三原、尾道
この夏の超強烈な猛暑が過ぎ去り、だいぶしのぎやすくなってきました。
とは言えまだ連日三十度を超す真夏日ですが、
一時の暑さに比べればまるで秋の風情です。

今日は青春18きっぷを使い、古の町並みが残る尾道に出かけてきました。
尾道は親友の石岡さんがいて、
何年かごとに定期的に訪れています。
本当に、何度行ってもいい町です。

先月の豪雨災害により、JR山陽本線の一部区間がいまだ不通です。
広島から西に向かう山陽本線の完全復旧は10月とのことで、
JRの切符や定期で災害のあった7月6日以前に発行されたものは、
不通区間の代替輸送として山陽新幹線、広島、三原間を利用することができます。

手持ちの青春18きっぷは災害以降金券ショップで買ったものですが、
発行日が7月2日なので新幹線利用可能です。
けれど実際は、改札ではそこまで細かいことはチェックしていないようです。
現実問題として、代替輸送の新幹線を利用できないと
困る人がたくさんおられますので。



広島駅の新幹線の改札で、
「三原まで行きます」と言って新幹線代替輸乗車票をもらいます。
そして新幹線三原駅では、
駅員のいない改札から出て、



乗車票を回収箱に自分の手で入れるのです。



三原駅に下りると、災害ボランティアを受付ける係の人が
プラカードを持って立っておられました。
今回の広島豪雨災害は発生からすでに一月半近く経ちましたが、
まだまだ各地で復旧のためのボランティアの手を必要としています。

尾道への在来線乗り換えに少し時間があったので、
三原駅の北側に出てみました。
こちらの方向に出るのは初めてです。

三原駅すぐ北側に三原城跡があるということを初めて知りました。
三原駅にピッタリとくっつく形で石垣とお堀の一部が残っています。



三原城主として名高い小早川隆景、
大河ドラマの主人公に推挙すべく活動中だそうです。



この写真を撮っていたら、通りがかったバイクのおじさんが、
「何か珍しいものでもあるの?」と聞いてこられました。
地方都市三原はあまり観光客がいないのでしょうね。


このページのタイトルは三原、尾道とありますが、
三原に立ち寄ったのはたったこれだけ、
駅北口で何枚か写真を撮った後、すぐに山陽本線に乗って尾道に向かいました。

尾道駅に着いたのは午前9時前、
まずは駅の前に広がる瀬戸内海、尾道水道を眺めに行きました。
これは対岸の向島に向かうフェリー、
映画「さびしんぼう」でセーラー服姿の富田靖子が
自転車とともにこのフェリーに乗っていました。



大林宣彦監督は、尾道を舞台にした映画を数多く作っておられます。



この予告編の中にもワンシーンとして出てきている
富田靖子演じるピエロ姿のさびしんぼうが、
ラストシーン近くで雨に打たれ、目の周りの黒いドーランが
涙のように流れるシーンには衝撃を受けました。


尾道駅の前の海岸線沿いはきれいに整備されています。
下の写真右端に写っている白いドレスの女性はアジア系のモデルさんのようで、
二人のカメラマンがさかんにシャッターを押していました。
なんとなくベトナムっぽい感じでしたね。



尾道から対岸の向島までの距離はほんのわずかです。



今日現在、富田林署から逃げ出した容疑者が逃走中で大騒ぎですが、
ここ広島でも、この春に同じく逃走した容疑者が
向島に潜伏しているとして大騒動になり、
結局逮捕後にこの尾道水道を泳いで渡っていたということが分かりました。
たしかにいくら潮の流れがあっても簡単に泳いで渡れそうです。

本州から四国を結ぶ三本の橋によるルートの中で、
この尾道を起点とする尾道今治ルート、しまなみ海道だけが
自転車に乗って通ることができます。、

と言うことで、駅前にはかっこいいスポーティーなレンタサイクルがあります。
こんないい自転車じゃないと橋を渡るのはしんどいでしょう。



駅から少し東に向かって歩くと、海岸線と平行して商店街を延びています。
尾道は観光の町なので風情のある店が多く、
日曜日だからか、まだ午前9時を少し回ったところだというのに、
すでにオープンしている店がちらほらとありました。



その商店街と海の方を結ぶ小径もなかなかいい雰囲気です。
チャイダーとは、お茶とサイダーが合体したものです。



その小径を通って海に出ると、
釣りを楽しむ人たち、ヨット、モーターバイクなどが見えました。



こんな石畳の小径もあるのです。
奥に見える看板は桂馬というかまぼこ屋さんのもの、
たしか以前お土産でもらったことがあり、とても美味しかった記憶があります。



尾道にはなぜかネコがたくさんいます。
そのため、ネコをモチーフにしたアクセサリーやグッズ、食べ物が
店先に数多く並んでいます。



石岡さんとの待ち合わせにはまだ少し時間があったので、
“日本一短い船旅” を楽しむことにしました。
大人片道百円です。



日曜日なのに郵便屋さんも船に乗って向島に渡ります。
ナンバープレートは尾道オリジナル、少し変形で波しぶきのイラスト入りです。



あっという間に向島に着きました。
向島に降り立つのはたぶん初めてです。
ここをサイクリングの起点とする人もおられるようで、こんな地図がありました。



そして桟橋の目の前には、なんと映画「あした」で使われたセットが!!



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この映画の予告編は残念ながらYouTubeにアップされていませんでした。
けれど本当にいい映画でしたね。
死者が限られた時間だけ蘇るというストーリー ・・・ 、
母が亡くなってあまり日が経っていない時に家でビデオを見て、
もう嗚咽を漏らすぐらい号泣しました。

その映画のセットにしばらく座り、
ミルクティーを飲みながらしばし英語の音読練習です。
とてもとても心洗われる幸せな一時でした。




日本一短い航路には船が頻繁にやって来て、
その一本に乗り込んでUターンします。
向島から見る千光寺山、夜景もとてもきれいだそうです。



船にはかっこいいロードバイク四台とともに、
年代物のカワサキのバイク二台も乗り込んできました。



あんまりにも懐かしくて格好良くてきれいなバイクだったので、
ライダーの方に話しかけてみました。
これは1971年製のW1、4サイクルの650ccです。
ホンダが750cc(ナナハン)を出すまでは、
このバイクが国産最大排気量だったそうです。



こちらはW1より三年後の1974年製のW3、
W1が前後輪ともにドラムブレーキなのに対し、
こちらは前輪ディスクブレーキです。



650とネームの入っているところの上にキャップが見えます。
なんとそこがエンジンオイル容器とのこと、
普通ここはエアフィルターのあるところです。
走っているとすごく熱くなるそうです。

岡山から来られたという二人のライダーの方と話をしていると、
船の案内係の人も興味があるようで仲間に加わり、話に花が咲きました。
ライダーの方は、「こんなにもてたの初めてだよ!」
と笑っておられましたが、
やっぱり自分のバイクの希少価値を分かってくれる人がいると嬉しいでしょうね。


尾道側に渡ってまだ時間があったので、
麓から千光寺に向かって少しだけ登ってみることにしました。
この途中いろんなところがいまだ通行止めになっているとのことで、
たまたま登った道にも少し入ったところに赤いカラーコーンが置かれていました。




その後商店街を歩いたりして、
午前11時、観光バスも停まる大きな駐車場で石岡さんと落ち合いました。
お会いするのは二年ぶりぐらいでしょうか、
いつも変わらぬ穏やかな笑顔は石岡さんのモットーで、
石岡さんの人柄のよさは天下一品です。

その石岡さんの車に乗せていただき、
お家にお伺するにはまだ少し早いからと、
千光寺山に連れて行っていただきました。
車は少しずつ山を登り、窓からは絶景が目に入ります。
昔からたくさんの映画の舞台になっているのもうなずけます。



絶景の中に、ところどころ大雨で崩れた斜面や
それをブルーシートで覆っているところが見えてきます。

ここは山頂付近の駐車場、かなり大きな土砂崩れがあった様子です。



千光寺山から下っていっても被災した箇所が目に付きます。
このたびの水害は尾道にも大きな被害を及ぼし、
亡くなられた方も三名おられるとのことです。


千光寺山から北西に向かって走り、
個人的に思い出深い尾道市立大学(旧尾道短大)に連れて行っていただきました。

新幹線の高架をくぐり、水源地沿いを通り、
その道沿いにも土砂崩れで一階の家財道具と畳をすべて外に出したり、
重機を使って敷地内の土砂を掻き出したり、
大きな岩が転がり込んだりしている家がありました。
本格的な復旧にはまだまだ時間が必要です。

尾道市立大学は山を背にし、
水源地となる大きな池を手前に配する風光明媚かつキレイなキャンパスです。



あまり大規模な校舎ではありませんが、
瀟洒な建物はまだ築年数が浅そうです。



入り口のゲートもしゃれています。



その池の大学側と反対の方にキレイな公衆トイレがあります。
旧日本建築風のしゃれた建物で、
たぶん大学の校舎と同じぐらいの時期に造られたのではないかと思います。

手前に立っておられるのが親友の石岡さんです。



残念ながらトイレの中は立ち入り禁止、使用できないようになっていました。
後には広範囲に渡ってブルーシートがかけられているので、
たぶんここも土砂崩れで水道管か何かが破損したのではないかと思われます。

大学前の水源地の端っこには扇形の堤があります。
これは大正14年に造られたもので、かなりの年代物です。



久山田水源地、その他尾道市の上水施設の多くは、
地元出身の篤志家山口玄洞氏の寄附によってまかなわれたとのことです。



今は全国各地にこんなイラストの描かれたマンホールがありますね。
これにはお祭りの時の纏(まとい)が描かれています。




いろいろと案内していただいて、
正午前に千光寺山の麓にある石岡さんのご自宅にお伺しました。
いつもは千光寺山中腹にある石岡さんの喫茶店、
喫茶石岡に行かせてもらうのですが、
このたびの水害で石岡さんのところはほとんど被害がなかったものの、
途中の道が寸断されていて、今は休業中とのことです。

以前作った喫茶石岡の紹介動画をご覧ください。




尾道は豪雨災害の直後から市内全域の水道がストップし、
石岡さんのお宅も二週間断水状態でした。
けれどまだそれはいい方で、水道復旧まで三週間、一ヶ月かったところもあるそうです。

お家では美味しいすき焼きとビールをよばれ、
会話も弾んで幸せいっぱい極楽気分です。

食後はいつものように奥様こだわりの自家焙煎コーヒーをいただきました。
最初の一杯はブラジルの豆をひいたものです。



ブラジルコーヒーは味が濃厚です。
自分はコーヒーは薄めが好きなのですが、
このコーヒーはさすがに美味しかったですね。



二杯目はエチオピアのコーヒー、
こちらはみずみずしい軽やかな風味で、
対極の味わいを持つコーヒーを二杯いただきました。


石岡さん宅で心もお腹もいっぱいになり、
4時前にお宅を後にしました。

駅までの道をず〜っと歩いていて、
これは商店街から撮った海側のお家の裏側の写真です。
まったく隙間なく立ち並ぶ家並みは、
それぞれの二階、三階の高さがまちまちで個性があり、
高くそびえ立つテレビアンテナがいい味を醸し出しています。



駅に向かって歩いていると、このまま帰るのが惜しいような気がしてきて、
ちょっと再び千光寺山の麓をうろちょろと寄り道したくなりました。
麓の道はまさに迷路のような感じです。
けどそれが味わいがあるのですね。
尾道はとってもいい町ですが、その風情を楽しむには丈夫な足腰が必要です。



こんな入り組んだ道を右往左往するのが面白いのです。
下の写真中央下の方、手すりのところに見える物体はネコちゃんです。
野良猫かどうか分かりませんが、細い道を歩いているとネコと頻繁に出くわします。



尾道はお寺がすごく多いのです。
ですので、必然的に墓地もたくさんあります。
そしてその墓地が、周りの町並みと自然に溶け込んでいます。



これこそが生老病死、生きとし生けるものの自然の姿、
循環の理を体現した町の姿だと感じます。
他所様のお墓を見て心落ち着くなんて、他の街では絶対に考えられません。
尾道は真に懐の深い町ですね。

こんな渡り廊下のようなところをくぐって歩く道もあるのです。



すると突然ロープウェイが見えたりして ・・・ 。



こんなタイルが貼られたところもありました。
観光客向けなのでしょうか、
入り組んだ道沿いには、すごくおしゃれな店が忽然と現れたりするのです。



そんなお店の一角、絵になりますね。



道端には寝っ転がったりうろうろと歩き回るネコが多いので、
な、なんと、、、、ネコの餌を百円で売っています!
まるで鯉の餌のようです!



(野良)ネコのための餌を販売してるって、
たぶん日本ではこの尾道だけではないでしょうか?

と思えば、こんな看板が!!



行政と町の人たちとの対立、といったところなのでしょうか?
詳しい事情は分かりません。

ある寺の石垣がこんな風に崩れていました。
このたびの水害で崩れたのかもしれません。
尾道は急斜面が多いので、
大雨が降るといつどこが崩れるか分からないといった感じです。



麓の散策が終わり、海沿いに下りてきました。
朝日の当る海はイキイキとしてとてもきれいですが、
夕暮れ時を前にして、ちょっと寂しさを漂わせた海の表情もまた素敵です。



海に向かって階段状に下りて行く石段、
これを雁木(がんぎ)と言い、
中国地方独特のものではないとは思いますが、
山口や広島でよく見られ、山口には雁木という日本酒もあります。



漁船の一団の中にこんな船がありました。
変わってますね。
下半分は後でくっつけたのかもしれません。



とても名残惜しいのですが、帰りの時間が近づいてきました。
海沿いの歩道橋の上から尾道駅を見渡します。



山の上にそびえるのは尾道城、
これは戦国時代からのお城ではなく、1964年に建てられた元博物館で、
今は管理者のいない廃墟だそうです。

尾道駅は来年の春に向けて現在改修工事中、
尾道は駅前の近代化が進められると同時に、
昔ながらの町並みや風情がしっかりと残されている有形文化遺産です。

駅向い側の海沿いに目をやると、
朝撮影していた外国人モデルさんのグループが、
衣装を着替えてまだ撮影を続けています。



そして芝生の上で女の子同士おでこをくっつけているのもモデルさんたち、
こちらも写真の撮影のようです。
尾道ならではですね。



次回尾道を訪ねるのはいつになるでしょう。
古き良き日本の文化を語る原点として、
今の町並み、風情をこれからもそのまま残してもらいたいものです。
   ヾ(´ー`)ノ 。・:*:・゜'★,。・:*:・゜'

2018.8.19 Sunday



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