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2018年1月31日 ・・・ 東洋と解剖学

何事も、その本質を広く理解してもらうためには、
その特質を短い言葉で表したキャッチフレーズのようなものが必要です。
以前も書いたこととがありますが、
これまでの中心であった西洋の思想と
これから重要性を増す東洋思想の違いは、
この言葉に濃縮されています。

違いが分かる男の西洋、
つながりを感じる女の東洋。


『違いが分かる男のゴールドブレンド』
年配の方ならこの懐かしいコピーをご存じでしょう。
YouTubeにその一連のCMの一本がアップロードされていました。



日本の伝統楽器である琴の奏者も「違いの分かる男」としてしまうのは
すごいですね。
それだけ高度経済成長の波に乗り、
時代に勢いがあったのでしょう。

それと本当に「違いの分かる男」だったら、
インスタントコーヒーなんて飲まないと思いますが ・・・ 。


物事をバラバラにし、その違いを明らかにすることによって
論理を組み立てていくというのが西洋型、分析思考です。

それに対して東洋は、すべてのもののつながりを着目します。
これは実験室で証明できるような論理を超え、
自然の有様から推察し、感じ取るものです。


学者バカ、専門バカという言葉がありますが、
これは西洋的にバラバラにした物事の一点のみに意識や知識を集中させ、
他のことがまったく分からなくなってしまうことです。

またある特定のことに詳しくなり過ぎるとそれが逆に盲点となり、
詐欺師に言わせると、専門家ほど詐欺に引っかかりやすいのだそうです。


東洋で大切にし、着目するのはすべてのものをつなぐつながりです。
そのつながりとは、すべてのものの根底にあるものであり、
それが共通だからこそ、そこにつながりが生まれるのです。

ですから東洋を深く知るということは、
すべてのものに通じることを知るということであり、
そこで得られた知恵はすべてに通じ、
どんなことにも応用することが可能です。

それはあたかもすべてを見通す「魔法のメガネ」のようだということで、
マクロビオティックの創始者である桜沢如一氏は、
子ども向けに「魔法のメガネ」という本を書き上げました。

魔法のメガネ魔法のメガネ
桜沢 如一

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かようにすべてのものに通じ、すべてのものを見通す知恵は東洋にあると感じ、
この三十年近くの間、
その東洋の知恵を深めるための努力を続け、
このホームページ等を通じ周りの人たちにもお伝えしてきました。


先日ケイタイショップに行き、そこに置いてあった日経トレンディを開くと、
解剖学者である養老孟司氏の興味深い
インタビュー記事が目に入りました。

日本の大学の研究システムは、学問分野を、法学、経済学、国文学 ・・・
というように研究対象によって分けているせいでたこつぼ化していて、分野間の連携も弱く、バラバラになっています。
ところが、対象ではなく方法に着目すれば、さまざまな分野に応用が利く。
僕の専門の解剖学もそうで、人体の解剖を通して、ものの見方や考え方、分析の仕方を身に付けた。

人体もカエルも、デザインも政治も、すべて“解剖”できる。
僕が、専門外のいろいろな分野に首を突っ込んでいるように見えるのも、解剖学の方法を応用しているからですよ。


なるぼと、対象ではなくそれを学ぶ方法、
そこに着目すれば幅広く応用が利くというのは卓見です。

養老氏はその記事の中で、子どもの教育のことについても述べています。
子どもに夜遅くまで塾通いさせるのは児童虐待であり、
それは子どもの将来に保険をかけたいという親の勝手な願いで、
そのために「子どもの今」を犠牲にしている。
子どもには山の中で自然に触れさせ、
「意味のないもの」から感覚を磨くことが大切だ、と話しておられます。

感覚とは、意味のあるものをたくさん覚えることではなく、
自然という本来意味のないものとたくさん触れ、
そこから何かを感じ取る力と言えるのではないでしょうか。
やはり学び方が大切ということです。


それと解剖学というものが、
大局的にものを見る目を養う側面があるように感じます。
もっともこれもその学問と接する人の学び方によるでしょうが ・・・ 。

この宇宙をコスモスと呼び、
その宇宙の属性をすべて備えた人体を、
その縮小版ということで小宇宙、ミクロコスモスと称します。

その意味では、人体も、また様々な生物もすべてがミクロコスモスであり、
それを大局的に見ようとすれば、
様々なつながりを感じ取れるはずであり、
解剖学でその真理に近づけるというのはよく理解できます。


それとつい最近、
解剖学の分野には、三十年前に亡くなった三木成夫(しげお)という
とてつもない知の巨人がいたことを知りました。

まだ知ったばかりで、その研究内容にはほとんど触れていませんが、
解剖学というのは、それだけ深い叡智を感じ取ることができる
ものなのかもしれません。

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三木成夫の言葉です。

脳は意識を支配している。
しかし我々は内臓の中に心を持っている。

脳は内蔵を反映する鏡にすぎない。

地球に生きるすべての細胞はみな天体なんだと知ることなのである。

顔とは腸の延長のようなもの、一種の脱腸である。

舌は第三番目の手、なめるのは触るのと同じく、
手のように形と質を知覚する。


とてつもなくすごい感性であり、
生命、人体の真理に直結した見解である感じます。

特に三木氏は発生学者として胎児の成長に詳しく、
胎内での胎児の成長は、人類進化5億年の歴史を濃縮したものと言われ、
それは時間的、空間的、両面でのミクロコスモスです。

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西洋は物事、そのモノの中に実態を見、
東洋はそのものの外側、周りとの関係性の中に真理を見いだします。
それがひとつは「学び方」という関わり方であり、
それゆえ見る対象となるものが、ミクロかマクロかは関係ありません。

西洋の「違いが分かる」という言葉に対し、
「違いにこだわらない」というのも東洋の叡智のひとつでしょう。

2018.1.31 wednesday  
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