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2016年9月1日 ・・・ 感動ポルノ

先の28日の日曜日、広島市社会福祉センターの移転を
記念する最後の感謝祭があり、それに参加してきました。

感謝祭では様々なイベントがあって、
自分が所属するほのぼの広島会は、
いつものように車椅子の乗車体験をさせてもらいました。

体験される方には車椅子に乗ることと押すことの両方をしてもらい、
その感覚をしっかりと味わっていただきます。

体験されるほとんどの方は車椅子に乗るのは初めてで、
路面にある点字ブロックがいかに大きな衝撃となるのか、
ほんのわずかな勾配のある歩道で車椅子を自走させることがいかに大変か、
そんなことにみなさん驚いておられました。

けれどこれで体感できることは、
障害を持つ方が普段感じられていることのほんの一部であり、
障害が日常生活を送る上でどのような影響を与えるのか、
違う立場の人間には、そのすべてを理解することはできません。


28日はあの「愛は地球を救う」という24時間テレビがあった日です。
毎年24時間テレビには賛否両論ありますが、
今年は裏番組にあたるNHKの障害者情報バラエティー「バリバラ」が、
「障害者に感動は必要なのか」ということをテーマに、
障害者の活動を何でも“感動”に結び付けることに対する
欺瞞性を論じる番組を放送したので、
そのことも大きな話題となりました。

先天性骨形成不全症を煩い、
コメディアンでありジャーナリストであった故ステラ・ヤングは、
障害者を感動の主人公に仕立てることを『感動ポルノ』と表現し、
障害者は健常者を感動させるための道具ではないと語っています。

  ※ 字幕オンでご覧ください。 または、コチラ

障害を持つ人の行動はつい美化したくなってしまいます。
また障害者に感動を求める裏には、
自分よりもひどい条件でも頑張っている人がいるという、
障害者を見下す思いがあるというのは、
否定しきれないように感じます。

いわゆる心身の障害を持たない人間にとって、
障害を持つ人たちの気持ちや立場を正確に理解することは絶対に不可能です。
絶対に不可能だからこそ、
またつい“劣った人間”という悪しき気持ちを持ってしまいそうになるからこそ、
それを是正する意味で、感動とともに障害者を見てしまう面があると感じます。


己を振り返ってみて、
今生きる規範として尊敬し、強く意識している偉人が二人います。
一人は全盲、全聾であるにも関わらず世界中に名を知らしめたヘレンケラー、
もう一人はインド独立後の初代法務大臣であったアンベードカルです。

ヘレンケラーは多重の障害を持ちながらも大学を優秀な成績で卒業し、
点字を通し四言語を読むことができたそうです。

アンベードカルは身分差別の激しいインドで、
最も蔑まれるカースト外の不可触賤民として生まれ、
逆境の中、学問をなし、
インドがイギリスから独立した際の初代法務大臣になり、
現在のインド憲法の草案を作り、
差別に苦しむ多くの人を救った英雄です。

ヘレンケラー、アンベードカルともに、
障害、逆境をはねのけて大きなことを成し遂げました。
それは“障害、逆境があったにも関わらず・・・”ではなく、
障害や逆境があったからこそそれをはねのけようと努力をし、
持てる力、可能性を存分に発揮できたのだと考えることもできます。

人間の意志力とは弱いもので、
順境に身を置き、持てる力を発揮しなくても生きていける状態にあると、
その人の能力はなかなか開花することがありません。

『百獣の王ライオンは、我が子を谷底に突き落とす』
『愛する子には旅させよ』
『願わくば、我に七難八苦を与えたまえ』

このような言葉は洋の東西を問わす数多くあると思います。
人間の持てる力を発揮し、
眠れる遺伝子のスイッチをオンにする、
障害や逆境がそのための大きな力となることが多くあります。

そういった面では、
障害を持つ人から人間の持つ可能性の大きさを感じ、
心動かされることがあるのは自然なことのように思えます。


生まれつき両手が不自由な人が、
両脚を使って上手に食事をしたり字を書いたりするのは驚きです。
これなどは普通は発揮されない人間の持つ偉大な能力を提示するものであり、
刮目に値するものだと思います。

けれど障害者に意図的に身体的負荷をかけ、
例えば車椅子で琵琶湖を一周させたりするイベントは、
“感動仕立て”と揶揄されても仕方のないものであり、
それを見る人たちの中に、
障害者を見下す気持ちが見て取れるような気がします。


大切なのは、その時の自分の心の中にどのような思いがあるのかということ、
その人をどのような目で見つめているのかということです。
そしてそれは自分自身でしか判断することはできません。

障害のあるなしに関わらず、
究極的には自分以外の人間の心の中や立場を理解することは絶対にできません。
それができないということを踏まえて、
常に新鮮な心で人と接していきたと感じます。

抽象的ではありますが、これが『感動ポルノ』と出合い、
己を見つめ直した結論です。


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