何日君再來
歌は心と言いますが、本当に素晴らしい歌声は心に響くだけではなく、
もっと奥深い魂までをもふるわす力を持っています。

42歳の若さで亡くなったアジアの歌姫テレサ・テン、
彼女の美しい歌声は今も私たちの心で深く息づいています。

美人でスタイルもよく、美しい歌声を持つテレサ・テンは、
全身から輝くような気品が香り立ち、
天が望むべきものはすべて与え尽くしたかのような存在ですが、
彼女の歌からはなぜか一抹のもの悲しさを感じさせます。

どんなに上品に微笑みを作ったとしても、
彼女の心の寂しさは隠すことはできず、
彼女には代表曲のひとつである「愛人」のような
日陰の身のつらさを歌うような曲がよく似合っていました。

大歌手美空ひばりは子供の頃から大スターの道を歩みながらも、
本名加藤和枝としては波瀾万丈の人生を過し、
だからこそ多くの曲に深い思いを込めることができ、
「悲しい酒」を歌う時などは、リハーサルの時から涙をこぼしていたそうです。

テレサ・テンがどんな人生を歩んできたのかはまったく知るよしもありませんが、
きっと美空ひばりと同様心の中に深い何かを抱えていて、
それが彼女の歌声に厚みを与えていたのだと思います。


知り合いの車に乗せてもらった時、
そので「星願」というテレサ・テンのDVDが流れていました。

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テレサ・テンの魅力は誰も真似することのできない彼女だけの世界です。
彼女の美しい歌声は、その曲が当時流行っていた頃とまったく変わらない魅力で
私の心に響いてきます。

歌姫という形容は彼女にピッタリです。
どんな曲を歌っても、彼女は連れてこられたお姫様のようです。
歌声の奥に秘められた何かを感じさせ、
はかない、わびしい、せつない、もの悲しい、・・・
そんな現実とは少し遠い、間接的な感情が湧いてきます。


このDVDの中に一曲だけ異彩を放っている曲があります。
彼女の故郷中国の「何日君再來」(ホヲ リィ チュイン ツァイ ライ)です。

この曲だけ彼女はアカペラ(無伴奏)で歌っているのですが、
中国語で歌うこの曲は彼女の心象風景そのものなのでしょう、
他の曲と違ってこの曲だけは、
彼女の心の奥からストレートに歌となって出てきているのがハッキリと分かります。

この曲だけはせつなさももの悲しさも一切ありません。
それはこの曲が彼女の思いそのものだからです。

そのことが聴いている私にも力強く伝わってきて、
歌い出しの第一声を聴いた瞬間から体の奥深く(魂と呼んでもいいのでしょうか?)が
ジーンと震動するのが感じられるのです。

あまり音はよくないのですが、
「何日君再來」を歌っている部分がYouTubeにアップされていました。



冒頭の言葉を繰り返します。

歌は心と言いますが、本当に素晴らしい歌声は心に響くだけではなく、
もっと奥深い魂までをもふるわす力を持っています。

2011.1.20 Thurseday



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