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2015年5月13日 ・・・ はじめ塾

ゴールデンウイークの真っただ中、
5月1日から4日までの四日間、
先にインドにご一緒した飯田さんとともに、
インドから来日中の一行を車でご案内してきました。

日本山妙法寺サンカランコービル道場の石谷上人、木村庵主さん、
そしてインド最南端カニャクマリでホームを運営するスギルタン、
この三人とお会いするために広島から向かい、
愛知県で合流し、静岡、神奈川、東京とともに時を過ごしました。

愛知でお会いした翌日の5月2日早朝、
泊めていただいた御殿場のCGCの研修所を発ち、
車で小田原駅近くにある『はじめ塾』へと向かいました。

はじめ塾という名前を耳にするのは初めてですが、
子どもたちが寄宿する形で理想の教育を行っている塾とのことです。
  <はじめ塾 寄宿生活塾>

その昔、塾の初代創設者 和田重正氏が、
ご自身の熱き教育への思いを綴った本を各界著名人に送ったところ、
唯一返事があったのが日本山妙法寺の開祖である藤井日達聖人で、
それがご縁で日本山妙法寺とのつながりができ、
ここ数年、はじめ塾を卒業した大学生の人たちが、
インドのサンカランコービル道場に行き、
読経し、仏舎利塔建設のレンガ積みを手伝い、汗を流しているそうです。


午前9時、予定より一時間も早く着いたにも関わらず、
現在はじめ塾を運営されておられる三代目塾長和田正宏さん(写真上部中央)、
塾に寄宿している子どもたちが、とても快く迎えてくれました。

はじめ塾 和田正宏塾長と子どもたち

塾があるのは小田原駅からほど近い住宅地の中、
少し大きめの一軒家が塾の施設になっていて、
ここ以外にも、少し離れた場所に農地や合宿所などがあるそうです。
  <はじめ塾 施設案内>

一行を通していただいたのは一階奥にある広い共有スペースで、
そこに自分たちを囲むように車座に座り、
集まった塾の皆さんは、とても熱心に話に耳を傾けてくれました。

はじめ塾のことは何も知らなかったのですが、
質素な中にも整った雰囲気、礼儀正しさの中に凜とした気概を感じ、
子どもたちの表情や動作ひとつひとつが、体の中から発せられているような、
そんな印象を持ちました。

はじめ塾には寄宿している子どもたちだけではなく、
通いで来ている子どもたちもいて、
時間が経つにつれ、インドを訪ねた子どもたちや親御さんたちも集まってこられ、
少しずつにぎやかになりました。


そうしているうちにお昼近くになり、
和田塾長の「よかったらお昼ご飯を一緒にどうぞ」
というお言葉に甘え、お昼をよばれることになりました。

食事の準備は子どもたち自身が行います。
共有スペース横にある台所は十名ほどの子どもたちが入るともういっぱいです。
そこで子ともたちが楽しそうに、かつ手慣れた動作で料理を準備していきます。

その日出していただいた料理はざるそば、野菜の天ぷら、まぜご飯、
煮こごりのような透明なお菓子(名前がよく分かりません)、他といったもの、
ほとんどの食材が、塾の農園でみんなで作ったものだそうです。

はじめ塾 食事風景

「身体が喜ぶ料理」という表現が最も適切なように感じます。
自然豊かな南インドで日々口にした、あの時の食事を思い出しました。

はじめ塾 手作り料理でおもてなし

食事の後は、インド人のスギルタンに日本の文化を紹介しようということで、
子どもたちによる謡(うたい)を披露してくださいました。

和田塾長が「謡をやりたい人?!」と声をかけると十名ほどの子どもたちが手を上げ、
きちんと正座をし、お腹の底から声をしぼり出し、見事な技を披露してくれます。
普段から練習をしているのでしょう、文言はすべて暗唱です。

日常生活を正し、自然とともに生き、日本の伝統文化を重んじる、
こういった暮らしの中、生きる基となる人間教育を行っている集団があるということを
思いがけず知ることができ、心がとても豊かになりました。


余談ですが、この翌日は東京で過ごしたのですが、
午後突然時間が空いたので、
文明法則史学の価値観を共有する東京在住の一番の親友に連絡をし、
久し振りに美酒を味わうことができました。

その親友にはじめ塾のことを話したところ、
彼は塾のことを知っていて、
彼が以前自然農法で有名な奈良県の川口由一さんのところで研修を受けた時、
二代目塾長の和田重宏さんも参加されていたのだそうです。

不思議なご縁つながりに驚きです。
このご縁をくださったインドからの一行に深く感謝いたします。


はじめ塾をあとにする時、
塾のみんなが家の前で一列に並び、明るい笑顔で手を振って見送ってくれました。

その時に和田塾長が
はじめ塾のことを書いた一冊の本をプレゼントしてくださいました。
『幸せをつかむ力:はじめ塾80年のキセキ』、
この本を読み、はじめ塾にいた数時間に体感した
子どもたちのイキイキとした生き様、暮らし様(!)のベースとなるものが、
よく理解できるようになりました。

幸せをつかむ力:はじめ塾80年のキセキ幸せをつかむ力:はじめ塾80年のキセキ
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今は時代の大転換期、
旧来の価値観が制度疲労を起こし、大きく崩れようとしている中、
新たな時代を創造する原動力は、子どもの教育の中にこそあるのだと考えます。

その中で、はじめ塾の実践している人間教育は、
きっと大きな役目を果たすものと信じます。

本の中で心に留まった何ヶ所かを抜粋してご紹介いたします。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

「人間は自然から多くのことを学ばなくてはいけない」、との初代塾長・和田重正の理念を具体化したいと、はじめ塾が農業を活動の主体に置くようになったのは、二代目塾長の重宏さんのときからである。
「バーチャルな世界に浸りすぎている今の子どもたちに欠けているのは、家事や農業実習のような実体験の蓄積」とはじめ塾では伝えている。


「土ってあったかいんですね」
突然、D君がぽつりと言った。
重宏さんは畑仕事の最中、子どもたちの口から発する同じ言葉を、これまで幾度となく聞いた。自分を取り戻すとき、多くの人が発する言葉だった。
     ~
時間はかかったけれど、自分を縛り付けていた価値観から自由になり、幅広い視野と人間的なたくましさを身につけたD君がたどり着いたのは、人間の弱さを知った者だけが手にすることのできる幸せだった。


親元を離れ、塾の寄宿生活に入ると、掃除から洗濯、身の周りのことは全部自分でやらなくてはならない。そのため、ほとんどの子どもがこれまで親にどれだけ世話になっていたのか、そのありがたみを生活の中で実感する。


「どうして不登校になったの?」
はじめ塾では、子どもにそうした質問はしないことにしている。
     ~
「過去を振り返って問題の原因探しをするよりも、今できることをする。昨日できたことや、明日できることを考えるよりも、今、半歩でも一歩でも歩み出すこと。 ~ 」
     ~
はじめ塾は、常に「今がはじめ」なのだ。


気づきと決断の基礎となる力は、子どもの成長発達の段階で身につく、それが「3つのカン」と重宏さんが呼んでいるもので、はじめ塾ではこれらを育てる教育を実践してきた。
1つ目のカンは、3歳くらいまでに育つ「感じる力」の「感」。
2つ目のカンは、9歳くらいまでに育つ「動物的な勘」の「勘」。
そして、3つ目のカンは、状況に応じて先を読み、迷うことなく決断し、実行することができる能力の「観」で、14歳くらいから一生を通して育つ。
     ~
人格形成の基となる「感」が育つ幼児期には、「実感を持った態度と言葉で接する」
ことを親が心がけることが大切だ。
     ~
重宏さんはこれまでの経験から、「勘」を獲得するには、自分の足で活発に動き回るようになる4歳くらいから9歳前後までの間に、さまざまな実体験を積み重ねることが必要だと言う。
その時期に自然のなかで自由に遊びまわることが理想だというが、無理なら、どこの家庭でも簡単にできる「勘を身につける方法」がある。
それが子どもと一緒に、台所仕事をすることだ。
     ~
「人は台所で育つ」
はじめ塾ではこの言葉を掲げ、毎日三食、子どもたち全員で、台所で食事作りを行っている。
     ~
では、「観」を育てるにはどうしたらよいか。
「観を育てる条件として必要不可欠なのは、己を知ることだ」と重宏さんは言う。
     ~
思春期の子どもにとって必要なのは、「自分のことを全面的にわかってくれる人」
との出会いだ。わかってくれる人がいると、安心して自分と向き合うことができる。
「わかってくれる人」は誰でもいい。 ~
     ~
自分の存在を肯定的に受け入れてくれる人のいる、安心できる環境で生活することによって、自分の欠点についてもそれを自分の特徴のひとつとして受容することができ、やがて「自分が自分一人ではなく、あらゆるものが人の力によって生かされている」ことに気づく。
自分と向き合い、認めたくないことでもありのまま受容できたときに、人は「観」を身につけることができる。


塩加減、水加減などは自分の舌で味を確かめて、おいしい味になるように調整する感覚を身につける。だからはじめ塾では料理作りに計量カップを使用しない。暑い日には汗をかくので塩加減は少し濃いめに、風邪気味の子どもがいるときは身体の温まるものを出すとか、食べる人の体調や気温などに応じた繊細な気遣いで料理を作る。


「それまで調教を受けてきた弊害なのか、今の子どもたちは、腰がひけてきて、判断のスピードがのろくなっている」と重宏さんは感じている。彼らは、進んで自分で考えて行動しようという意志がない。そのために、はじめ塾に来た子どもたちには、まず心と体のサビ落としから始めなくてはならない。
     ~
調教教育を受けてきた子どもをどうやってそこから抜け出させるか。
重宏さんは子どもと話すとき、結論を持たずに臨むことを心がけている、結論をもって相手と関わることは相手を説得することにつながるからだ。

2015.5.13 Wednesday  
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