁の内側は太鼓のような中空構造になっており、
叩くとボンボンと鈍い音がするのです。

この音が当然ステレオの音にも影響し、
なまった重苦しい響きがステレオの音に付帯し、
メリハリの欠ける少し濁ったような響きは、
現代家屋の典型的な音の特徴です。


そこにカイザー流のルームチューニングを施すと、
これまで “悪” の存在であったボードの響きが、
その悪影響を押さえられるだけではなく、
その響きをステレオから出る音、部屋の空気と同調させ、
それらと違和感のない中立から “善” の存在へと変えてしまうのです。
  (※ ブランド名はローゼンクランツ、ショップ名はカイザーサウンドです)

それまではハッキリと認識できていた壁の存在、壁からの反射音が、
そのチューニングによって、
あたかも壁の存在がなくなったかのような
透明で広々とした音の響きに変わっていきました。

これぞカイザー流の “活法” です。
将棋において、自陣に向かってくる相手の駒を手に入れると、
その手に入れた瞬間から、今度はその駒を自らの味方として活かすことができます。
それと同じく、東洋的思想の神髄が如きカイザーマジックは、
どんなものをも活かす “究極の救いの技” だと感じました。

これはオーディオのテクニックを越えて、
私の胸に強く響きました。
本当に素晴らしい ・・・ 。


この技を目の前で体現して見せてくれた貝崎さんの息子の浄さんは、
傑物という表現を越えたまさに怪物です。

以前から貝崎さんから、
「うちの息子は頭が良すぎて ・・・ 」
と聞いてはいたのですが、これほどまでにすごいとは考えてもいませんでした。

その頭のよさは、偏差値秀才の明晰さとは異なります。
より人間として根源的な知恵、判断力、直感力、そういったものが並外れて優れています。
その上ありとあらゆる分野の知識にも精通していて、
それを単なる知識ではなく、自らの知恵として昇華させ、
どんなことにも常識にとらわれない自分自身の思想と考え方を持っています。

彼はもうすぐ37歳、私より16歳も年下ですが、
その圧倒的力量の前には、爪の先ほども嫉妬する気持は湧いてきません。
バッと見は超新人類っぽい風貌で、現代的でラフな口調の彼に、
まるで実際の弟か息子のような愛着を覚えます。

浄さんはネットに写真を公開していないので、
ここには写真をアップしません。 (また撮っていません)
貝崎親子恐るべし、是非これからの時代の救世主になっていだきたいと願います。


マコマコさんに連れられて、近くのセルフうどんの店に行きました。
まだお腹の中には鯛かま潮ラーメンがしっかりと残っているのですが ・・・ 。



香川県は別名うどん県、讃岐うどんの本場です。
人気店であるこの店で、釜玉うどんをいただきました。
釜玉とは、釜揚げうどんの玉子入りです。



広島にも最近はセルフうどんの店がたくさんできましたが、
さすがは本場の人気店、味が違います。
この自然な喉ごしのうどんを食べると、
普段口にしているチェーン店のうどんが、いかに雑味が多いかが分かります。
たぶんその雑味の大部分は化学調味料でしょう。

こんな風に最初によく混ぜて食べるのだそうです。
ツルツルシコシコですよ。




うどんでお腹を満たしてたら、今度は高松を目指します。
それにしても香川県は空気が穏やかです。
そしてそれを象徴するかのように、車窓から見える山並みはみな一様になだらかで、
ちょっとなだらかすぎで不思議な感じすらしてきます。

そのなだらかな山の代表がこちら、讃岐富士です。



他のところから見てもこんなきれいな山容です。
もしかして、昔の人が超能力で土を積んで作ったのではないでしょうか?


高松市内、どのあたりかはよく分からないのですが、
住宅地の中にあるOさん宅に着きました。



リビングにはこんな立派なスピーカーがあります。
往年の銘機アルテックです。
アルテックは高能率、つまり一定の電力に対して大きな音が出るスピーカーで、
音離れがよく、軽やかで勢いのいい音が特徴です。

スピーカーの向い側のソファーに腰を下ろして音を聴かせていただきましたが、
アルテックらしからぬ少し重めの低音と、
スピーカーから至近距離であるがゆえ、
上下のスピーカーユニットの音が分離して聞こえてくるという印象を受けました。

それ以上に強いインパクト(!)を受けたのが、
二匹の可愛いダックスフンドです。



もうめちゃくちゃ可愛くて、ずっと膝の上に座ってくれました。
ホント、心の底から癒やされます。
無心で頼ってくれるってすごい。安堵感、安心感、無上の愛を感じます。


こちらにはパソコンのトランスポーターを納品しました。
カイザーテクニックを駆使した最高の音が出るパソコンです。
大きな冷却ファンが目を引きます。



このパソコンのハードディスクにCDのデータを取り込んで聴くと、
何百万円のCDプレーヤーよりも上質の音がするのです。

そしてその音のチューニングは、BIOSの設定にまで至ります。



BIOSとは、OS(Windows等)を動かす最も基幹のプログラムで、
そのBIOSを操作できるマザーボードを組み込み、
CPUやメモリーにかかる電圧、周波数、位相、ファンの回転数、・・・
設定可能なありとあらゆる箇所をチューニングし、
それによって低音、高音といった音域だけではなく、
音色そのものも変化させていくのです。

浄さんはこんなことを15年間もやっているそうで、
プリセットできる八つのBIOSの設定をそれぞれ試したり、
またそこから微妙に数値を変えたりして、
その変化を披露してくれました。
もう、すごすぎます ・・・ 。

それとともにステレオの周りを歩き回り、
スピカーや周りの家具の位置をミリ単位で動かし、
また魔法のルームチューニングを施し、
ステレオの音を一変させてしまいました。

もはやスピーカーから出てくる音には、いい意味で個性を感じさせません。
深い味わいがあり、それでいて現代的でもあり、
持てる能力を出し切った清々しい音色は、聴いていてとても心地いいものです。

上下ふたつのスピーカーユニットから出る音も完全に溶け合い、
近くで聴いていてもフルレンジスピーカーの音と聞き間違えるほどです。
部屋の響きも美しく壮大なものとなり、
最初よりも部屋が広くなったように感じます。

「これは700万円かけてリフォームするよりも効果的だね〜」
と貝崎さんは言われますが、
それが冗談には聞こえないほどの絶大なる効果です。

けどこんなこと、ここに文字で書いても信じられないですよね?


その夜は高松のホテルに泊まり、
翌朝朝食を食べてから、瀬戸大橋を通って米子に向かいました。

米子の少し手前に広がる蒜山高原のパーキングエリアからは、
雪を被った蒜山が見えました。



肌を刺す冷気ですが、空気がとても爽やかで美味しいです。

こちらは大山、中国地方最高峰です。



昨日見た香川県の山は讃岐富士でしたが、
こちらは伯耆地方にある伯耆富士です。

讃岐富士はなだらかで女性的ですが、
大山、伯耆富士は少しごつごつした男性的な姿をしています。


米子であったことは、残念ながらここに書くことはできません。

愛情には女性的な優しい愛と、男性的な厳しい愛の二通りあります。
貝崎さん親子は、女性的優しさでもってこの米子の地に足を運び、
そして男性的厳しさでもって正しい道というものを説かれました。

そして最後にその愛情が口先だけではないということを、
きちんと形として残していかれました。


最近愛読している雀師桜井章一の本に書かれている言葉です。
『心優しきは万能なり』

オーディオの達人は、また生き方の達人でもあったのです。

2012.12.6 Thurseday  



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