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2018年7月20日 ・・・ 旅について

三日前の17日、三ヶ月間の旅を終え、
広島に戻ってきました。

広島に至る中国自動車道は、
前々日の15日まで河内、広島間が通行止めになっていて、
その間の道路の山際は、
大きな崖崩れの跡がいくつも生々しく残っていました。

また路上では重機を積んだ自衛隊のトラックや
機動隊の車両数十台と出合い、
被災地に近づいてきたという思いで身が引き締まる思いでした。

広島の豪雨被害の状況はニュースで報じられている通りで、
知り合いのSNSでも各地の被災情報や
ボランティアで活動される人たちの報告が多数寄せられています。

四年前、広島では大規模な土砂災害が発生しましたが、
今回は被害がさらに広範囲で、
規模もかなり大きくなっていて、
広島にとっては戦後最大の自然災害となりました。

これから自分にできることをやっていくつもりです。


茨城にいて、広島の日常から脱している間、
何か自分の心を見つめ直すことをしたいと思い、
アドラーの本を二冊読み返すことにしました。

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最初に読んだ時から数年の時を経て、
以前よりもより深くアドラーの教えが心に染みてくるのを感じます。
それは己の変化の証であり、それを感じることは喜びです。

このアドラーに限らず、良書、あるいはいい映画などは、
時間をかけて関わっていくことにより、
それを媒介にして自分の変化を知ることができ、
そういったものをいくつか持っていることは幸せなことです。


自分はエニアグラムのタイプ2、「愛を与える人」です。

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タイプ2の特徴は、いいところとしては、
人に対して親切でボランテイア精神が旺盛なところ、
それに対して短所としては、
お節介で、他人の領域にまで踏み込んでいこうとするところです。

ここがアドラーの説く「課題の分離」、
たとえ親子や夫婦といった親しい関係であったとしても、
自分の領域と他人の領域を明確に分離するという考え方と
相反する部分が生じます。

十数年前にエニアグラムを知り、
そして数年前にアドラーを知ってから、
この自分に対する課題を意識するようになり、
このたびアドラーの本を再読し、
この課題が随分克服できるようになったことを感じました。

~ 他人に親切にしても干渉しない。
   人の考え方、生き方を尊重し、その価値を認める。 ~

このお陰で心の重荷が軽くなり、
生きるのが楽になったのを感じます。


アドラーの説く教えは、上記の著者である岸見一郎先生が、
「人生の劇薬である」と言われるように、
一般的な常識からはかけ離れているとも言える驚くべきものです。

たとえば、はるか昔から説かれている原因と結果の法則である因果律は、
その原因から問題解決を図る原因論を生み、
それを説くフロイトやユングの教えは極めて常識的です。

それに対してアドラーは、
過去の出来事は、すべて今持っている目的を達成するための理由付けに過ぎないという
目的論に徹し、原因論、トラウマを否定します。

以前アドラーを知った当初は、
これはどちらが正しいのかということではなく、
どちらに解釈することが自分にとって有益なのか、
そう考えるべきなのだと感じていました。

けれどアドラーの教えを自分の中に取り入れようとする過程で、
これは解釈という抽象的なものではなく、
事実を捉える立場なのだと感じるようになりました。

フロイト、ユングは、物理学で言うところの
ごく一般的日常に感じ取ることのできるニュートン力学の世界であり、
それに対してアドラーは、
人間が五感で感じる世界を超越した微子、あるいは宇宙を律している
量子力学の世界、
物質の存在を確率で論じたり、
波動と物質という二面性を持つ摩訶不思議か事実の上に成り立つ、
そのようなものなのだと理解するようになりました。

別の言い方をするならば、
量子力学が宇宙や物質の究極の姿を理解するのに欠かせない
現代物理学の根幹をなす理論であるのと同様に、
アドラーの教えは、
人間の精神の根本を説いた究極の心理学と言えるのではないでしょうか。

近年日本でアドラーが受け入れられるようになったのは、
日本人の精神もより成熟期を迎えた、
あるいは成熟していきたいという民族的願望の表れではないのかと感じます。


このアドラーの教えをこれからも深めていきたいと考え、
岸見一郎先生がアドラーについて解説をした
NHKの「100分DE名著」を見ました。
  アドラー 100分DE名著 - YouTube

そして岸見先生の近著である「成功ではなく、幸福について語ろう」も読みました。

成功ではなく、幸福について語ろう成功ではなく、幸福について語ろう
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この本は、岸見先生が研究者になる道筋や
様々な立場の人たちの相談に答える形で、
人生の難局に自分自身で立ち向かえるヒントを提示しています。

これを読むことによって、
アドラー的人生観がより身近に理解できるようになりました。
そしてそれと同時に、本の中に哲学者三木清の「人生論ノート」からの言葉が
数多く紹介されていて、
岸見先生が三木清を信奉されているということを初めて知り、
そのことが個人的にとても嬉しく感じました。

岸見先生は、三木清のことについてテレビで語り、
本も書いておられます。
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高校の現代国語の教科書に、
三木清の「人生論ノート」から「旅について」の一節(全文?)が紹介されていて、
そこには、旅とは漂白の感情であり、
距離でなく、日常の習慣から脱することが旅なのだということが書かれていました。

このことは自分の胸に強烈に焼き付き、
それ以来ちょっと変わったことをすると、
「これは自分の人生に於ける旅なのだろうか?」
「今は日常から脱していると言えるだろうか?」
そんなことを問い続けてきました。


旅をし、日常から脱することによって、
これまで当たり前に感じてきた日常を新たな目で見つめ直すことができます。

インドに行くと、日本とはまったく異なる日常の中で、
いつも日本のことを考え続けます。
そして帰国後、これまでとは違った視点で日本の日常を見られる自分を感じます。
海外に行く最も大きなメリットのひとつが、
この日本の日常を見つめ直せることにあると感じます。

「嫌われる勇気」を読み、初めてアドラーを知った時、
日常の空気感がこれまでとはまったく異なったものに感じられました。
自分と他人との完全な分離感とともに、
その間に漂う有機的で生暖かい空気の存在を感じ、
自分の中の何かが変わったことに気づかされました。

いつもと同じ空間にいても、
思いひとつで心の旅を味わうことができる、
アドラーから、そんなことも教えてもらいました。

そして今、茨城から帰り、
茨城という非日常で感じ取った感覚で、
新たな広島での生活を見つめ直しています。


三十年ほど前、当時は趣味でジョギングをしていて、
時折地方のジョギング大会で走っていました。

普段は一人で走っているので、
沿道の視線を浴びながら走るのはとても心地いいものです。

大会では少しでもいいタイムを出そうと精一杯力の限り走り、
体力的にかなりきついものの、
時に自分に向かって声援をかけてくだる人がいると、
不思議なもので身体の内から力が湧き上がり、
それからしばらくはより速いペースで走れるのです。
あの時の感覚は、今も楽しい思い出としてしっかり残っています。


今、広島で新たな日常に挑もうと心あらたにしている時、
それに対して声援を送ってくださる人はいませんが、
自分で自分に励ましの言葉をかけ、
一気に人生の歩みのペースを上げていきたいと考えています。

それが自分が感じる旅の功徳であり、
アドラーを学び、課題の分離を強く感じることができるようになり、
他人の課題を自分と切り離すことができるようになったのと同時に、
その分自分をよりしっかりと持てるようになったと感じます。

日常と非日常、旅を繰り返すことによってこの二つを往復し、
らせん進化していくことが人生の醍醐味でしょう。

人生の旅はまだまだ続きます。



2018.7.20 Friday  
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